4.3 写真の現像・補正の基本

(1/1)
現像ソフトで写真を調整する(イメージ)
現像ソフトで写真を調整する(イメージ)
AI生成コンテンツ / AI-generated contents
4.2 RAW現像とは何か」で、RAWデータを写真として仕上げる作業を現像と呼ぶことに触れた。ここでは、その現像の中身をもう一歩具体的に説明する。現像ソフトには数多くの調整項目が並んでいるが、初心者がすべてを一度に覚える必要はない。まずは明るさ傾き切り抜きの4つに絞れば、たいていの写真は見違えるように整う。あわせて、現像とレタッチの違いや、コントラスト・ホワイトバランス・彩度・ハイライトとシャドウの調整、そしてやりすぎ補正への注意点も解説する。

目次

現像とレタッチの違い

フィルムを現像する様子
フィルムを現像する様子
AI生成コンテンツ / AI-generated contents
フィルム時代の現像は、光を浴びたフィルムを薬品で処理し、目に見える画像として定着させる作業を指す言葉であった。フィルムそのものには手を加えず、決められた工程を経て初めて写真として姿を現す点が特徴である。デジタル写真における現像は、これと同じ言葉を使いながら、RAWデータという生の情報を、明るさや色を整えた見られる写真に仕上げる作業を意味する。フィルムの化学処理が、パソコン上のソフトによる調整に置き換わったと考えるとわかりやすい。
一方レタッチは、いったん仕上がった写真に対して部分的な修整を加えることを指す。人物の肌を整えたり、写り込んだ不要なものを消したり、複数の写真を合成したりする作業がこれにあたる。現像が写真全体の土台を整える基本工程であるのに対し、レタッチはその土台の上に施す仕上げの手作業である。初心者はまず現像の基本を身につけ、レタッチは余裕が出てきてから少しずつ試すとよい。
現像とレタッチの違い
項目現像レタッチ
対象写真全体写真の一部分
主な内容明るさ・色・傾き・切り抜き肌の修整、不要物の除去、合成など
フィルム時代の対応薬品によるフィルム現像焼き付け時の部分補正など
初心者の取り組み方まず基本を身につける慣れてから少しずつ試す

明るさを整える

現像ソフトで明るさ調整(イメージ)
現像ソフトで明るさ調整(イメージ)
AI生成コンテンツ / AI-generated contents
現像の中で最初に手をつけるべきは、明るさ(露出)の調整である。多くの現像ソフトには露出というスライダーがあり、これを左右に動かすだけで写真全体を明るくしたり暗くしたりできる。撮影時に露出がわずかにずれていても、ここで整えれば見た目は大きく改善する。
調整の目安になるのがヒストグラムである。画面の隅に表示される山型のグラフで、写真の明るさの分布を示している。グラフが左端に張り付いていれば暗すぎ(黒つぶれ)、右端に張り付いていれば明るすぎ(白飛び)のサインである。ヒストグラムの山がどちらの端にも大きく偏らないように露出を調整すると、失敗の少ない仕上がりになる。ただし、あえて暗めに仕上げたい写真や明るく飛ばしたい写真もあるため、数値だけにとらわれず、自分の目で見た印象も大切にしたい。

コントラストを調整する

コントラストとは、写真の中の明るい部分と暗い部分の差のことである。コントラストを上げると、明暗の差が強調されてメリハリの効いた力強い印象になる。反対にコントラストを下げると、明暗の差がゆるやかになり、やわらかく落ち着いた印象になる。

明るさ(露出)が写真全体の明暗の位置を動かす調整であるのに対し、コントラストは明暗の差そのものを強めたり弱めたりする調整である。晴れた日の風景写真ではコントラストをやや強めるとくっきりした印象になり、曇りの日やしっとりした雰囲気を出したい人物写真ではコントラストを抑えると柔らかい印象に仕上がる。まずは少しずつスライダーを動かし、変化の具合を目で確かめながら調整する習慣をつけるとよい。

