『怪獣人生』――特撮の過酷で楽しい現場

中島春雄=著
表紙 怪獣人生
著者 中島春雄
出版社 洋泉社
サイズ 単行本
発売日 2010年07月
価格 3,190円(税込)
rakuten
ISBN 9784862485892
ゴジラに入るのは二日酔いの特効薬だよ。(140ページ)

概要

映画「ゴジラ」
ゴジラの“中の人”として有名な中島春雄さんの自伝。
大部屋の中でも地位の低い「B2」出身で、相当苦労したようだ。「不満を言ったら『そうか、じゃあほかの役者を呼べ』って下ろされても仕方ない。それがB2の役者だ」(34ページ)というほど厳しい世界だったようだ。にもかかわらず飄々とした語り口にはホッとさせられる。
中島さんは、特撮の神様・円谷英二を「オヤジさん」と呼んで尊敬していた。長い間自伝を出さなかったのも、「恩人のオヤジさんは自伝を出さなかった。僕が出すのはおこがましい」(344ページ)からだという。「ゴジラの話、オヤジさんの話、聞きたい人がいるなら話してみよう」と決心して本書を書いたという。

レビュー

ゴジラを演じるために、中島さんは上野動物園へ通い、ゾウやクマといった大型動物の動きを研究したという。
特撮はハイスピード撮影するので、「立ち回りをやろうと思ったら、あの二倍か三倍の早さで動かなきゃならない」(105ページ)という。さらに、フィルムの感度には限界があるから、照明も二倍、三倍と明るくしなければならない。相当な重労働だったと思う。
だが中島さんは、「たまに飲み過ぎで二日酔いで現場に出てゴジラに入ったよ。でも入るとサウナと同じだから。汗がドーッと出て治っちゃう。ゴジラに入るのは二日酔いの特効薬だよ」(140ページ)と読者を笑わせる。

いくらゴジラで活躍しても出世はしなかったという。「長いこと大部屋やっていたけど、だんだんと役柄が大きくなったり、出世したりすることはないよ。そういう契約だもん。言われたら何でもやる。それは変わらないよ」(318ページ)。
ちなみに、本書で「ウルトラマンに入っている古谷敏は東宝の役者の大分後輩だった。背の高い二枚目だね」(265ページ)と紹介されている古谷敏さんの自伝『ウルトラマンになった男』を読むと、二人のスーツアクタの世代の違いを感じる。

中島さんは、2017年8月7日、他界した。享年88歳。ご冥福をお祈りする。
(2011年1月7日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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