『マップス』――王道スペース・オペラを漫画で

その後、MF文庫から外伝を含む全10巻、フレックスコミックスから愛蔵版として外伝を含む全6巻が刊行されている。
アニメ化され、1994年にスタジオギャロップと学習研究社が制作した1話、1994年には東京ムービー新社とケイエスエが制作した4話がOVAとなっている。

1. シリーズ概要
2. マップス 愛蔵版 第1巻
3. マップス 愛蔵版 第2巻
4. マップス 愛蔵版 第3巻
5. マップス 愛蔵版 第4巻
6. マップス 愛蔵版 第5巻
7. マップス 愛蔵版 第6巻
8. レビュー
9. 参考サイト

	マップス 愛蔵版 第1巻
	著者	長谷川裕一（漫画家）
	出版社	フレックスコミックス
	サイズ	コミック
	発売日	2008年11月
	価格	1,848円（税込）
	ISBN	9784797350487

ジャルナ「ゲン、どこへ！」
十鬼島ゲン「いける所まで！　どこまでもだ！　いける限り‥‥」

新宿の高層ビル街に全長300メートルの巨大な天使の彫像のような宇宙船リプミラ号が出現する。宇宙海賊カリオンを名乗る金髪の美女が、高校生の十鬼島ゲン （ときしま げん） と君塚星見 （きみづか ほしみ） を船内に閉じ込める。彼女の狙いは、2万年前に銀河系を旅した「さまよえる星人」が地球に隠した秘宝「風まく光」だという。スペース・パトロールのニュウ・エイブがリプミラ号を追跡するが、船は南極の遺跡に向かい秘宝を発見する。彼女はカリオンではなく、船の半有機電子頭脳リプミラ・ヴァイスであることをゲンに告げる。ゲンと星見は日常生活に戻るもつかの間、米ソのサイボーグに襲撃され、連れ去られたリプミラを救出。リプミラ号は米ソの核攻撃を無効化し、宇宙へ飛び立ってゆく――。

1年後、リプミラ号が滞在する通商惑星ザナインに、全長1万5千kmの銀河伝承族ギルディオが襲来し、惑星を粉砕する。リプミラはカリオンの敵討ちのため、すべての武器をギルディオに叩き込む。
リプミラ号は名もない惑星に着陸し、秘密結社ギドロに拉致されていたネズミのような小動物を解放する。ゲンは宇宙民族伝承学者ガタリオンに接触し、秘宝「風まく光」が「ダイナック＝10匹の魔物」であることを知る。ガタリオンの正体は‥‥。

ある日、ゲンのところへ、惑星イスナまで運んでほしいという少女がやって来た。彼女の名はジャルナ。惑星ベニュアスの平和使節で、7日以内にイスナに着けなければ、両惑星は全面戦争に突入するという。イスナへ向かうリプミラ号に、巨大なメロンのような形をした異星人、宇宙豪商ガッハ・カラカラの箱舟号が襲う。リプミラ号はガッハを撃退し、ベニュアスとイスナの戦争は避けられた。ジャルナの正体は‥‥。
ある日、エイブに妻子がある事が発覚した。ゲンたちはエイブを自宅に強制送還するが、妻スソクホウは再婚が決まっており、エイブは科学要塞結構式場で再婚相手の強力仮面と対決する。
ゲンとリプミラは、映画の惑星テビレ・アミメで、ロボット役者の超機動グラジオンを特訓をする。リプミラ号の機動力を目にしたグラジオンは‥‥。
亜光速で飛び巨大質量と化した「歌う流星」がクロアの太陽にぶつかる。千年前、リプミラは「歌う流星」に乗り、人格がある据付型頭脳と会話したことがあった。ゲンとリプミラは「歌う流星」にランデブーし、据付型頭脳を探したが‥‥。

