3.13 合同と証明の書き方(中学2年)

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合同な三角形の対応を黒板で教える水奈と中学2年生
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二つの図形をぴったり重ねられるとき、それらは合同である。三角形なら、すべての辺と角を調べなくても、決まった条件から合同を判断できる。
本項では、中学2年の合同条件と証明の書き方を学ぶ。「何が与えられ、何を示すのか」を分け、等しい辺や角に理由を添えて結論へ進む。合同記号や角の記号を使った\( \TeX \)表記も紹介する。

目次

本項で扱う範囲

本項の要点
中学2年合同の意味と、対応する頂点・辺・角を理解する
合同条件三角形の三つの合同条件と直角三角形の合同条件を使い分ける
証明仮定と結論を区別し、根拠・合同条件・結論を順に書く
\( \TeX \)\triangle、\equiv、\angle、alignedで図形と証明を表す

教科書で見かける式

二つの図形は、移動や回転、裏返しによってぴったり重ねられれば合同である。位置や向きが違ってもよい。\( \triangle ABC\equiv\triangle DEF \) と書いたとき、頂点は \( A\leftrightarrow D \)、\( B\leftrightarrow E \)、\( C\leftrightarrow F \) の順に対応する。
三角形の合同条件は次の三つである。等しい角がどこにあるかまで確認する。「二辺と一角」「一辺と二角」とだけ覚えると、条件の不足に気付けない。
内容条件・表示確かめる点
合同の記号\( \triangle ABC\equiv\triangle DEF \)対応する頂点を同じ順序で書く
三組の辺\( AB=DE,\ BC=EF,\ CA=FD \)対応する三組の辺がそれぞれ等しい
二組の辺とその間の角\( AB=DE,\ AC=DF,\ \angle BAC=\angle EDF \)角は二辺に挟まれた角である
一組の辺とその両端の角\( AB=DE,\ \angle BAC=\angle EDF,\ \angle ABC=\angle DEF \)等しい辺の両端の角を比べる
合同から分かること\( BC=EF,\ \angle ACB=\angle DFE \)対応する辺と角がそれぞれ等しい
直角三角形では、直角の向かいの辺を斜辺 (しゃへん) という。二つとも直角三角形であることを確認すれば、「斜辺と一つの鋭角がそれぞれ等しい」、または「斜辺と他の一辺がそれぞれ等しい」という条件でも合同を示せる。例えば \( \angle ACB=\angle DFE=90^\circ \)、\( AB=DE \)、\( AC=DF \) なら後者を使える。
証明では、問題で与えられた条件が仮定、最後に示す内容が結論である。例として、三角形 \( ABC \) の辺 \( BC \) 上に中点 \( M \) を取り、\( AB=AC \) が与えられているとする。\( \angle BAM=\angle CAM \) を示すには、\( \triangle ABM \) と \( \triangle ACM \) の合同を利用できる。
中点へ引いた線分で二つの三角形を比べる Aが上、Bが左下、Cが右下にある三角形。BCの中点MへAMを引く。ABとACには同じ一本の印、BMとCMには同じ二本の印が付いている。 ABCM
同じ印は等しい長さを示す。\( AM \) は二つの三角形に共通する辺である。
証明は次の順序で書く。まず比べる二つの三角形を明示し、次に等しい辺や角を理由とともに挙げる。必要な条件がそろったら合同条件を述べ、合同を示す。最後に、対応する辺や角の性質を使って、求められた結論まで書く。
[比べる三角形]
\( \triangle ABM \) と \( \triangle ACM \) において、
[根拠を添える]
仮定より \( AB=AC \)。\( M \) は \( BC \) の中点だから \( BM=CM \)。共通な辺だから \( AM=AM \)。
[合同条件を述べる]
三組の辺がそれぞれ等しいので、\( \triangle ABM\equiv\triangle ACM \)。
[結論まで書く]
合同な図形の対応する角は等しいので、\( \angle BAM=\angle CAM \)。
図が左右対称に見えることや、\( AM \) が垂直に見えることは根拠にしない。この証明で使うのは、仮定、中点の意味、共通な辺、合同条件、合同な図形の性質である。

