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地球は特別な惑星か? | ||
著者 | 成田 憲保 | ||
出版社 | 講談社 | ||
サイズ | 新書 |
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発売日 | 2020年03月18日頃 | ||
価格 | 1,210円(税込) | ||
ISBN | 9784065187333 |
太陽系は惑星系の標準ではない(157ページ)
概要

太陽系
著者は、国立天文台研究員、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻助教などを経て、2019年よりアストロバイオロジーセンター特任准教授にある成田憲保さん。系外惑星研究の前線で活躍している研究者の言葉には、科学心を揺さぶられる。
1995年に最初の系外惑星が発見され、発見者のマイヨールとケローには2019年度のノーベル物理学賞が授与された。2020年現在、NASA Exoplanet Archive には4千を超える系外惑星のデータが収められており、無償利用できる。
1995年に最初の系外惑星が発見され、発見者のマイヨールとケローには2019年度のノーベル物理学賞が授与された。2020年現在、NASA Exoplanet Archive には4千を超える系外惑星のデータが収められており、無償利用できる。

Kepler-1647bの想像図
これらを分析すると、ホット・ジュピター、エキセントリック・プラネット、スーパー・アースなど太陽系にない惑星が多く、太陽系は惑星系の標準ではないということが言える。
水が液体として存在しうるハビタブルプラネットの割合は、太陽型星だと約2割、太陽より温度が低い赤色矮星では約5割だという。
水が液体として存在しうるハビタブルプラネットの割合は、太陽型星だと約2割、太陽より温度が低い赤色矮星では約5割だという。

フラットウッズモンスター
では、ハビタブルプラネットに生命はいるだろうか――これから打ち上げられる宇宙望遠鏡や、口径30メートル級の大型地上望遠鏡によって系外惑星の大気が観測されるようになり、こうした疑問が1つ1つ解き明かされていくことだろう。
これからの研究によって、私たちが思いも寄らなかった宇宙の姿が明らかにされるかもしれない。
これからの研究によって、私たちが思いも寄らなかった宇宙の姿が明らかにされるかもしれない。
レビュー

Peter van de Kamp
太陽系の8つの惑星は、岩石惑星(水星、金星、地球、火星)、巨大ガス惑星(木星、土星)、巨大氷惑星(天王星、海王星)に分類でき、これらの惑星は京都モデルによって形成されたと考えられてきた。ところが、この常識は系外惑星の発見によって完全に覆された。

系外惑星の探索の歴史は古く、1938年から1962年にかけ、ピート・ファンデカンプがバーナード星の位置データを解析し、木星の約1.6倍の質量をもつ巨大惑星があると発表した。しかし、1970年代に入り、望遠鏡のレンズの誤差によるものだと判明した。

系外惑星の探索の歴史は古く、1938年から1962年にかけ、ピート・ファンデカンプがバーナード星の位置データを解析し、木星の約1.6倍の質量をもつ巨大惑星があると発表した。しかし、1970年代に入り、望遠鏡のレンズの誤差によるものだと判明した。

ペガスス座51番星b
1995年10月、イタリア・フィレンツェで開催された国際会議Cool Stars 9で、スイスの天文学者ミシェル・マイヨールが当時大学院生だったディディエ・ケローとともに、太陽型星であるペガスス座51番星を公転する木星の半分程度の質量の惑星を発見した、と報告した。これが初めての系外惑星と確認され、マイヨールとケローには2019年度のノーベル物理学賞が授与された。

宇宙望遠鏡ケプラー
2008年、宇宙望遠鏡ケプラー(口径1.4メートル)が打ち上げられると、4000以上もの惑星候補が発見された。そして2018年までに、2,000以上の惑星候補が本物の惑星だと確認されている。

Kepler-22bの想像図
ケプラーの観測結果から、ハビタブルゾーンに地球くらいの大きさの惑星(ハビタブルプラネット)がある割合は、太陽型星だとだいたい2割(誤差は1割)程度、太陽より温度が低い赤色矮星では5割(誤差は3割)程度だということがわかった。
系外惑星の探索方法として、現在、4つの観測方式がある。
- 視線測度法‥‥光のドップラー効果を利用し、主星の視線方向への運動速度変化を観測する。主星のそばにある重い惑星ほど発見しやすく、惑星の公転周期、軌道、そして質量の下限値がわかる。
- トランジット法‥‥惑星が主星の前を通り過ぎることによって生じる明るさの変化を観測する。惑星の半径を測定できる唯一の方法で、ほかの方法より公転周期を正確に決められる。
- マイクロレンズ法‥‥重力レンズ効果を利用した観測方法で、スノーライン付近にある惑星を発見しやすい。
- 直接撮像法‥‥補償光学とコロナグラフを使って、惑星からの光を直接とらえる。現在の技術では、若い恒星のまわりで公転距離の大きなところを公転する巨大惑星が発見できる。

ホットジュピターHD 209458bの想像図
2020年現在、4000を超える系外惑星が発見されている。
そのなかには、主星に近いところを公転している巨大惑星「ホット・ジュピター」や、軌道離心率が大きい「エキセントリック・プラネット」、岩石惑星だが地球より大きな「スーパー・アース」など、太陽系とは異なる様相の惑星が多く含まされている。太陽系には無い逆行惑星も10個以上発見された。
そのなかには、主星に近いところを公転している巨大惑星「ホット・ジュピター」や、軌道離心率が大きい「エキセントリック・プラネット」、岩石惑星だが地球より大きな「スーパー・アース」など、太陽系とは異なる様相の惑星が多く含まされている。太陽系には無い逆行惑星も10個以上発見された。