ガッハは惑星パドズマで、対伝承族用の兵器「生贄砲 （いけにえほう） 」の試射を行い、巻き込まれたリプミラ号はバラバラになってしまう。リプミラは、惑星ドドーの女騎兵ザザーン・クロマミスに助けられ、星見、エイブと家族達はガッハにつかまってしまう。生贄砲で損害を与えたと思った伝承族は‥‥。そして生贄砲のエネルギー源は‥‥。
ザザーンはゲンやリプミラとともに、住民のほとんどが女性の惑星ドドーに凱旋する。銀河系全体をエネルギー障壁が覆っており、外へ出られないという。長楕円軌道をえがき、銀河障壁 を行き来するはぐれ惑星リングロドを目指し、ゲンは宇宙船に乗って飛び立つ一方、宇宙港ではリプミラそっくりの黒髪のリプダインが現れる。彼女はリングロドを守る「5人の幽霊船」の1人だという。リプミラとリプダインが戦っている最中、秘密結社ギドロに拉致されていたネズミのような小動物ツキメが、惑星ジャンパの正統王位継承者「ミンにょろにゅぐかーみゃこす殿下」であることが発覚する。
リプミラのことをミラーと呼ぶ謎の女性ラドウが現れ、リプダインを助けると、リングロドで会いましょうと言って飛び去っていった。一方、ゲンは宇宙遊泳をして銀河障壁を超えることに成功した。そして宇宙船に同乗していた少女が、ゲンを監視する役目を負ったリプリムであることがわかる。リングロドと、リプミラ号に似た天使型宇宙船リプシアン、リプレイン、リプラドウが現れる。ゲンとリプリムが墜落した惑星リングロドは伝承族だった。リングロドはゲンに80億年間の記憶を見せ、伝承族や天使型宇宙船、そして生贄砲の目的を知ることになる。ゲンはリプリムをかばい、ラドウが放った槍に胸を貫かれる‥‥。

	マップス 愛蔵版 第2巻
	著者	長谷川裕一（漫画家）
	出版社	フレックスコミックス
	サイズ	コミック
	発売日	2008年12月
	価格	1,848円（税込）
	ISBN	9784797351118

ガッハ・カラカラ「おれの負けだよ、ロジェル‥‥根性の入ったバカにゃ、勝てねえやな‥‥」

傷ついたガッハが助けを求めてきた。母星カミオが5人の幽霊船に襲われているという。リプミラは1人でリプミラ号へ乗り込むと、カミオへ向けて飛び立った。ザザーンも部下を率いてリプミラ号を追う。リプミラはラドウたち相手に苦戦を強いられていたが、そこにゲンとリプリムが現れる。
リプミラは、リプレインの記憶の中でカリオンに再会し、天使型宇宙船リープタイプの役目、伝承族との目的を知らされる。リープタイプは合成生命 （ビメイダー） と連動しており、宇宙船か合成生命のどちらかが破壊されない限り、無限に生き続けるという。カリオンは未来を予知できる超能力者だったが、伝承族を含め、常に変則 （イレギュラー） があるため完璧な未来を見ることはできないという。だからリプミラに未来を託したという。リプレインは最後の力を振り絞りラドウを撃退し、消えていった。

ゲンは、ドドーに滞在する各惑星の大使たちの前で、自分が勇者ダイナックであることを宣言する。リプミラ号、リプリム号、リプシアン号はドドーを離陸する。だが、ダイナック伝説が罠と知ったアババ・バトッターシャは、ゲンを宇宙海賊として銀河中に指名手配する。
リプミラたちはメザラル星のビメイダー・ハンターに襲われるが、ガッハが救援に駆けつけた。カミオ星への救援物資の代金だと言って、自分が持っていた第2の星図をゲンに渡すが、リプリムをさらってゆく。
ゲン、リプミラ、リプシアンはリプリムの救出に向かう。ゲンは、ガッハの部下ロジュルからカミオ星人の歴史を知らされる。リングロドから力の使い方を学んだゲンは、ガッハの巨体を投げ飛ばす。

リプミラ号は、ツキメの生まれ故郷である超高重力惑星ジャンパにやって来た。ツキメは星見を側室として迎えると宣言するが、臣下から変態呼ばわりされる。エジベ公爵がクーデターを起こすが、ゲンとリプミラの活躍で一件落着。ツキメはゲンとともに宇宙の旅を続けることを決意する。
2万人部下を引き連れたザザーンとリプダインが合流し、惑星ヨッペでブドウ酒を飲んで大宴会となる。一方リプミラは、黒い宇宙船に乗ったダード・ライ・ラグンに再会する。黒い甲冑に身を包んだダードは、龍の一族ライ族に作られた最強の合成人間 （ビメイダー） だった。

	マップス 愛蔵版 第3巻
	著者	長谷川裕一（漫画家）
	出版社	フレックスコミックス
	サイズ	コミック
	発売日	2009年01月
	価格	1,848円（税込）
	ISBN	9784797352184