\( \TeX \)表記

三角形の記号は \triangle、合同記号は \equiv、角の記号は \angle で表示する。三文字で表す角は中央の文字が頂点であり、\( \angle BAC \) は頂点 \( A \) の角である。辺の長さは \( AB \) のように表し、線分そのものを強調したいときは \( \overline{AB} \) と書ける。
ここでは日本の中学校の教科書に合わせて合同に \( \equiv \) を使う。英語圏の教材では \( \cong \) が使われることもある。記号だけでなく、何の関係を表しているかを確かめる。
内容\( \TeX \)表記表示
三角形\triangle ABC\( \triangle ABC \)
合同\triangle ABC \equiv \triangle DEF\( \triangle ABC\equiv\triangle DEF \)
角の等しさ\angle BAC = \angle EDF\( \angle BAC=\angle EDF \)
辺の等しさAB = DE\( AB=DE \)
線分\overline{AB}\( \overline{AB} \)
角度\angle ACB = 90^\circ\( \angle ACB=90^\circ \)
頂点の対応A \leftrightarrow D\( A\leftrightarrow D \)
複数の条件に理由を添えて並べるには aligned 環境を使う。& は列の区切り、\\ は行の区切りである。日本語の理由は \text{...} で囲む。下の表示は証明のうち「条件を集める部分」であり、この後に合同条件と結論を書く。
\[ \begin{aligned} AB&=AC &&\text{(仮定)}\\ BM&=CM &&\text{(中点)}\\ AM&=AM &&\text{(共通な辺)} \end{aligned} \]

\( \TeX \)命令の読み方と意味

命令・記法読み方意味
\triangleトライアングル三角形の記号 \( \triangle \) を表示する
\equivイクイヴ(equivalentの略)三本線の記号 \( \equiv \)。本項では合同を表す
\angleアングル角の記号 \( \angle \) を表示する
\overline{AB}オーバーライン文字の上に線を引く
^\circサーカムフレックス、サーク上付きの小さな丸で度を表す
\leftrightarrowレフト・ライト・アロー左右の矢印で対応を示す
\begin{aligned} ... \end{aligned}ビギン、アラインド、エンド複数行の式を列でそろえる
& / \\アンパサンド / バックスラッシュ二つ列の区切り / 行の区切り
\text{...}テキスト数式の中に理由などの文章を入れる

よくある間違い

対応する頂点の順序を変える
\( A\leftrightarrow D \)、\( B\leftrightarrow E \)、\( C\leftrightarrow F \) なら \( \triangle ABC\equiv\triangle DEF \) と書く。\( \triangle DFE \) では対応が変わる。
二辺と任意の角で合同とする
\( AB=DE \)、\( AC=DF \) と組にする角は \( \angle BAC=\angle EDF \) である。二辺の間でない角では、一般に合同とは限らない。
三つの角が等しいだけで合同とする
三角形を2倍に拡大しても角は等しい。大きさを決める辺の条件が必要である。
図を測った値を証明の根拠にする
定規で等しく見えても証明にはならない。仮定、共通な辺、対頂角などの根拠から等しさを示す。
結論を仮定として使う
\( \angle BAM=\angle CAM \) を示す問題では、その等しさを合同の理由に使わない。先に三組の辺の等しさから合同を示す。
合同を書いて証明を終える
角の等しさが結論なら、合同の後に「対応する角は等しいので」と書き、\( \angle BAM=\angle CAM \) まで示す。
角の頂点を読み違える
\( \angle ABC \) の頂点は中央の \( B \)。頂点 \( A \) の角なら \( \angle BAC \) と書く。
数式内の改行をバックスラッシュ一つにする
alignedの行区切りは \\。数式を囲む区切りは \( と \) である。

コピーして使える例

コピーした表記をKaTeXの自動描画に対応するページへ貼り付ける。数式を直接入力するエディターでは、必要に応じて外側の区切りを外す。

合同と頂点の対応
\( \triangle ABC \equiv \triangle DEF \)
\( A \leftrightarrow D,\ B \leftrightarrow E,\ C \leftrightarrow F \)
二辺とその間の角
\( AB = DE,\ AC = DF,\ \angle BAC = \angle EDF \)
証明:三組の辺を使う
\( \triangle ABM \) と \( \triangle ACM \) において、
\[
\begin{aligned}
AB &= AC && \text{(仮定)}\\
BM &= CM && \text{(中点)}\\
AM &= AM && \text{(共通な辺)}
\end{aligned}
\]
三組の辺がそれぞれ等しいので、
\( \triangle ABM \equiv \triangle ACM \)。
合同な図形の対応する角は等しいので、
\( \angle BAM = \angle CAM \)。

