2.7 レンズの基本

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交換レンズ
レンズは、被写体からの光を集めて撮像素子上に像を結ぶ、カメラの性能と表現力を左右する重要な部品である。人間の眼の水晶体に相当し、ピント合わせや明るさの調整、収差の補正などを担う。レンズを通った像は上下左右が反転して結ばれるが、カメラや人間の脳が補正して正しい向きとして認識する。
レンズの焦点距離は画角を決める要素であり、数値が小さいほど広く、大きいほど遠くを大きく写せる。また、同じ焦点距離でも撮像素子の大きさによって画角が変化するため、フルサイズ換算で考えることが重要である。レンズは広角・標準・望遠などに分類され、それぞれ風景、日常撮影、スポーツや野鳥撮影など得意分野が異なる。

初心者にはキットレンズが適しており、まずは一本で焦点距離による写りの違いを学ぶのがよい。ズームレンズは便利で汎用性が高く、単焦点レンズは明るく高画質になりやすい。
F値はレンズの明るさを示し、小さいほど多くの光を取り込めて背景を大きくぼかせる。さらに、収差や解像度は画質に影響し、一般に単焦点レンズの方が有利とされる。
テレコンバータワイドコンバータを使えば焦点距離や画角を変えられるが、画質や明るさへの影響に注意が必要である。レンズは精密機器であるため、用途に応じて選び、安全に持ち運ぶことが大切である。

目次

レンズの役割

カメラのレンズと人間の眼
カメラのレンズと人間の眼
レンズは、被写体から届く光を集め、カメラ内部の撮像素子の上に像を結ぶための部品である。人間の眼でいえば水晶体にあたり、写真の写り方を決定づける最も重要な要素のひとつといえる。どれほど高性能なカメラ本体であっても、レンズの働きがなければ被写体を鮮明に記録することはできない。

レンズは複数のガラスやプラスチックの「玉(レンズエレメント)」を組み合わせて作られている。これらを精密に配置することで、ピントを合わせ、明るさを調整し、像のゆがみや色のにじみを抑えているのである。レンズの種類を選ぶことは、写真の表現そのものを選ぶことにつながる。

レンズを通って撮像素子の上に結ばれる像は、被写体と上下が逆、左右が逆になる。これは、「2.8 画像処理エンジン」で説明するデジタル回路によって正しい方向の画像に戻され、記録される。
これは人間の眼でも同じことが言える。網膜上に結ばれた像は、被写体と上下が逆、左右が逆であるが、大脳がリアルタイム処理で正しい方向に補正している。

同じ被写体を撮っても、使うレンズによって写る範囲やボケ方、立体感は大きく変わる。つまりレンズは、単に像を写すための道具ではなく、撮り手の意図を写真に反映させるための表現の道具でもある。まずはレンズの基本的な性質を知ることが、思いどおりの一枚に近づく第一歩となる。

レンズの焦点距離と撮像素子の関係

撮像素子の大きさによって写る範囲(画角)が変わる
撮像素子の大きさによって写る範囲(画角)が変わる
焦点距離とは、ピントを合わせたときのレンズの中心から撮像素子までの距離のことで、ミリメートル(mm)で表される。この数値が小さいほど広い範囲が写り、大きいほど遠くのものを大きく写すことができる。レンズに記された「24mm」「50mm」「200mm」といった数字が、この焦点距離を示している。

ただし、同じ焦点距離のレンズでも、カメラに搭載された撮像素子の大きさによって写る範囲は変わる。撮像素子が小さいほど写る範囲は狭くなり、結果として望遠寄りの写りになる。そのため、機種ごとの違いを比較しやすいよう、フルサイズ換算(35mm換算)で焦点距離を表すことが多い。

たとえば撮像素子の小さい APS-C機では、表示された焦点距離をおよそ1.5倍した値が実際の画角に近くなる。50mmのレンズなら75mm相当の写りになる、といった具合である。レンズを選ぶときは、この換算を頭に入れておくと、自分の思い描く範囲が写せるかどうかを判断しやすくなる。