リプミラ「翼は風の吹く方へ飛ぶ！」

リプミラとゲンは、ダードの本拠地に連れてこられる。ダードは、240年前、リプミラの設計図を元にライ族が製作した合成生命 （ビメイダー） で、いまは銀河各地から逃亡した合成生命のリーダーになっていた。だが、平和を望む合成生命オルシスたちは、兵器として作られ破壊が全てだというダードについていくことができなくなっていた。ゲンはリプミラを助けるためダードと戦う。
突然、伝承族の長、神帝ブゥアーがすべての銀河生物の命を捧げろと宣戦布告してきた。1年後、銀河を生贄砲として使うというのだ。伝説の青き円卓＝地球を目指し、すべてが集結しつつあった‥‥。
ゲンとリプミラは、地球へ向かう途中、宇宙を報道する空間生物からヒューマノイドの赤ん坊を押しつけられる。リプミラ号に隠れていたリプダインがリプミラを襲うが、ゲンはリプダインを倒す気になれなかった。リプラドウのところへ帰ったリプダインは‥‥。ガタリオンによって伝承族の遺伝子を与えられたラドウも地球へ向かう。

地球を取り囲むように、敵対する未確認宙域軍85億8千万と、ほぼ同数のテュリオム通商圏連合軍が集結し、地球の出方を伺う。地球は核ミサイルで攻撃するが、両軍には何の被害も出ない。そこに、伝承族の反乱分子、機械学者アマニ・オーダックが現れる。アマニが保存している数十億年の歴史の中から選ばれた宇宙船が、ガタリオンやラドウと共同協同攻撃を開始する。ザザーンは、テュリオム通商圏連合軍と未確認宙域軍、リープタイプに伝承族と戦うための共同戦線を呼びかける。
ラドウはリプダインを楯にしてリプミラと戦う。一方、リプシアンはアマニの内部に突入する。アマニの背後には、エイブが率いるスペースパトロールとリングロドが近づいている。
ガタリオンはアマニを裏切るが、リプリムの時空振動エンジンのエネルギーを受けてラドウも危機に瀕していた。アマニが滅びる。リプミラはラドウを倒すが、リプダインは死んでしまう。リプシアンは、40億年間アマニに捕らえられていたという先住銀河文明の船「彼 （ヒィ） 」に助け出される。ゲンは、生贄砲の中心部から第三の星図を取り出す。ガタリオンの計画は失敗に終わった。

いまは1999年、ゲンが宇宙へ旅立ってから13年が過ぎていた。未確認宙域軍の作戦指揮を任されている巨大な異星人、ガドリジン・ローム・ラム・ヘクスキー教授が地球に降り立った。被害は甚大だった。テュリオム通商圏連合軍に160億人、地球人に2億人の死者が出ていた。ゲンは呆然とする。ガッハは、もう少し巧くできたかもしれないと考えるのは自惚れだとゲンに忠告する。
リングロドはリプミラに、勇者の伝説が伝承族の張った罠であるなら、伝承を超えられるのは勇者では無いものではないかと問いかける。ゲンが潰れてしまわないかと心配するリプミラに、リングロドは「おまえさんがささえてやればよいではないか」と提案する。東京湾で発見された少女は、再生したラドウの頭脳体だった。

さまよえる星人が南極に残した巨大遺跡の中心に用意された円卓に立ったゲンは、3枚の星図を高く掲げ、銀河統一会議を宣言する。そのとき円卓には誰もいなかったが、1人、また1人と自分の意思で集まってきた――リプミラ、ツキメ、星見、ガッハ、ヘクスキー教授、シスター・プテリス、ザザーン、キャプテン・ヒィ、リングロド（メタル・ビーチ）、そしてエイブ――十の魔物と七つの軍団が集結した。だが会場には、伝承族の幼生体ギャダが入り込んでいた。
リプミラたちはギャダを滅ぼすが、ニードル・コレクションを名乗るスガラ・リップが彼女を襲う。ニードル・コレクションとは未知のリープタイプなのか？

	マップス 愛蔵版 第4巻
	著者	長谷川裕一（漫画家）
	出版社	フレックスコミックス
	サイズ	コミック
	発売日	2009年02月
	価格	1,848円（税込）
	ISBN	9784797352191