練習問題

次の問いに答え、合同や角の式を\( \TeX \)表記でも書こう。

  1. \( \triangle PQR\equiv\triangle XYZ \) のとき、\( Q \)、\( PR \)、\( \angle PQR \) に対応する頂点、辺、角を答える。
  2. \( AB=DE \)、\( AC=DF \)、\( \angle BAC=\angle EDF \) のとき、使う合同条件と合同の式を書く。
  3. \( AB=DE \)、\( \angle BAC=\angle EDF \)、\( \angle ABC=\angle DEF \) のとき、使う合同条件を答える。
  4. 三角形 \( ABC \) で \( AB=AC \)、\( M \) は辺 \( BC \) の中点とする。\( \angle BAM=\angle CAM \) を証明する。
  5. 二つの線分 \( AB \)、\( CD \) が交点 \( O \) でそれぞれ二等分されている。\( \triangle AOC\equiv\triangle BOD \) を証明し、\( AC=BD \) を導く。
  6. 「三つの角がそれぞれ等しいから合同である」という説明が誤りであることを、具体例で説明する。
  7. \( \angle ACB=\angle DFE=90^\circ \)、\( AB=DE \)、\( BC=EF \) のとき、使える直角三角形の合同条件を答える。
解答例
  1. \( Y \)、\( XZ \)、\( \angle XYZ \)。頂点は書かれた順に対応する。
  2. 二組の辺とその間の角がそれぞれ等しい。\( \triangle ABC\equiv\triangle DEF \)。
  3. 一組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい。
  4. \( \triangle ABM \) と \( \triangle ACM \) において、仮定より \( AB=AC \)、中点の意味より \( BM=CM \)、共通な辺より \( AM=AM \)。三組の辺がそれぞれ等しいので \( \triangle ABM\equiv\triangle ACM \)。対応する角は等しいので \( \angle BAM=\angle CAM \)。
  5. \( \triangle AOC \) と \( \triangle BOD \) において、仮定より \( AO=BO \)、\( CO=DO \)。対頂角は等しいので \( \angle AOC=\angle BOD \)。二組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので \( \triangle AOC\equiv\triangle BOD \)。対応する辺は等しいので \( AC=BD \)。
  6. 一辺が \( 3\,\mathrm{cm} \) の正三角形と \( 6\,\mathrm{cm} \) の正三角形では、三つの角はすべて \( 60^\circ \) で等しいが、大きさが違うので合同ではない。
  7. 斜辺と他の一辺がそれぞれ等しい。斜辺は \( AB \)、\( DE \) である。

学習指導要領上の位置づけ

2017年(平成29年)告示の中学校学習指導要領解説 数学編では、第2学年の「B 図形」で合同の意味、三角形の合同条件、証明の必要性と意味、その方法を扱う。既に分かっている性質を根拠として、新しい性質を筋道立てて確かめる学習である。
第1学年の作図や図形の移動、第2学年の平行線と角を土台に、合同条件を使って三角形や平行四辺形の性質を考察する。直角三角形の合同条件も解説に示されている。本項は証明の書き方を中心とし、図形の性質への応用は次項で扱う。\( \TeX \)表記は学習指導要領の指定事項ではなく、考えを読みやすく記述するための補助である。

次項:三角形と四角形の性質(中学2年)

次項「三角形と四角形の性質」では、二等辺三角形、直角三角形、平行四辺形などの性質を扱う。本項で学んだ「根拠を集めて合同を示し、対応する辺や角の等しさを導く」という流れを、図形の性質の証明に生かす。