ホワイトバランスを微調整する

ホワイトバランスは、光源による色かぶりを補正し、白いものを白く見せるための調整である。カメラの自動ホワイトバランスは優秀だが、屋内の照明や日陰、逆光など難しい光の場面では、色味が思った通りにならないことがある。現像ソフトでは、撮影後にホワイトバランスをやり直せる点がRAWの大きな利点である。

調整には主に色温度色かぶり補正(グリーン・マゼンタ軸)の2つのスライダーが使われる。色温度を上げると写真は黄色みを帯びた温かい色調になり、下げると青みを帯びた冷たい色調になる。色かぶり補正は、緑がかった色味とマゼンタ(赤紫)がかった色味の間を調整するもので、蛍光灯の下で撮った写真の緑かぶりを直すときなどに使う。大きく動かす必要はなく、微調整で十分自然な色に近づく。

彩度・自然な彩度

色の鮮やかさを調整する項目には、彩度自然な彩度(バイブランス)の2種類がある。彩度は、写真に含まれるすべての色の鮮やかさを均等に強めたり弱めたりする調整である。数値を上げすぎると、色が不自然に濃くなったり、肌の色が赤黒くなったりしやすい。

一方自然な彩度(バイブランス)は、すでに鮮やかな色にはあまり手を加えず、くすんだ色を中心に持ち上げる調整である。人物の肌色への影響が少なく、青空や紅葉などを鮮やかにしたいときでも不自然になりにくい。特別な理由がなければ、彩度より自然な彩度を優先して使うと、失敗の少ない仕上がりになる。

ハイライトとシャドウ

ハイライトは写真の明るい部分、シャドウは写真の暗い部分だけを個別に調整できる項目である。明るさ(露出)が写真全体の明暗をまとめて動かすのに対し、ハイライトとシャドウは明暗それぞれをピンポイントで調整できる点が異なる。

たとえば、空が明るすぎて白っぽくなった写真は、ハイライトを下げると空の質感が戻ってくることがある。逆光で人物の顔が暗く沈んだ写真は、シャドウを上げると顔の表情が見えるようになる。晴天下の風景や逆光の人物写真など、明暗差の大きい場面で特に効果を発揮する調整項目である。

傾き補正とトリミング

グリッド線を表示して写真の傾きを補正する(イメージ)
グリッド線を表示して写真の傾きを補正する(イメージ)
AI生成コンテンツ / AI-generated contents
撮影のときに気をつけていても、水平線や建物の縦のラインがわずかに傾いてしまうことは珍しくない。現像ソフトの傾き補正(水平・垂直補正)機能を使うと、画面上に表示されるグリッド線を目安にして、水平や垂直をきちんと合わせられる。地平線や水平線、建物の柱など、まっすぐであるべき線を基準に合わせるとよい。
トリミングは、写真の一部を切り出して構図を整える作業である。撮影時にどうしても入り込んでしまった余計なものを画面の外に追い出したり、被写体をより大きく見せたりできる。ただし、トリミングをすると写真の解像度(画素数)は小さくなるため、大きく印刷したい写真では切り出しすぎに注意する。傾き補正を行うと画面の端が欠けるため、傾き補正とトリミングは合わせて行う作業と考えておくとよい。

やりすぎ補正に注意する

現像に慣れてくると、あれもこれもと調整項目を大きく動かしたくなるが、やりすぎ補正には注意したい。彩度を上げすぎると色が不自然に濃くなり、コントラストを上げすぎると陰影が硬くなる。ノイズ低減をかけすぎると、肌や物の質感が消えてのっぺりした写真になってしまう。シャープネスのかけすぎも、輪郭に白い縁取りのようなものが出て不自然に見える原因になる。

初心者のうちは、調整項目を控えめに動かし、こまめに調整前と調整後を見比べる習慣をつけるとよい。多くの現像ソフトには、調整前後をワンタッチで切り替えて比較できる機能が用意されている。「直しすぎていないか」を都度確認しながら仕上げれば、自然で破綻のない写真に近づいていく。
現像の基本4項目(まず身につけたいこと)
項目内容
明るさ露出スライダーとヒストグラムで明暗を整える
ホワイトバランスと彩度(自然な彩度)を整える
傾きグリッド線を使って水平・垂直を合わせる
切り抜きトリミングで構図を整理する
(この項おわり)
header