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2026年(令和8年)の夏、太平洋赤道域でエルニーニョ現象が記録的な速さで発達しています。気象庁が2026年(令和8年)8月10日に発表したエルニーニョ監視速報によると、7月のエルニーニョ監視海域(NINO.3)の月平均海面水温は基準値より2.5℃高く、1949年(昭和24年)以降で最も強かった1997年(平成9年)に並ぶ水準に達しました。冬にかけてエルニーニョ現象が続く確率は100%と見込まれています。
世界気象機関(WMO)も2026年(令和8年)7月31日、強いエルニーニョがさらに強まる見込みと発表しました。2026年(令和8年)8月から10月にかけて、主要な監視海域の海面水温偏差が2.9℃を超えると予測しています。WMOのセレスタ・サウロ事務局長は「エルニーニョの予測は、各国や地域社会が影響の発生前に行動する機会をもたらす」と述べ、事前の備えを呼びかけました。あわせて、正のインド洋ダイポールモード現象の発生も予測されており、地域ごとの気候影響が増幅される可能性があります。

欧米の予測モデルは、さらに強い発達を示しています。ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)や北米マルチモデルアンサンブル(NMME)の予測では、2026年(令和8年)11月ごろのピーク時にNINO3.4指数が4℃近くに達する可能性が示されています。これまでの観測史上最強は2015年(平成27年)から2016年にかけての2.75℃であり、それを大きく上回る計算結果です。ただし、これらは数か月先を見通す季節予測であり、実際の値は今後の観測次第で上下します。
欧米の予測モデルは、さらに強い発達を示しています。ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)や北米マルチモデルアンサンブル(NMME)の予測では、2026年(令和8年)11月ごろのピーク時にNINO3.4指数が4℃近くに達する可能性が示されています。これまでの観測史上最強は2015年(平成27年)から2016年にかけての2.75℃であり、それを大きく上回る計算結果です。ただし、これらは数か月先を見通す季節予測であり、実際の値は今後の観測次第で上下します。
エルニーニョ現象の仕組み
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平常時の太平洋赤道域では、東から西へ吹く貿易風が海面の暖かい水を西側(インドネシア近海)へ吹き寄せています。その結果、東側のペルー沖では深い場所から冷たい水が湧き上がる湧昇が起こり、海面水温が低く保たれます。この貿易風が弱まると暖かい水が東へ広がり、ペルー沖の海面水温が上がります。これがエルニーニョ現象です。
今回の発達がこれほど速い理由として、赤道太平洋の西部から中部で吹いた西風バースト(一時的に強まる西寄りの風)が挙げられています。米国の気象解析サイトSevere Weather Europeによると、2026年(令和8年)6月から7月の西風の異常は86年分のデータの中で記録的な水準に達しました。この風が海面下に暖水の波(ケルビン波)を発生させ、水深250メートル付近で平年より9℃も高い暖水塊が東へ進んでいます。米国海洋大気庁(NOAA)の多変量エルニーニョ指数(MEI)も、6月から7月の値が+2.4となり、1979年(昭和54年)以降で最高を記録しました。

気候科学者のブログRealClimateで、ノルウェー気象研究所のラスムス・ベネスタッド氏は、2026年(令和8年)のエルニーニョには過去と異なる3つの特徴があると指摘しています。第一に、NOAAが6月11日という例年より早い時期に発生を宣言したこと。第二に、前回の2023年(令和5年)から2024年のエルニーニョからわずか2年しか経っていないこと。第三に、季節予測モデルが観測史上経験のない強度を示していることです。
気候科学者のブログRealClimateで、ノルウェー気象研究所のラスムス・ベネスタッド氏は、2026年(令和8年)のエルニーニョには過去と異なる3つの特徴があると指摘しています。第一に、NOAAが6月11日という例年より早い時期に発生を宣言したこと。第二に、前回の2023年(令和5年)から2024年のエルニーニョからわずか2年しか経っていないこと。第三に、季節予測モデルが観測史上経験のない強度を示していることです。
スーパーエルニーニョとは、エルニーニョ監視海域の海面水温偏差が3か月平均で+2℃以上に達した状態を指す呼び方です。過去に確認されたのは1982年(昭和57年)から1983年、1997年(平成9年)から1998年、2015年(平成27年)から2016年の3回だけで、数十年に一度の規模の現象です。2026年(令和8年)のエルニーニョは、この基準をすでに満たす水準まで発達しており、4例目になる可能性が高まっています。