コラム:測ることと証明すること

三角形を定規と分度器で測る中学2年生と、合同の根拠を黒板で説明する水奈
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定規や分度器で調べることは、性質を予想するために役立つ。しかし、測定には誤差があり、一枚の図だけではすべての場合を確かめられない。証明は、図を大きくしたり頂点を動かしたりしても、仮定を満たせば同じ結論になる理由を説明する。
測ることと証明することは、どちらも必要である。実物の長さを知りたいときは測定を使い、図形の性質がいつでも成り立つ理由を知りたいときは証明を使う。
[測定と証明の歴史]
古代エジプトでは、土地や建物、穀物の量などを扱うために計算と幾何学が使われた。約3500年前のリンド数学パピルスには、日常の数量や図形を扱う問題が残っている。測ることや計算することには、生活を支える具体的な役割があった。
その後、古代ギリシャの数学では、定義や基本的な約束を出発点として、性質を理由のつながりで示す方法が発展した。紀元前300年ごろに活動したユークリッドの『原論』は、既に知られていた数学を体系的にまとめた代表例である。『原論』第1巻には、三角形の合同や平行線に関する命題が並ぶ。測定から証明への発展は長い歴史の中で進んだもので、一人が突然すべてを発明したわけではない。
[なぜ測定だけでは足りないのか]
例えば、二つの辺がどちらも定規で \( 5.0\,\mathrm{cm} \) と読めても、実際には少し長さが違うかもしれない。また、10枚の図で正しく見えても、11枚目やまだ描いていない図までは調べていない。測定は「この実物について、この精度で分かったこと」を示すが、図形の一般的な性質をそれだけで保証することはできない。
証明は、すべての図を一枚ずつ測る代わりに、条件を満たすどの場合にも使える理由を示す。例えば、\( M \) が \( BC \) の中点なら、\( BM=CM \) は定規の読みではなく中点の意味から分かる。その条件を合同条件につなげれば、図の寸法が変わっても同じ結論を導ける。
証明があると、他の人は結論だけでなく、どの条件から何が分かったかを点検できる。また、測っていない場合にも結果を使える。測定で予想し、証明で理由と適用できる範囲を確かめることが、数学の知識を安心して使うための合理的な方法なのである。

コラム:証明の書き方

添付図の例を、次の条件をもつ四角形 \( ABCD \) の問題として整理する。仮定は \( AB=CD \)、\( AB\parallel CD \)、結論は \( \angle ABC=\angle CDA \) である。対角線 \( AC \) を引き、\( \triangle ABC \) と \( \triangle CDA \) を比べる。以下の図とフローは、添付図の内容をもとに作成した。
この証明では、四角形が平行四辺形であることを出発点にしない。与えられた二つの条件と、共通な辺だけを使って、必要な合同を示す。結論として示したい角の等しさを、先に根拠に使わないことが大切である。
対角線ACを引いて二つの三角形を比べる 四角形ABCDのABとCDは平行で等しい。対角線ACで三角形ABCとCDAに分ける。角BACとDCAは錯角である。 ABCDAC
仮定:\( AB=CD \)、\( AB\parallel CD \)。結論:\( \angle ABC=\angle CDA \)。同じ線の印は等しい辺、同じ矢印は平行な辺を表す。
段階証明のテンプレートこの例で書く内容
対象を決める「△○○○と△○○○において」\( \triangle ABC \) と \( \triangle CDA \) において
根拠を集める「○○より、……が等しい」仮定、平行線の錯角、共通な辺から三つの等しさを示す
合同を示す「○○がそれぞれ等しいので、二つの三角形は合同」二組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
結論を導く「合同な図形の対応する○○は等しいので、……」\( \angle ABC=\angle CDA \)
フェーズ1:比べる対象

\( \triangle ABC \) と \( \triangle CDA \) において

フェーズ2:根拠を添えて条件を集める

仮定

\( AB=CD \) ……①

\( AB\parallel CD \) の錯角

\( \angle BAC=\angle DCA \) ……②

共通な辺 \( AC \)

\( AC=CA \) ……③

フェーズ3:合同条件を使う

二組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので、

\( \triangle ABC\equiv\triangle CDA \) ……④

フェーズ4:求められた結論

合同な図形の対応する角は等しいので、

\( \angle ABC=\angle CDA \)

