『銀座木村屋あんパン物語』――あんパンにかけた人々の情熱

大山真人=著
表紙 銀座木村屋あんパン物語
著者 大山真人
出版社 平凡社
サイズ 新書
発売日 2001年07月
価格 770円(税込)
rakuten
ISBN 9784582850994
銀座本店では10万個を越すあんパンが売れた日も続出した。

概要

あんぱんでお馴染みの木村屋草創期の歴史を通じ、江戸末期から大正時代の日本の食文化を俯瞰する。

レビュー

江戸時代には「パン(肉)と葡萄酒(血)は、仏教の根本的教義とは相容れないもの」(33ページ)としてパン食を忌避しており、「パンの表記もポルトガル語の『パン』を用いた」(34ページ)という。
ところが開国して欧米人の体格の良さに驚いた日本人は、パンや肉を食べる必要性に駆られた。そこで、「わが国を神武創業の時代に戻すこと。神武創業時、つまり仏教伝来以前に戻せば、仏教の5戒律の筆頭にある殺生禁の戒律にも拘束されない。したがって、パン食文化の浸透も、これを肯定するキリスト教の普及も問題なし」(46ページ)という理由付けまで行った。いかにも日本人らしい。

その後、木村屋のパンは西南戦争の兵糧として提供されたり、鹿鳴館の食事に供されたり、明治天皇も食している。静岡で隠遁生活を送る最後の将軍・徳川慶喜にもとにあんパンを運び、木村屋を全国展開させるに当たって、清水の次郎長が活躍している。

このように、あんパンから庶民の生活史を知ることができ、とても面白い内容である。
(2011年5月11日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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