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数学的にありえない 上巻 | ||
著者 | アダム・ファウアー/矢口 誠 | ||
出版社 | 文藝春秋 | ||
サイズ | 単行本 |
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発売日 | 2006年08月28日頃 | ||
価格 | 2,304円(税込) | ||
ISBN | 9784163253107 |
「ジュリア」声が割れた。「なにが見える」。「永遠が‥‥見えるわ」(96ページ)
概要
著者は、ペンシルヴェニア大学で統計学を学び、スタンフォード大学でMBA取得、有名企業でマーケティングを担当し、2005年、本書で作家デビューを果たしたアダム・ファウアー。
天才数学者ディヴィッド・ケインは、誠実で運動音痴で恋愛話とも縁が無いけれど、「ラプラスの魔の能力」を使って悪を倒してゆく。
天才数学者ディヴィッド・ケインは、誠実で運動音痴で恋愛話とも縁が無いけれど、「ラプラスの魔の能力」を使って悪を倒してゆく。
あらすじ
どんな複雑な計算でも瞬時にやってみせる天才数学者ディヴィッド・ケインは、あろうことかギャンブルで身を持ち崩そうとしていた。ポーカーの相手が数学的にあり得ないような確率でストレート・フラッシュを組み立て、多額の借金を負わされる羽目になったのだ。
CIA工作員のナヴァ・ヴァナーは、取引に失敗し、北朝鮮の工作員に追われていた。彼女は、異動先の国家安全保障局〈科学技術研究所〉で、その失敗を繕えるような情報に遭遇する。それは、ドクター・トヴァスキーの謎の研究成果だった。

一方、双子の兄ジャスパーに助けられたケインは、借金を返すべく奔走していた。彼が大学の恩師に口利きを頼もうとしていたその時、不思議な感覚に襲われ、彼らを襲う大事故から危機一髪で逃げ延びる。
その頃、トヴァスキーを追っていたナヴァは、謎の研究の被験者となったジュリア・パールマンの死体に遭遇する。彼女は死の間際、ケインの名を告げた。ナヴァは情報網を駆使してケインの居所を掴むが、同時にトヴァスキーもケインを追っていた。

そんな時、数学的にあり得ないような確率でロトくじを引き当て大金持ちになったトミー・ダソーザは、旧友ケインの借金を工面するため、彼と待ち合わせをしていた。そのすぐ近くにはナヴァとトヴァスキーが潜んでおり‥‥。
CIA工作員のナヴァ・ヴァナーは、取引に失敗し、北朝鮮の工作員に追われていた。彼女は、異動先の国家安全保障局〈科学技術研究所〉で、その失敗を繕えるような情報に遭遇する。それは、ドクター・トヴァスキーの謎の研究成果だった。

一方、双子の兄ジャスパーに助けられたケインは、借金を返すべく奔走していた。彼が大学の恩師に口利きを頼もうとしていたその時、不思議な感覚に襲われ、彼らを襲う大事故から危機一髪で逃げ延びる。
その頃、トヴァスキーを追っていたナヴァは、謎の研究の被験者となったジュリア・パールマンの死体に遭遇する。彼女は死の間際、ケインの名を告げた。ナヴァは情報網を駆使してケインの居所を掴むが、同時にトヴァスキーもケインを追っていた。

そんな時、数学的にあり得ないような確率でロトくじを引き当て大金持ちになったトミー・ダソーザは、旧友ケインの借金を工面するため、彼と待ち合わせをしていた。そのすぐ近くにはナヴァとトヴァスキーが潜んでおり‥‥。
〈きみ〉だったんだね、これをすべて仕組んだのは。(302ページ)
あらすじ
天才数学者ディヴィッド・ケインは、元CIA工作員のナヴァ・ヴァナーによって危機一発のところで命を救われる。二人は傭兵ジム・ダルトンに命を狙われるが、そのたびにケインの「不思議な能力」のおかげで何とか逃げ延びる。そしてケインの大学の恩師ドクの車に乗り、双子の兄ジャスパーに合流する。
ジャスパーは、ケインの「不思議な能力」に関する驚くべく事実を語り始める。
だが、ジャスパーはとらわれ、ヴァナーも重傷を負ってしまう。彼らを追っていたトヴァスキーの意外な素顔が明らかに。