\( \triangle ABC\equiv\triangle CDA \) の文字の順序は、\( A\leftrightarrow C \)、\( B\leftrightarrow D \)、\( C\leftrightarrow A \) の対応を表す。だから、頂点 \( B \) の \( \angle ABC \) と、頂点 \( D \) の \( \angle CDA \) が対応する。②の角は辺 \( AB \) と \( AC \)、辺 \( CD \) と \( CA \) の間にあり、合同条件の「その間の角」に当たる。
①〜④は式を参照しやすくするための番号であり、必須ではない。大切なのは、等しさに理由があり、その理由から合同条件、合同、結論へ進めることである。添付図で最後も「フェーズ3」と記された部分は、ここでは結論を導く「フェーズ4」として区別した。
考えるときは、結論からさかのぼってよい。「角を等しいと示したい→合同な三角形の対応する角を使おう→どの合同条件がそろうか」と探す。ただし、完成した証明を書くときは、フロー図の上から下へ並べる。次のテンプレートは、図の条件に合わせて三角形名と根拠を入れ替えて使おう。
合同を使う証明のテンプレート
【対象】△○○○と△○○○において、
【根拠】(理由)より、(対応する辺・角の等しさ)……①
        (理由)より、(対応する辺・角の等しさ)……②
        (理由)より、(対応する辺・角の等しさ)……③
【合同】①、②、③より、(合同条件)がそれぞれ等しいので、
        △○○○ ≡ △○○○。
【結論】合同な図形の対応する(辺・角)は等しいので、
        (問題で求められた結論)。
この例の完成した証明
\( \triangle ABC \) と \( \triangle CDA \) において、
仮定より、\( AB = CD \) ……①
\( AB \parallel CD \) より、平行線の錯角は等しいので、
\( \angle BAC = \angle DCA \) ……②
\( AC \) は共通な辺なので、\( AC = CA \) ……③
①、②、③より、二組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので、
\( \triangle ABC \equiv \triangle CDA \)。
合同な図形の対応する角は等しいので、
\( \angle ABC = \angle CDA \)。

コラム:証明の難しさ

「すべての場合に成り立つ」という主張は、たった一つでも当てはまらない例があれば正しくない。そのような例を反例という。例えば「3以上の奇数はすべて素数である」は、\( 3 \)、\( 5 \)、\( 7 \) では正しく見えるが、\( 9=3\times3 \) が反例である。9は条件を満たす奇数でありながら素数ではないので、主張全体を否定できる。
図形でも同じである。「三つの角がそれぞれ等しい三角形は、すべて合同である」という主張は、一辺が \( 3\,\mathrm{cm} \) と \( 6\,\mathrm{cm} \) の二つの正三角形で否定できる。角はすべて \( 60^\circ \) で等しいが、大きさが違う。この一組だけで、三つの角の等しさは合同条件にならないと分かる。
[反例には条件がある]
反例は、主張の仮定を満たしながら結論を満たさない例でなければならない。平行線の性質に反論するとき、平行でない二直線の図を出しても反例にはならない。「何となく違うと思う」という意見だけでも否定したことにはならない。
多数の例を確かめることと、証明することの違いをもう一度考えよう。「二つの奇数の和は必ず偶数になる」は、\( 3+5=8 \) や \( 7+9=16 \) だけを計算しても、まだ調べていない奇数が残る。そこで任意の整数 \( m \)、\( n \) を使い、二つの奇数を \( 2m+1 \)、\( 2n+1 \) と表す。
\[ (2m+1)+(2n+1)=2(m+n+1) \]
\( m+n+1 \) は整数だから、和は2の倍数、つまり偶数である。この説明は、どの二つの奇数にも使える。証明は、調べていない場合まで届く理由を作るのである。
すべての場合についての主張を否定するには、条件を満たす反例を一つ見つければ足りる。一方、証明するには、条件を満たすすべての場合を漏れなく説明しなければならない。この負担の違いが、証明の難しさの一つである。ただし、反例を見つけること自体が難しい問題もあり、正しい反論にも考える力が必要である。
仮定を満たす本当の反例が見つかったなら、主張は誤りであり、それを正しいとする「証明」には、推論の誤りや隠れた仮定があるはずである。正しい仮定から論理的に導かれた正しい証明と、本当の反例が同時に存在することはない。また、「条件を満たす例が少なくとも一つある」という主張なら、一例を示すことが証明になる。「すべて」と「少なくとも一つ」は区別しよう。
証明する価値は、誰かを言い負かすことではない。他の人が理由を確かめ、まだ試していない場合にも結果を使い、さらに新しい性質を導けるようにすることである。だから、根拠をつなぎ、途中に飛躍がない説明を作ることには大きな価値がある。反例は説明の穴を教え、証明はその穴を越えて通用する道筋を示す。どちらも数学を確かなものにする働きを持つ。

参考サイト

(この項おわり)
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