コーヒーの科学 2026年版

2026年3月19日 作成

目次

コーヒー1日2~3杯で認知症発症リスクが低下

コーヒー1日2~3杯で認知症発症リスクが低下
2026年(令和8年)2月、米ハーバード大学や米マサチューセッツ総合病院は、コーヒーおよび紅茶の摂取と認知症リスク・認知機能との関連を検討した大規模前向きコホート研究を実施し、約13万人を最長43年間追跡し、約1万件の認知症発症を解析しました。

解析の結果、カフェインを含むコーヒーの摂取量が多い人ほど、認知症の発症リスクが低く、認知機能の低下も緩やかである傾向が認められました。
特に1日あたり2〜3杯程度の中等量の摂取で最も有利な関連が示され、過剰摂取よりも適量摂取が重要である可能性が示唆されました。一方で、カフェインを除去したデカフェコーヒーでは、このような明確な関連は確認されませんでした。

紅茶についても同様に、適度な摂取が認知機能の維持と関連していましたが、その関連の強さはコーヒーほど明確ではありませんでした。これらの結果は、カフェインやその他の生理活性成分が神経保護的に働く可能性を示しています。

カフェインを含む飲料の習慣的な摂取は、長期的に認知症リスクの低下や認知機能の維持に寄与する可能性があると考えられます。ただし、本研究は観察研究であるため、因果関係を直接示すものではなく、生活習慣や社会経済的要因などの影響を完全には排除できません。したがって、今後は介入研究などによる検証が必要であると結論づけられます。

コーヒー1日2~3杯でメンタルヘルスが改善

2026年(令和8年)1月、中国・復旦大学の研究チームは、日常的なコーヒー摂取と精神疾患(気分障害やストレス障害)との関連を、大規模コホートで検討しました。英国のバイオバンクに登録された約46万人を平均13年以上追跡し、コーヒー摂取量や種類(インスタント、レギュラー、デカフェ)と精神疾患発症リスクの関係を解析しました。

その結果、コーヒー摂取量と精神健康との関係は「J字型」を示しました。すなわち、全く飲まない場合に比べて摂取量が増えるにつれてリスクは低下しますが、一定量を超えると再びリスクが上昇します。特に1日2~3杯の適度な摂取で、気分障害やストレス障害の発症リスクが最も低くなることが示されました。

一方で、過剰摂取(特に5杯以上)では保護効果が消失し、むしろリスクが増加する傾向も確認されました。また、この傾向はインスタントやレギュラーコーヒーで一貫して見られましたが、デカフェでは明確な関連が認められず、カフェインや関連成分の関与が示唆されました。

さらに、性差の影響も観察され、男性の方が女性よりもコーヒーの保護効果が強く現れました。一方で、カフェイン代謝に関わる遺伝的差異は、この関連に大きな影響を与えませんでした。

作用機序としては、コーヒーに含まれる抗酸化物質などが炎症を抑制し、脳機能を保護する可能性が指摘されています。ただし、本研究は観察研究であり因果関係を直接証明するものではなく、自己申告データや対象集団の偏りなどの限界もあります。

以上より、コーヒーは適量であれば精神健康に有益である可能性が示されましたが、過剰摂取は逆効果となり得るため、1日2~3杯程度が望ましいと考えられます。

習慣的なコーヒー摂取は腸内細菌を介して気分やストレスに影響

習慣的なコーヒー摂取
2026年(令和8年)4月21日に、アイルランドやイタリアの国際研究チームが、習慣的なコーヒーの摂取が腸内細菌を介して、その結果として脳機能やストレス、気分に影響を与えるという研究成果を発表しました。
研究では、コーヒーを飲む人は胃酸や腸酸の分泌に関与するとされる一部の腸内細菌の相対存在量が著しく増加し、一部の代謝物のレベルが低下していたことが明らかになりました。
コーヒー摂取により腸内細菌の構成自体は大きく変化しませんでしたが、微生物が産生する代謝物のプロファイルに変化が見られました。また行動面ではコーヒーを飲む人は衝動性と感情反応性の改善が強く、カフェインレスコーヒーを摂取した人のみが記憶力や学習能力の顕著な向上を見せました。
習慣的なコーヒー摂取が腸内細菌を介して気分やストレスに影響(要約)
本研究は、習慣的なコーヒー摂取が腸内細菌叢を介して、ヒトの生理機能や認知、感情にどのような影響を与えるかを包括的に検証したものです。特に、「腸脳相関」と呼ばれる腸内環境と脳機能の双方向の関係に着目し、これらの影響がカフェインに依存するものか否かを明らかにすることを目的としています。
研究では、1日3~5杯のコーヒーを習慣的に摂取する成人31名と、コーヒーを飲まない成人31名を対象に、心理テスト、食事・カフェイン摂取記録、便および尿サンプル解析を組み合わせた介入試験が行われました。コーヒー常飲者は一度2週間の摂取中止期間を設け、その後、カフェイン入りまたはカフェインレスのコーヒーを再導入するというデザインが採用されています。

その結果、コーヒー摂取者では腸内細菌の組成に有意な違いが認められ、特にCryptobacterium属やEggerthella属細菌の相対的増加が確認されました。一方で、インドール-3-プロピオン酸やインドール-3-カルボキシアルデヒド、神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)などの腸内代謝物は低下していました。行動学的評価では、コーヒー摂取者は衝動性や情動反応性が高い傾向を示し、非摂取者は記憶成績が良好であることが示されました。

興味深い点として、糞便メタボロームの一部はコーヒー摂取を中止すると可逆的に変化し、再摂取によって短期間で再び変化することが明らかになりました。これらの変化の一部はカフェインの有無に依存せず生じており、コーヒーに含まれるポリフェノールなど他の成分の関与が示唆されます。
統合解析により、カフェイン、テオフィリン、特定のフェノール酸など9種類の主要代謝物が、腸内細菌種および認知指標と強く関連していることも示されました。

以上の結果から、コーヒーは単なる嗜好飲料ではなく、腸内細菌叢を介して脳機能や行動特性に影響を及ぼす因子であることが示されました。本研究は、マイクロバイオームの状態からコーヒー摂取習慣を予測できる可能性を示すとともに、食習慣と腸‐脳軸の密接な関係を明らかにした点で意義深いといえます。

参考サイト

(この項おわり)
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