なお、直前の2023年(令和5年)から2024年のエルニーニョは「強い」レベルではあったものの、スーパーエルニーニョの基準には届きませんでした。それにもかかわらず2024年(令和6年)は世界の年平均気温が観測史上最高を記録しており、平常時の気温の底上げがすでに進んでいることがうかがえます。
なお、直前の2023年(令和5年)から2024年のエルニーニョは「強い」レベルではあったものの、スーパーエルニーニョの基準には届きませんでした。それにもかかわらず2024年(令和6年)は世界の年平均気温が観測史上最高を記録しており、平常時の気温の底上げがすでに進んでいることがうかがえます。
温暖化にエルニーニョが上乗せされる
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エルニーニョが起きると、太平洋に蓄えられていた熱が大気へ放出されるため、世界の平均気温が一時的に押し上げられます。その上乗せ幅は約0.2℃とされます。地球温暖化による長期の上昇傾向に、エルニーニョによる短期の変動が重なることで、記録的な高温年が生まれるという関係です。1998年(平成10年)、2016年、2024年(令和6年)の高温記録は、いずれもこの組み合わせで説明されています。
英国の分析機関カーボン・ブリーフの2026年(令和8年)の気候見通しによると、2026年(令和8年)の世界平均気温は産業革命前と比べて1.37℃から1.58℃高くなる見込みで、最も可能性が高い推定値は1.47℃です。観測史上2番目に暖かい年になる確率が62%、最高記録を更新する確率が19%と見積もられています。エルニーニョの気温への影響は半年ほど遅れて現れるため、記録更新の可能性が最も高いのは2027年(令和9年)だと指摘されています。
では、地球温暖化が進むとエルニーニョ現象そのものが強く、あるいは頻繁になるのでしょうか。この点について気象庁は、「温暖化したときにエルニーニョが頻発するか、規模が大きくなるかについて結論はでていない」と明確に述べています。1990年代前半の海面水温上昇を温暖化の影響とみる研究がある一方、自然変動だけで説明できるとする研究もあり、見解が分かれているためです。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年(令和3年)に公表した第6次評価報告書(AR6)も、慎重な書き方をしています。NOAA Climate.govの解説によれば、AR6は、エルニーニョ・南方振動(ENSO)が21世紀を通じて気候変動の主要な要因であり続けることは「ほぼ確実」とする一方、海面水温の変動幅(振幅)が将来どう変わるかについてはどのシナリオでもモデル間の一致がなく、確信度は低いとしています。ただし、エルニーニョやラニーニャに伴う降水量の変動が大きくなることは「可能性が非常に高い」と評価されました。つまり、雨や干ばつの振れ幅は確実に大きくなる、という部分については科学的な見通しが立っています。

個々の研究に目を向けると、より強い主張もあります。オーストラリアのCai氏らが2014年(平成26年)に『Nature Climate Change』へ発表したIncreasing frequency of extreme El Niño events due to greenhouse warmingは、温室効果ガスの増加によって極端なエルニーニョの発生頻度が約2倍になる可能性を示しました。2022年(令和4年)に同誌へ発表されたIncreased ENSO sea surface temperature variability under four IPCC emission scenariosも、4つの排出シナリオのいずれでもENSOの海面水温変動が増大するという結果を報告しています。

