『パンダ外交』――中国の強力な外交カード

家永真幸=著
表紙 パンダ外交
著者 家永真幸
出版社 メディアファクトリー
サイズ 新書
発売日 2011年02月
価格 814円(税込)
rakuten
ISBN 9784840138406
中国が日本にパンダを贈る狙いは、日本の対中感情を和らげることと、レンタル料収入を得ることの2点に尽きる(198ページ)

概要

リンリン
リンリン
著者は、高校時代に国外研修生として中国人民大学付属高校に派遣されたのをきっかけに、中国研究を専門とする歴史学者だ。
先日、上野動物園につがいのパンダがレンタルされた。パンダが外交カードに用いられていることはよく言われるが、著者は「一見、傍若無人に見える中国の外交政策の数々は多くの場合、実際には国際情勢を冷徹に分析したうえで展開されていると見るべきだ」(17ページ)と冷静だ。

レビュー

「パンダは、1869年3月にフランスの宣教師であるダヴィド神父によって『発見』された」(20ページ)。その後、生きたパンダが捕獲され、アメリカで人気を博した。
それまでは、地元住民による目撃例があっても、名前すら付いていないパンダだったが、この事実から、「『列強によって傷つけられたプライドをいかに回復するか』という課題は、パンダ外交の歴史、ひいては現代中国の外交を理解するための重要なポイント」(37ページ)になってゆく。
国民党と共産党に分かれて後、パンダの権益は共産党に移行する。ソ連との蜜月時代にはソ連にもパンダが輸出されたが、その後関係が冷え込むと、ソ連は自国のパンダのつがいを求めてイギリスに接触するという事態にまでなる。
近年、パンダがレンタル制へ移行したのも、ワシントン条約に基づく自然な流れだという。

近代中国の外交は、パンダとは切っては切れない関係にあることがよく分かった。
(2011年7月8日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
header