ホットサターンWASP-96bの想像図
これらの観測事実から、太陽系は惑星系の標準ではないということが言える。
私が天文少年時代に学んだ太陽系生成理論「京都モデル」を修正する必要が出てきている。代替理論の中には、京都モデルと同時代の「古在機構」を系外惑星に適用するというものもある。
私が天文少年時代に学んだ太陽系生成理論「京都モデル」を修正する必要が出てきている。代替理論の中には、京都モデルと同時代の「古在機構」を系外惑星に適用するというものもある。

Ross128bの想像図
さらには、2つ以上の巨大惑星がお互いを弾き飛ばすという「惑星散乱」が起きることも、コンピュータ・シミュレーションでわかってきた。これは、トンデモ本の古典『衝突する宇宙』やJ・P・ホーガンのSF『星を継ぐもの』のプロットに似ている。

K2-18bの想像図
惑星の表面に液体の水が保持されうる「ハビタブルプラネット」も、宇宙で比較的ありふれた存在のようだ。2割程度の太陽型星と5割程度の赤色矮星がハビタブルゾーン付近に地球の2倍以下の半径の惑星をもつといわれている。
かつて地球がスノーボールアースだったことを考えると、ほとんど凍りついているような系外惑星でも、一部に氷が溶けた部分があって、そこに生命がいる可能性は否定できない。
かつて地球がスノーボールアースだったことを考えると、ほとんど凍りついているような系外惑星でも、一部に氷が溶けた部分があって、そこに生命がいる可能性は否定できない。

OGLE-2012-BLG-0950LBの想像図
今後の系外惑星探査の大きな流れとして、なるべく太陽系の近くにある惑星系の小さな惑星、とくに生命の痕跡まで探すことが可能なハビタブルプラネットを発見するという目標が掲げられている。
恒星の70%強は赤色矮星で、太陽系に近い恒星もほとんどは赤色矮星だ。これらの観測にも力が注がれている。もしかすると地球外生命体の視覚は、われわれとは異なる光の波長に反応するのかもしれない。
恒星の70%強は赤色矮星で、太陽系に近い恒星もほとんどは赤色矮星だ。これらの観測にも力が注がれている。もしかすると地球外生命体の視覚は、われわれとは異なる光の波長に反応するのかもしれない。

トランジット系外惑星探索衛星「TESS」
2018年4月に打ち上げられたトランジット系外惑星探索衛星「TESS」は、ケプラーより格段に広い視野をもち、全天を観測する。ただし、本物(惑星)と偽物(食連星)を判別する発見確認のための追加観測が不可欠になることから、成田さんらの研究チームは、多色同時撮像カメラの開発に取り組んだ。その1号機は、岡山の名産にちなんでMuSCATと名付けられ、旧岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡に取り付け、観測成果を上げている。海外に2号機が設置され、3号機も間もなく稼動を始める。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
今後、生命の徴候を見つけるために、系外惑星の大気に観測が集まるという。
NASAが2021年に打ち上げを計画しているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(口径6.5メートル)、ロシアが2020年代半ばの打ち上げを検討しているWSO-UV(口径1.7メートル)。そして、2020年代半ば以降に登場する大型地上望遠鏡GMT(24.5メートル)、E-ELT(口径39メートル)、TMT(口径30メートル)を使えば、系外惑星の酸素分子の検出が実現できるかもしれない。
NASAが2021年に打ち上げを計画しているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(口径6.5メートル)、ロシアが2020年代半ばの打ち上げを検討しているWSO-UV(口径1.7メートル)。そして、2020年代半ば以降に登場する大型地上望遠鏡GMT(24.5メートル)、E-ELT(口径39メートル)、TMT(口径30メートル)を使えば、系外惑星の酸素分子の検出が実現できるかもしれない。

GMTの完成イメージ
もし系外のハビタブルプラネットの大気中に酸素が発見されたら、それが非生物由来である可能性を検討しなくてはならない。クロロフィルという色素を使う酸素発生型光合成生物が示す反射特性「レッドエッジ」を調べる必要も出てくるだろう。

E-ELTの完成イメージ
成田さんは、「これからはじまる生命惑星探査の前に、さまざまな分野の知識を総動員して何が生命の兆候として観測可能か、そして非生物由来の偽物の兆候との判別方法を考えることが重要」(273ページ)と締めくくる。

TMTの完成イメージ
最後に成田さんは、DNAとは異なる遺伝物質をもつ生命や、SFに登場するような岩石や金属の体をもつ生命などが存在する可能性を本書で取り扱わなかった背景について、「地球の生命の仕組みとかけ離れた生命を仮定すると、科学的な議論がしにくくなって」(278ページ)しまうことを記している。科学者としての真摯な態度に感銘を受けた。
(2020年5月29日 読了)
参考サイト
- 地球は特別な惑星か?:講談社
- 成田憲保
- 『凍った地球 スノーボールアースと生命進化の物語』:ぱふぅ家のホームページ
(この項おわり)