一方、東京大学・国立環境研究所・海洋研究開発機構の研究チームは2026年(令和8年)、気候モデルMIROC-ES2Lを使って西暦2500年(令和482年)までを計算し、ENSOが温暖化の程度に応じて非線形に応答するという結果を『npj Climate and Atmospheric Science』に発表しました。国立環境研究所の解説によると、昇温が3℃以下にとどまる場合はENSOの振幅が強まる一方、4℃を超えるほど極端に温暖化するとかえって振幅が小さくなり、発生周期は短くなるとしています。赤道太平洋の東西どちらの海面水温も上がることで、ENSOを増幅する仕組みが働きにくくなるためだと説明されています。他の12の地球システムモデルでも同様の傾向が確認されました。

これらを整理すると、現時点で言えることは次の3点です。第一に、地球温暖化がエルニーニョの発生頻度や強度を増やすかどうかは、まだ決着がついていません。第二に、エルニーニョに伴う雨と乾燥の振れ幅が大きくなることは、確からしいと評価されています。第三に、温暖化によって世界の平均気温そのものが底上げされているため、同じ強さのエルニーニョでも、もたらされる高温や豪雨は以前より深刻になります。2026年(令和8年)のスーパーエルニーニョが警戒されているのは、主にこの第三の理由によるものです。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年(令和3年)に公表した第6次評価報告書(AR6)も、慎重な書き方をしています。NOAA Climate.govの解説によれば、AR6は、エルニーニョ・南方振動(ENSO)が21世紀を通じて気候変動の主要な要因であり続けることは「ほぼ確実」とする一方、海面水温の変動幅(振幅)が将来どう変わるかについてはどのシナリオでもモデル間の一致がなく、確信度は低いとしています。ただし、エルニーニョやラニーニャに伴う降水量の変動が大きくなることは「可能性が非常に高い」と評価されました。つまり、雨や干ばつの振れ幅は確実に大きくなる、という部分については科学的な見通しが立っています。
個々の研究に目を向けると、より強い主張もあります。オーストラリアのCai氏らが2014年(平成26年)に『Nature Climate Change』へ発表したIncreasing frequency of extreme El Niño events due to greenhouse warmingは、温室効果ガスの増加によって極端なエルニーニョの発生頻度が約2倍になる可能性を示しました。2022年(令和4年)に同誌へ発表されたIncreased ENSO sea surface temperature variability under four IPCC emission scenariosも、4つの排出シナリオのいずれでもENSOの海面水温変動が増大するという結果を報告しています。
一方、東京大学・国立環境研究所・海洋研究開発機構の研究チームは2026年(令和8年)、気候モデルMIROC-ES2Lを使って西暦2500年(令和482年)までを計算し、ENSOが温暖化の程度に応じて非線形に応答するという結果を『npj Climate and Atmospheric Science』に発表しました。国立環境研究所の解説によると、昇温が3℃以下にとどまる場合はENSOの振幅が強まる一方、4℃を超えるほど極端に温暖化するとかえって振幅が小さくなり、発生周期は短くなるとしています。赤道太平洋の東西どちらの海面水温も上がることで、ENSOを増幅する仕組みが働きにくくなるためだと説明されています。他の12の地球システムモデルでも同様の傾向が確認されました。
これらを整理すると、現時点で言えることは次の3点です。第一に、地球温暖化がエルニーニョの発生頻度や強度を増やすかどうかは、まだ決着がついていません。第二に、エルニーニョに伴う雨と乾燥の振れ幅が大きくなることは、確からしいと評価されています。第三に、温暖化によって世界の平均気温そのものが底上げされているため、同じ強さのエルニーニョでも、もたらされる高温や豪雨は以前より深刻になります。2026年(令和8年)のスーパーエルニーニョが警戒されているのは、主にこの第三の理由によるものです。
2026年(令和8年)秋から2027年(令和9年)冬にかけての影響として、Severe Weather Europeは北米で南寄りのジェット気流が活発になり、テキサス州から湾岸・南東部が平年より寒くなる一方、カナダ上空では高気圧によるブロッキングが強まると予測しています。米国中部から東部では降雪量が平年より多くなり、大型の冬の嵐が起こりやすくなる見込みです。ヨーロッパでは西寄りの流れが支配的となり、西部から中部は平年より暖かく、北西部は雪に恵まれにくいと分析されています。