十鬼島ゲン「おれは、自分を銀河の勇者だなんて思っていないし、事実そうでもない――つまり、おれは“十鬼島ゲン”っていう1人の地球人なんだよ」

ゲンの胸にジャルナ王女が飛び込んできた。それを見た星見、リプミラ、リプリムが激怒。銀河で最も危険な殺し屋シブードがゲンを狙うが‥‥。
ゲンたちは再び宇宙へ向かって地球を後にした。リプシアンとヒィは、かつてヒィが属していた光破船団を探しに向かった。
ゲンたちの前に、アマニに保存されていた宇宙船、ニードル・コレクションが現れた。激しい戦いの中で、空間の大断層に飲み込まれたリプミラ号は、ゲンやシスター・プテリスを乗せ、銀河系のはるか外に飛ばされてしまう。そこで、巨大な銀河系が異文明の宇宙船に遭遇する。
一方、リプシアンとヒィは、赤色巨星の中で生き残っている銀河先住民族に出会う。銀河先住民族は純粋エネルギー体だった。ヒィのことを兄さんと呼ぶ銀河先住民族がいた。物質化したことでヒィの寿命は限られたものになっていた。ヒィは光破船団の封印を解き、息を引き取った。彼の弟はリプシアンに向かい、キャプテン・ヒィになることの許しを請うた。
リプリム、リプラドウ、ヘクスキー教授は水の惑星でリゾート気分。だが、深海の水圧にも耐えるバオン・リップが襲ってきた。ラドウの攻撃にひるんだバオンだったが、洗脳したダード・ライ・ラグンを繰り出してきた。リプラドウは船体を再生するが、ダードを倒すことはできず、逆に捕らえられてしまう。ダードは本当に伝承族に操られているのか？

一方、ゲンは、銀河系外生命とコミュニケーションを取ろうと四苦八苦していた。そこへ、ニードル・コレクションのスガラ、ゼル、ルゼの3人が襲う。仲間を助けるためにリプミラと刺し違えるつもりだというスガラ。ゼルとルゼの特殊電磁波によってリプミラの記憶が消去されてゆく――。ゲンが気がつくと、リプミラが銃口を向けて立っていた。

ゲンは、リプダインを元に再生したリプデニーと、リプレインを元に再生したリプレニーにリプミラの記憶のバックアップがあることを発見。リプミラは、ニードル・コレクションの主、伝承族のギツアートの前に連れてこられる。そこへ銀河系外生命の宇宙船に乗ったゲンが乗り込んできた。

	マップス 愛蔵版 第5巻
	著者	長谷川裕一（漫画家）
	出版社	フレックスコミックス
	サイズ	コミック
	発売日	2009年04月
	価格	1,848円（税込）
	ISBN	9784797352320

ガッハ「やられていてえと思う奴が乗っかってるから銀河なんだろうが！　てめえら一人一人が銀河だろうが！　てめえらが一人でも生きている間は、勝負はついちゃいねえって！」

ゲンとリプミラが戦っている星の地下には、伝承族によって処分されるリープタイプが無数に眠っていた。その中心には、スガラが母と呼ぶ、すべてのリープタイプを産みだし修理し、伝承族に従う巨大なファースト・ボーンがいた。人型に返信したリプデニーとリプレニーは、眠っていたリープタイプに乗り込み、リプミラに加勢する。ゲンとリプミラは、戦いに破れたニードル・コレクションたちを仲間に入れる。伝承族ギツアートは倒れ、すべてのリープタイプは開放された。合成生命 （ビメイダー） を使い捨てにしないゲンを見たオルシスは、合成生命が伝承にない第8軍として加わることを宣言する。こうして戦力は3倍に膨れあがった。
伝承族に忠誠を誓うファースト・ボーンは、さまよえる星人の記憶をゲンに伝えた後、自爆する。銀河系外生命キバ船長の宇宙船は再び銀河系外へ飛び立った。

