『GIGAZINE未来への暴言』――失望するにはまだ早い

山崎恵人=著
表紙 GIGAZINE未来への暴言
著者 山崎恵人
出版社 朝日新聞出版
サイズ 単行本
発売日 2010年12月
価格 1,650円(税込)
rakuten
ISBN 9784023308718
インターネットをメディアとして考えた場合、100人のうち99人に嫌われても無視されてもいいから、たった1人にリーチすればそれで十分(146ページ)

概要

GIGAZINE
私も毎日、GIGAZINE に目を通している。ガジェット系の話題は、特に面白い。
1ヶ月のページビューは約6000万、1ヶ月のユニークユーザー数は約2000万、日本にあるブログ中「第1位」の影響力を誇り、過去には英Guardian紙の「世界で最も影響力のある50のブログ」に選ばれ、「TIME」の「世界のブログトップ25」にも選出された「GIGAZINE」の創設者で編集長である山崎恵人 (やまざき けいと) が、サイト開設10年を記念しての書き下ろし。

レビュー

冒頭で、「オタク」と「専門バカ」を比較して、GIGAZINE は「オタクになれ」と提言する。
これには違和感を覚えた。山崎さんは自分の専門外のことを攻撃する者を「専門バカ」と定義しているが、世の中、こういう者が「オタク」と呼ばれているように感じるからだ。
まあ、用語の定義の問題なのだが、「知識を愛する」という主旨には賛成である。

山崎さんは、インターネット・ビジネスの将来像として、Wikipedia のような寄付に立脚する、「ファンではなくパトロンとして支えるのだという意識の高さが今後のインターネットを支えていくはず」(83ページ)と語ります。そのためには、PayPalよりも簡単に超少額決済できる仕組みが必要で、「いかにして効率的に、手軽に、抵抗感なく金銭を移動させるか? その手法を確立させたところが今後の覇権を握る可能性が大きい」(87ページ)と言います。これは面白い指摘です。
これに絡んで、「『価値あるものには自分でできる範囲の対価を払う』という教育が必須」(175ページ)など、教育についても発言しています。試験問題で「検索されてもいい問題」はどんなものか――これも面白い視点です。

山崎さんの話は、「現在のPayPalのような少額決済システムを運営するメリットが最も大きいのは『国連』ではないか?」(206ページ)のように政治にも及びます。もちろん日本ローカルな政治ではなく、国際政治の話です。

こうした山崎さんの話を読んでいると、「『ウェブ進化論』を書いた梅田望夫氏は日本のウェブに対して「失望」したらしく、今は将棋の世界に生きていますが、その気持ちは何となく理解できる半面、『失望するにはまだ早い』とも考えています」と書かれているように、ネットに夢と希望が湧いてきます。そう、失望するにはまだ早い
(2011年11月24日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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