撮像素子がフルサイズ(35mm)とAPS-Cとで、同じレンズが使える(レンズマウントが同じ)メーカーが多い。しかし、APS-C用に設計されたレンズをフルサイズ機で使うと、画面の周辺部が真っ暗になってしまう。これは、光が行き渡る範囲がAPS-Cサイズに限られて設計されているからだ。
逆に、フルサイズ用に設計されたレンズをAPS-C機で使うことはできるが、価格も高く、重量も重たくなるというデメリットがある。
交換レンズを購入するときには注意したい。

広角・標準・望遠の違い

広角・標準・望遠
広角・標準・望遠
レンズは焦点距離によって、おおまかに広角・標準・望遠の3つに分けられる。広角は広い範囲を写せるため風景や室内に向き、望遠は遠くの被写体を大きく写せるためスポーツや野鳥に向く。標準はその中間で、人間の見た目に近い自然な写りが得られる。
交換レンズの焦点距離と主な用途
名称 焦点距離 主な用途
フルサイズ APS-C マイクロ
フォーサーズ
魚眼 8〜
15mm
5〜
10mm
4〜
8mm
極端に広い範囲を写す。全天、星空、狭い室内、スポーツや建築の誇張表現に向く。歪みを表現として使うレンズである。
広角 16〜
35mm
10〜
24mm
8〜
17mm
風景、建築、室内、旅行写真に向く。広い範囲を写せるため、狭い場所でも使いやすい。遠近感が強調される。
標準 40〜
60mm
27〜
40mm
20〜
30mm
人の視覚に近い自然な画角。スナップ、日常写真、料理、旅行、ポートレートなど幅広く使える基本レンズである。
中望遠 70〜
135mm
45〜
90mm
35〜
67mm
ポートレート、花、物撮りに向く。背景をぼかしやすく、被写体の形も自然に写しやすい。
望遠 150〜
300mm
100〜
200mm
75〜
150mm
運動会、鉄道、動物、舞台、スポーツなど、離れた被写体を大きく写す用途に向く。背景を引き寄せる圧縮効果も出やすい。
超望遠 400mm以上 270mm以上 200mm以上 野鳥、航空機、モータースポーツ、月、遠距離の動物撮影に向く。三脚や手ぶれ補正が重要になる。

キットレンズの使い方

キットレンズとは、カメラ本体とセットで販売される標準ズームレンズのことである。多くは広角から中望遠までを一本でカバーしており、風景から人物まで幅広い被写体に対応できる。価格を抑えつつ実用的な性能を備えているため、初心者が最初に使うレンズとして最適である。

まずはキットレンズを使い込み、広角端と望遠端で写りがどう変わるかを体で覚えるとよい。ズームを動かして構図を決める習慣がつくと、次にどんなレンズが必要かが自然と見えてくる。物足りなさを感じてから次のレンズを検討すれば、無駄な買い物を避けられる

キットレンズは万能ではなく、暗い場所では性能の限界を感じることもある。しかし、その限界を知ること自体が学びとなる。あえて一つの焦点距離に固定して撮ってみるなど、制約の中で工夫を重ねることで、構図やピント合わせの基礎力が着実に身についていく。

ズームレンズと単焦点レンズ

(上)ズームレンズ (下)単焦点レンズ(イメージ)
(上)ズームレンズ (下)単焦点レンズ(イメージ)
ズームレンズと単焦点レンズの比較
項目 ズームレンズ 単焦点レンズ
焦点距離 可変 固定
明るさ やや暗め 明るい
画質 標準的 高画質になりやすい
大きさ・重さ 大きめ 小型軽量が多い
使い勝手 万能で便利 自分が動いて構図を作る

F値とレンズの明るさ

(上)F値が小さい (下)F値が大きい(イメージ)
(上)F値が小さい (下)F値が大きい(イメージ)
F値とは、レンズがどれだけ多くの光を取り込めるかを示す数値である。F1.8やF2.8のように数字が小さいほどレンズは明るく、暗い場所でもシャッター速度を稼げるため、手ブレや被写体ブレを抑えやすい。レンズの明るさを表す重要な指標であり、しばしば「明るいレンズ」「暗いレンズ」と呼ばれる。