ゲンとリプミラ、シスター・プテリス一行は、リプシアン、リプリム、ザザーンの艦隊に合流する。艦隊は再び地球を目指す。ゲンが地球にいる星見と通話している最中、突然、地球が巨大な手のようなものに鷲掴みにされた。神帝ブゥアーだった。ブゥアーは「青き円卓＝地球」を生贄砲の種火にするつもりだ。
伝承族は計画を繰り上げて攻撃をしてきた。なぜか？　ブゥアーは原子間距離を広げて巨大化し、銀河と重なるほどのサイズになった。リプミラ号はブゥアーに突っ込む。動揺する全軍に、ガッハは「てめえら一人一人が銀河だろうが！　てめえらが一人でも生きている間は、勝負はついちゃいねえって！」と鼓舞する。
地上では、ガタリオンがブゥアーの中枢神経に接続される時を待っていた。ガタリオンが「もっとも危険なイレギュラー」と呼ぶ大量のダードとラドウを放ちリプミラを攻撃させるが、数万のコピーと戦い生き残ったダードとラドウの頭脳体は星見を助け、ガタリオンを襲う。戦いは混戦になっていた。ガタリオンに従うジェンド・ラドウがダードとリプミラを倒し、ゲンは地上に落下した。エイブはリプミラの頭脳コアを探し出し、地上の施設を使って再生させる。

	マップス 愛蔵版 第6巻
	著者	長谷川裕一（漫画家）
	出版社	フレックスコミックス
	サイズ	コミック
	発売日	2009年05月
	価格	1,848円（税込）
	ISBN	9784797352337

十鬼島ゲン「一人一人の努力は、計算にあらわれないような小さな誤差を生む！」

ダードの頭脳体はゲンにメッセージを託し崩れ去った。ダードの宇宙船をもらい受けたゲンは、むき出しになったブゥアーの中枢神経に入り込もうとするガタリオンを捕らえた。ブゥアーの内部に入ったゲンは、伝承族が記録してきた無数の宇宙の記録を見る。ブゥアーの、伝承族の本当の目的とは？　ブゥアーと同化したガタリオンは永遠を手に入れたという。そして、仲間になれは宇宙の支配者になれるとゲンに誘いをかける。だが、ブゥアーの未来予測は狂いはじめていた。ゲンは言う。一人一人の努力は、計算にあらわれないような小さな誤差を生む。それが積み重なって、ブゥアーの予測を上回るようになったのだと。

戦いが終わったら、もう勇者は要らない。わたしたちは、もともと、わたしたちがそうだった“もの”に戻るんだ――と、ゲンとリプミラは仲間に別れを告げ、ブゥアーの中枢へ突入した。ジェンド・ラドウを倒したリプミラたちを乗せたまま、ブゥアーは凄まじいスピードで銀河から離れていき、爆発四散した。

戦いから1年後――銀河中が地球の復興に力を注いだ。公式記録で、リプミラ号とダイナックは消息不明ということになった。だが、勇者抜きでの勝利が、逆に、銀河中の人々の自信となった。自然発生人と合成人間の関係は良好だ。そして、ガッハが雲の隙間に見た機影は‥‥その日、銀河は風にそよいでいた‥‥。

外伝・千光の聖櫃 （アーク） 
不死身の女宇宙海賊リプミラ・ヴァイスは、偶然、銀河再考の予知能力をもった少女シャランナ・テクマキスとギトジを救い出す。シャランナをさらったのは、龍の一族ライ星人だった。ライ星人はリプミラを捕らえ、そのDNAをコピーしてダード・ライ・ラグンを作りだした。リプミラはダードの宇宙船を乗っ取り、リプミラ号を取り返すために、直径2光年に及ぶ重力嵐の渦「千光の聖櫃 （アーク） 」へ向かう。シャランナは、リプミラがゲンに出会う未来を予言する。ダードと戦いリプミラ号を取り戻すが、ダードは中性子星に囲まれた重力の墓場へ落ちてゆく。

外伝・時に疾風 （はやて） のように
球状星団で行われる宇宙船のスピードレースに参加するリプミラ、リプシアン、リプリム。レースの直前、ゲンは暗黒街のボスの娘ゴイイケン・ムーヨが操り、12回の優勝を誇る「加速の女王号 （クイーン・オブ・ブースター） 」に捕らわれてしまう。加速の女王号のブースターごと切り離されたゲンを置き去りに、リプミラはゴールするのだった。

外伝・五千万光年の風
伝承族との戦いから85億7千万年が過ぎていた。リプミラ号で眠りについたゲンとリプミラは、異星人クオリネスによって覚醒させられた。クオリネスを追う無数の敵の正体は？　ゲンとリプミラは、クオリネスの先祖が残したという「過去へもぐる物 （バイ・ゴウン・ダイバー） 」を探しに旅立つ。

