『天文台の電話番』――明かりを消して星を見ようよ

長沢工=著
表紙 天文台の電話番
著者 長沢工
出版社 地人書館
サイズ 単行本
発売日 2001年01月
価格 1,944円(税込)
rakuten
ISBN 9784805206737
みなさんは、われわれが2000年ならば、世界中どこでも2000年と思っているかもしれない。しかし、そうではない。現在の世界では、主要なものだけでも約40種の暦が使われている。そのそれぞれで年数が異なる。(62ページ)

概要

PHPで日出没・月出没・月齢・潮を計算
PHPで日出没・月出没・月齢・潮を計算
実に楽しく、読みやすい本である。
私が天文少年であることを差し引いても、こんなに楽しい本を読んだのは久しぶりである。そこで調べてみたところ、『天体の位置計算』(1980年初版)の著者であった。
天体の位置計算』は、私の原点である。この本を読んで、数学に興味を持ち、コンピュータを使うようになったのである。難しい天文計算を、事例をあげて中学生でも計算できるように説明されている。今でも増補版が売れているほどの名著である。ページが手垢で真っ黒になってしまったが、今でも書棚の取れる位置に立てかけてある。
天体の位置計算』から四半世紀、その著者が身近な天文台の電話番をしているとは知らなかった。
本書は一種のエッセイなのだが、理論に詳しい著者だからこそ、説得力のある文章になっているのであろう。

レビュー

著者は、天文台に問い合わせるときにうまく説明できない子どもが多いことを思い返し、「どこに月が見えるかがわからず、具体的な指示ができない先生がかなりいる」(12ページ)と懸念を示す。また、UFOを目撃したと連絡してくる人が多いことに対しては、「天文台の情報を否定し、出所の怪しげな噂の方をなぜ信じるのか」(15ページ)と疑問を呈する。
クイズ番組の制作担当者から回答のYES/NOを教えてほしいという問い合わせに対しては、「自然界は、そう簡単に割り切れない場合が多い」(105ページ)と感じるという。
国が豊かになればなるほど人の志向は金儲けに走り」(256ページ)、天文学のような基礎的な学問は廃れるのだそうだ。そういえば、子ども(小学生)の理科の教科書にある天文のページが極端に少ない。
(2010年5月10日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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