『翠星のガルガンティア〜遥か、邂逅の天地〜』――幻の第2期

原作=オケアノス,著者=谷村大四郎,キャラクターデザイン=鳴子ハナハル
表紙 翠星のガルガンティア〜遥か、邂逅の天地(上巻)
著者 オケアノス/谷村大四郎
出版社 KADOKAWA
サイズ 単行本
発売日 2015年09月
価格 1,540円(税込)
ISBN 9784047305182
エイミー「できれば、ご飯はおいしいといいな!

あらすじ

はるかな未来の地球は陸地のほとんどが水没し、多くの人々が海上生活を営んでいた――。
陸地国家リベリスタンの外洋でクジライカを追う生活をしていた少年ラッセルは、深海で不思議な生物リヴに出会った。リヴは、人が乗り込む作業用ロボット「ユンボロ」の操縦性能を飛躍的に高める能力があった。ラッセルは、リヴの能力を使って陸地で身を立てていこうと決意する。
一方、リベリスタンに国境を接しながら互いに敵対する陸地国家アウグストニアの技術将校スカヤは、発掘された謎の人型機械「イグナイト」にパイロットとして認められ、やがてラッセルに出会う。
そんな中、リジットが率いるガルガンティア船団がオーバーホールのため、リベリスタンとアウグストニアの中間に位置する共同租界に入港する。かつて、空飛ぶユンボロ=マシンキャリバー「チェインバー」のパイロットだったレドはユンボロ操縦の腕を上げており、エイミーは相変わらずメッセンジャーとしてカイトを飛ばしている。レドとエイミー、ラッセルとスカヤが出会い、陸地の運命が大きく変わる――。
表紙 翠星のガルガンティア〜遥か、邂逅の天地(下巻)
著者 オケアノス/谷村大四郎
出版社 KADOKAWA
サイズ 単行本
発売日 2016年04月
価格 1,540円(税込)
ISBN 9784047305199
リーマ「この世界は──何かおかしい

あらすじ

謎の生物「リヴ」は触腕をレドのこめかみに当てると、「あなたのことを知っている」と告げた――。レドの脳裏に、なぜ世界はこのように在るのか、自分は何者なのかという疑問が浮かぶ。レドは、ラッセルとその仲間たちに、旧文明の歴史、人類銀河同盟とヒディアーズの戦争を語った。
4年に一度、リベリスタンアウグストニアの間で行われる武闘の儀が迫っていた。人型機動兵器による1対1の勝負で、勝者は、時の御柱からもたらされる膨大なエネルギーを独占することができる。
そんなとき、爆破テロに巻き込まれたスカヤイグナイトは、名を変えてリベリスタンに潜り込み、パウル大佐に認められて武闘の儀に出場することになった。
ラッセルは、リベリスタンによる爆破テロでスカヤが死んだと思い込み、アウグストニアへ下り、リヴの能力で産業戦略大臣セオドライトに認められ、武闘の儀に出場することになった。
2人は山脈の頂上にある第三闘技場で死力を尽くして戦う。その行く末を見ようと山を登っていたレドの前に、とんでもない構造物が姿を現す。時の御柱と、彗星の群れが接近しようとするとき、レドの目の前に現れた人物は? イグナイトが急速に能力を失っていった理由は? ラッセルとスカヤの運命は?
すべての謎が解き明かされ、物語は大団円を迎える。

レビュー

2013年4月から13話が放映されたSFアニメ『翠星のガルガンティア』、そして2014年11月に公開されたOVA前後編から2年後の世界、一連の物語の完結編となる。テレビシリーズ第2期がお蔵入りとなったため、小説として世に出る形になった。
陸地国家や人型機動兵器「オーグメンテッドボディ」はOVAに登場したものだが、OVAで撒かれたフラグは本作で回収されてゆく。
ガルガンティアのピニオンベローズのコンビは相変わらずだし、サーヤは保母の仕事が板に付き、メルティは背が高くなり、ベベルは病気が治っていないものの発言機会が増えている。各巻の最後に幻となった設定資料が付属しており、それぞれのキャラクターの成長を見るのは感慨深いものがある。

下巻では、テレビシリーズ第1話で撒かれた最後のフラグが回収される。大海賊ラケージや、OVAのヒロイン、リーマも再登場し、要所要所を締めてくれる。
終盤に登場する生命圏創発支援ネットワークシステムの正体はネタバレになるので控えるが、「公共の福祉=人類社会の幸福」を追求するロボット・ダニール・オリヴォー(アイザック・アシモフ『夜明けのロボット』、他)を彷彿とさせる。人類銀河同盟において「人類発祥の惑星=地球」の情報が隠匿されているという設定も、アシモフのSFに似ている。
そして、物語そのものの時間軸の設定は、テレビシリーズを見ていて予想していたとおり。セオドライトと同年代のオジサンとしては、読んでいて安心できる嬉しい結末である。
(2021年5月26日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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