F値が小さいレンズは光を多く取り込めるだけでなく、背景を大きくぼかせるという特長もある。人物や花を主役として際立たせたいときに効果的である。一方で、明るいレンズは構造が複雑になるため、価格が高く、大きく重くなりやすい点には注意が必要である。

なお、ズームレンズには「F3.5-5.6」のように2つのF値が記されたものがある。これは広角端と望遠端で明るさが変わることを意味する。望遠側ほど暗くなるため、室内や夕方の撮影では設定に気を配りたい。用途に合わせて、どの程度の明るさが必要かを考えて選ぶとよい。

レンズの収差や解像度

レンズ収差による色のにじみやゆがみ(イメージ)
レンズ収差による色のにじみやゆがみ(イメージ)
収差とは、レンズを通った光が一点に集まりきらず、像がにじんだりゆがんだりする現象のことである。画面の周辺で色のふちどりが出たり、直線が曲がって写ったりするのは収差の影響である。レンズメーカーは特殊なガラスや複雑な設計によって、こうした収差を抑える工夫を重ねている。

解像度とは、細部をどれだけ鮮明に描き出せるかを表す性能である。解像度の高いレンズは、髪の毛や木の葉といった細かな部分までくっきりと再現できる。

特殊な材質のレンズやコーディングを使って収差を抑えたり、解像度を高めているレンズがあるが、高価なレンズなら収差が少なく、解像度が高いとはいいきれない。ただ、レンズの原理上、ズームレンズは単焦点レンズより収差が大きく、解像度が低くなる傾向にある。
もっとも、初心者のうちは数値にこだわりすぎる必要はなく、まずは手元のレンズで多く撮り、描写の違いを楽しむことが上達への近道であろう。

テレコンバータとワイドコンバータ

レンズに装着したテレコンバータ(イメージ)
テレコンバータ(イメージ
テレコンバータとは、レンズとカメラ本体の間に取り付け、焦点距離を伸ばすための補助レンズである。「テレコン」「エクステンダー」とも呼ばれ、1.4倍や2倍といった倍率のものが多い。手持ちの望遠レンズをさらに望遠化できるため、野鳥やスポーツなど、より遠くの被写体を大きく写したいときに役立つ。
ただし、テレコンバータを使うと取り込める光の量が減り、レンズが暗くなる点に注意したい。
1.4倍では約1段、2倍では約2段F値が大きくなり、シャッター速度を稼ぎにくくなる。また、画質がわずかに低下したり、オートフォーカスが効きにくくなったりする場合もある。レンズとの相性が決まっているため、対応の組み合わせを確認してから購入することが大切である。

一方、ワイドコンバータは、レンズの前面に取り付けて画角を広げる補助レンズである。「ワイコン」とも呼ばれ、広角端をさらに広く写せるようになる。レンズ交換のできないコンパクトカメラやスマートフォン向けの製品も多い。手軽に画角を変えられる反面、周辺部の画質低下やゆがみが出やすいため、表現の幅を広げる道具として割り切って使うとよい。
テレコンバータとワイドコンバータの比較
項目 テレコンバータ ワイドコンバータ
取り付け位置 レンズと本体の間 レンズの前面
主な効果 焦点距離を伸ばす(望遠化) 画角を広げる(広角化)
倍率の例 1.4倍・2倍 0.7倍前後
明るさ・画質 暗くなり、画質も低下しやすい 周辺の画質低下・ゆがみが出やすい
主な用途 野鳥・スポーツなどの望遠撮影 風景・室内などの広角撮影

レンズの持ち歩きについて

レンズをクッション入りのカメラバッグに収めて持ち歩く様子(イメージ)
レンズの安全な持ち運び(イメージ
レンズは精密機器であり、衝撃やほこり、湿気に弱い。持ち歩く際は、クッション性のあるカメラバッグや専用ケースに収め、ぶつけたり落としたりしないよう注意したい。前後のキャップを必ず付け、レンズ面に直接ふれないようにすることも基本である。

複数のレンズを持ち出すと撮影の幅は広がるが、その分だけ荷物は重くなる。すべてを持ち歩くのではなく、その日の撮影目的に合わせて必要なレンズを選ぶとよい。身軽にしておくことで撮影に集中でき、結果として良い写真を多く残せるのである。

参考サイト

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(この項おわり)
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