ケインはジャスパーを奪還すべく、以前身ぐるみをはがされるほど負けたポーカーで資金を稼ごうとする。怪我から回復したヴァナーも、ケインの指示に従って戦闘態勢を整える。
そしてケインは真実の一端を垣間見る。
ジャスパーは、ケインの「不思議な能力」に関する驚くべく事実を語り始める。
だが、ジャスパーはとらわれ、ヴァナーも重傷を負ってしまう。彼らを追っていたトヴァスキーの意外な素顔が明らかに。

ケインはジャスパーを奪還すべく、以前身ぐるみをはがされるほど負けたポーカーで資金を稼ごうとする。怪我から回復したヴァナーも、ケインの指示に従って戦闘態勢を整える。
そしてケインは真実の一端を垣間見る。
レビュー
次から次へと派手なアクションがジェットコースターのように展開される様は、まるで映画「007」を見ているようだ。だが、主人公ケインは数学者らしく、どこまでも真面目で運動音痴。借金を踏み倒すこともせず、兄の病気を気遣い、敵か味方か分からないナヴァの身の上に同情を寄せる。
彼の脳の中で起きる「不思議な感覚」の描写がまたユニークだ。私たち読者を、突然、本作品の映像を編集しているような気分にさせてくれる。登場人物に感情移入させるのではなく、映像を介して読者に語りかける手法は、日本のライト・ノベルのようでもある。

それにしても、前半部分では登場人物各々が別々の場所で危機に遭遇するものだから、読んでいて頭が混乱。これほど巻頭の「主な登場人物」一覧表のありがたみが分かった小説も珍しい。
だが、最後にはケインを中心に一同が相まみえる格好になり‥‥後半では、とくにドクター・トヴァスキーの本性を明かす場面にはしてやられた。前巻で伏線が張られていたことに気づいていたのに、悔しい!

終盤で、ケインの能力「ラプラスの魔」の仕組みが語られる。量子力学と確率論を巧みに組み合わせた説明から、本書はアクションSFにカテゴライズしてもおかしくないと感じる。
主人公ケインは最後まで運動音痴で恋愛話とも縁が無いけれども、ラプラスの魔の能力を開眼させてもインチキも裏切りもせず、好青年であり続ける。いかにも数学者らしく。
ラプラスの魔の能力は、日本で言えばガンダム・シリーズの「ニュータイプ」のようなものだが、こちらの物語は勧善懲悪のハッピーエンドでスカっとさせてくれる。
彼の脳の中で起きる「不思議な感覚」の描写がまたユニークだ。私たち読者を、突然、本作品の映像を編集しているような気分にさせてくれる。登場人物に感情移入させるのではなく、映像を介して読者に語りかける手法は、日本のライト・ノベルのようでもある。

それにしても、前半部分では登場人物各々が別々の場所で危機に遭遇するものだから、読んでいて頭が混乱。これほど巻頭の「主な登場人物」一覧表のありがたみが分かった小説も珍しい。
だが、最後にはケインを中心に一同が相まみえる格好になり‥‥後半では、とくにドクター・トヴァスキーの本性を明かす場面にはしてやられた。前巻で伏線が張られていたことに気づいていたのに、悔しい!

終盤で、ケインの能力「ラプラスの魔」の仕組みが語られる。量子力学と確率論を巧みに組み合わせた説明から、本書はアクションSFにカテゴライズしてもおかしくないと感じる。
主人公ケインは最後まで運動音痴で恋愛話とも縁が無いけれども、ラプラスの魔の能力を開眼させてもインチキも裏切りもせず、好青年であり続ける。いかにも数学者らしく。
ラプラスの魔の能力は、日本で言えばガンダム・シリーズの「ニュータイプ」のようなものだが、こちらの物語は勧善懲悪のハッピーエンドでスカっとさせてくれる。
(2011年9月22日 読了)
参考サイト
- 数学的にありえない:文藝春秋
- 心理学的にありえない:ぱふぅ家のホームページ
(この項おわり)