外伝・リプミラ最大の敵!?
ツキメになつかれたリプミラは‥‥。

外伝・勇者は花を届けに
ゲンは、通商惑星ペンタズーで偶然出会った少女エミューに頼まれ、祖父ジマル・ジルに花を届けに行くのだった。ジマルは、かつてオーウィザッハ戦役でドクター・ジェノサイドと呼ばれ、数々の新兵器を生み出した機械工で、いまは悪人帝国の侵略大帝に捕らわれていた。侵略大帝の野望は‥‥。

外伝・宇宙船デスグラウド号の秘宝
ゲンとリプリムは、秘宝を探して幽霊船デスグラウド号に乗り込んだが‥‥。

外伝・その日 街に流星が降った‥‥。
宇宙人がいると信じ、今日も望遠鏡で空を見るミナトリが住む街に流星が降ってきた‥‥。

外伝・失楽園
馬族が主 （あるじ） 、人族はその持ち物である世界で、幼い少女シアンは騎士として蒼騎士 （あおきし） と戦っていた。シアンは空を飛ぶ玩具を完成させるが、馬族は、空を飛ぶ道具は作れないと否定する。シアンは自分の宇宙船を発見する。そして、蒼騎士の正体は‥‥。

外伝・最強の者ども宇宙 （そら） をゆく
侵略大帝に捕らわれたラドウを救うため、ダードは単身、悪人帝国に乗り込んだ。だが、ラドウの方がダードよりちょっと強かった‥‥。

『SFアニメディア』は、学習研究社のアニメ雑誌『アニメディア』（1981年創刊）からSF作品をスピンアウトさせた雑誌で、当初、石ノ森章太郎さんの『サイボーグ009 時空間漂流民編』を目玉作品としたが、1年半後の1986年9月に連載終了。一方、1983年11月に『月刊少年チャンピオン』でデビューしたばかりの長谷川裕一さんの『マップス』が人気を博し、同誌の屋台骨となった。

天使型宇宙船リープタイプの造型は、スタートレックの宇宙船と同じくらいに印象的だ。
スペースオペラということで、ともかく登場人物が多い。「十の魔物」ということで、勇者であるゲンを除く主人公クラスが10人もいるわけで、これにハーレムもののリープタイプがロリっ娘からお姉様まで取り揃えられ、ガタリオンやダードなどの濃い敵キャラが加わる。ラスボスの神帝ブゥアーは、キャラを超えた存在だし‥‥。
でもって、舞台も銀河系全体と、その周辺宙域にまで及ぶ――異形の宇宙人と人型のヒーローとヒロインが、銀河系という空間と宇宙開闢から現代までの時間軸を股にかけて活躍するスペースオペラは、E・E・スミスの長編SF「レンズマン・シリーズ」に似ている。レンズマンは、アリシア人とエッドール人という善悪二元論で話が進むが、伝承族が〈悪〉ではないというのが、長谷川さんらしい。伝承族は、地球やリープタイプを相手に戦っているわけではない――その目的は‥‥本書をご覧いただきたい。

他の作品へのリスペクトが目立つのも長谷川さんらしい。同人誌を読んでいるようだ。
たとえば、第1巻でニュウ・エイブと戦うリプミラが、超能力を使いそうな髪型だと思ったと言うが、これはSF漫画としてコアなファンをとらえていた「超人ロック」のことだろう。

最初はモブのようなゲンが、ラドウの槍で殺されそうになった後、見違えるようにヒーローとしてのデザインになっていく。角の生えた宇宙服に時代感を見てとれるが‥‥。リープタイプが脱ぐシーンが多いのはお約束。人間ではないのだから、レギュレーション的にＯＫだろう🤣
ブゥアーの爆発に巻き込まれたリプミラ号は行方不明のままエンディングを迎えるが、外伝「五千万光年の風」で触れた「過去へもぐる物 （バイ・ゴウン・ダイバー） 」が、13年後にはじまる『マップス ネクストシート』への伏線となっている。

マップス世界では、銀河中の生命は伝承族が張った銀河障壁に阻まれて、外宇宙へ出ることができない。だが、さまよえる星人は自由に行き来することができるという。風に乗っていけるところまで行く――SFでもファンタジーでもいいのだが、想像の翼を広げたい🤗

• マップス：マンガペディア
• 長谷川裕一公式サイト スタジオ秘密基地