日本への影響も無視できません。ウェザーニューズによると、従来「エルニーニョの年は冷夏」とされてきましたが、温暖化による底上げ効果でこの傾向は変わりつつあり、2026年(令和8年)6月から11月の日本の平均気温は平年より0.75℃から1.2℃高いと予測されています。台風の発生数は28個程度と平年(約25個)を上回る見込みで、発生域が東寄りになることで日本へ直接接近・上陸する経路をたどる台風が増えるおそれがあります。

経済面では、食料価格への波及が懸念されます。前回のスーパーエルニーニョ(2015年から2016年)では、東南アジアの干ばつによって国際砂糖価格が一時2倍近くまで上昇し、ベトナムのコーヒー、インドネシアのパーム油、インドの砂糖が大きな打撃を受けました。またパナマ運河の水位低下は通航できる船舶を制限し、迂回による輸送コスト増加を通じて、輸入に頼る日本の食料品価格を押し上げる可能性があります。

エルニーニョは数か月前から予測できる数少ない気候現象です。だからこそ、WMOが強調するように、影響が現れる前に備えることができます。私たち一人ひとりにできることとしては、気象庁が毎月10日ごろに発表するエルニーニョ監視速報や季節予報を確認すること、猛暑や豪雨への備えを前倒しで進めること、そして温暖化そのものを抑える取り組みを続けることが挙げられます。
日本への影響も無視できません。ウェザーニューズによると、従来「エルニーニョの年は冷夏」とされてきましたが、温暖化による底上げ効果でこの傾向は変わりつつあり、2026年(令和8年)6月から11月の日本の平均気温は平年より0.75℃から1.2℃高いと予測されています。台風の発生数は28個程度と平年(約25個)を上回る見込みで、発生域が東寄りになることで日本へ直接接近・上陸する経路をたどる台風が増えるおそれがあります。
経済面では、食料価格への波及が懸念されます。前回のスーパーエルニーニョ(2015年から2016年)では、東南アジアの干ばつによって国際砂糖価格が一時2倍近くまで上昇し、ベトナムのコーヒー、インドネシアのパーム油、インドの砂糖が大きな打撃を受けました。またパナマ運河の水位低下は通航できる船舶を制限し、迂回による輸送コスト増加を通じて、輸入に頼る日本の食料品価格を押し上げる可能性があります。
エルニーニョは数か月前から予測できる数少ない気候現象です。だからこそ、WMOが強調するように、影響が現れる前に備えることができます。私たち一人ひとりにできることとしては、気象庁が毎月10日ごろに発表するエルニーニョ監視速報や季節予報を確認すること、猛暑や豪雨への備えを前倒しで進めること、そして温暖化そのものを抑える取り組みを続けることが挙げられます。
参考サイト
- 『地球温暖化はなぜ起こるのか』(真鍋 淑郎/アンソニー・J・ブロッコリー/阿部 彩子/増田 耕一/宮本 寿代,2022年06月)
- 『やりなおし高校地学』(鎌田 浩毅,2019年09月)
- エルニーニョ監視速報:気象庁
- よくある質問(エルニーニョ/ラニーニャ現象):気象庁
- Strong El Niño expected to intensify:世界気象機関(WMO)
- Super El Niño Growth Accelerating to Record Strength:Severe Weather Europe
- This new El Niño is different:RealClimate
- State of the climate: Strong El Niño puts 2026 on track for second-warmest year:Carbon Brief
- ENSO and Climate Change: What does the new IPCC report say?:NOAA Climate.gov
- 地球温暖化の進行によってエルニーニョ・南方振動はどう変わる?:国立環境研究所
- Increasing frequency of extreme El Niño events due to greenhouse warming:Nature Climate Change
- Increased ENSO sea surface temperature variability under four IPCC emission scenarios:Nature Climate Change
- Are we heading towards a Super El Niño in 2026?:Zero Carbon Analytics
- スーパーエルニーニョの可能性 温暖化との相乗効果で台風接近増や食料価格高騰のリスク:ウェザーニュース
(この項おわり)
