『マーフィーの法則』――宇宙の法則

アーサー・ブロック=著/倉骨彰=訳
表紙 マーフィーの法則
著者 アーサー・ブロック/倉骨彰
出版社 アスキー・メディアワークス
サイズ 単行本
発売日 1993年07月
価格 1,708円(税込)
ISBN 9784756103260
メイの地層学の法則
相関特性は、制御の密度に反比例する。
MAY'S LAW OF STRATIGRAPHY
The quality of correlation is inversely proportional to the density of control.

概要

失敗する可能性のあるものは、失敗する。
「失敗する可能性のあるものは、失敗する。」――本書は、この一文にはじまるマーフィーの法則を体系的にまとめた決定版である。原書は"The Complete Murphy's Law"(1990年)で、1977年(昭和52年)刊の初版とその後の続編2冊を統合した内容である。発展形には、「見かけほど簡単なものはない」「何事も、思っているより時間がかかる」「すべての解決は、新たな問題を産む」などがある。
ほかにも、「ものが壊れる確率は、その価格に比例する」というマーフィー定数 (マーフィーていすう) 、「何かが順調なときは、何かがおかしくなる」というチズホルムの第1法則、「計画どおりにいくものはない」というシーの法則など、日常の小さな不運を言い当てた法則が数百項目収録されている。

「マーフィー」とは、1949年(昭和24年)、アメリカ・カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地で働いていた技術者、エドワード・アロイシャス・マーフィー・ジュニアのことである。ジョン・ポール・スタップ少佐によるロケットソリを使った減速実験の際、重力測定装置の配線を誰かが誤って取り付けていたことに気づいたマーフィーが、「いくつかの方法があって、そのうち1つが悲惨な結果に終わる方法であるとき、人は必ずそれを選ぶ」と言ったことが由来とされる。この逸話がスタップ少佐の記者会見で紹介され、業界誌に掲載されて広まった。マーフィーは1990年(平成2年)7月、72歳で死去したが、2003年(平成15年)、この功績によりスタップ少佐、ジョージ・ニコルズとともに死後にイグノーベル賞(工学賞)を授与されている。

レビュー

すべての解決は、新たな問題を産む。
本書に収められた数々の法則は、私が1980年代、たまたまパソコン通信を通じて知ったものである。当時はまだ書籍化されておらず、掲示板やパソコン通信仲間の間で、コピーされた文章として個人的に回っているものだった。それが1993年(平成5年)に書籍としてまとめられ、刊行の翌年、1994年(平成6年)には嘉門達夫がシングル『マーフィーの法則』を発売し、テレビやラジオで盛んに流れて社会現象となった。「授業中に限ってトイレに行きたくなる」といった、誰もが経験する「あるある」を法則として言語化した点が、幅広い世代に受け入れられた要因であろう。
小説『幼女戦記』(カルロ・ゼン,2013年(平成25年)~)では、主人公であるターニャ・フォン・デグレチャフ少佐が、マーフィーの法則を引用する場面が描かれている。技術者的な思考を持つ主人公が異世界でこの法則を持ち出す展開は、マーフィーの法則がいかに広く技術者やエンジニアの共通言語として浸透しているかを物語っている。技術者の立場から本書を読むと、世界中の多くの技術者が同じ悩みを抱えていることが分かる。「バグは決まって客先で見つかる」「動作確認をした瞬間に動かなくなる」といった経験は、決して自分だけのものではない。その意味で、本書は不安を安心に変えてくれる1冊であるといえる。

なお、本書と同じ1994年(平成6年)3月には、謝世輝著『マーフィーの成功法則』(三笠書房・知的生きかた文庫)も刊行されている。両者は書名が似ているが、内容も由来もまったく異なる。本書の「マーフィー」は、前述のとおりアメリカ空軍基地の技術者エドワード・A・マーフィー・ジュニアであり、「失敗する可能性のあるものは、失敗する」という皮肉なユーモアの法則集である。一方、謝世輝の著書で扱われる「マーフィー」は、ジョセフ・マーフィー(1898年-1981年)という、アイルランド出身でアメリカで活動した牧師・著述家のことである。ジョセフ・マーフィーは、潜在意識の力を活用すれば願望が実現するという「成功法則」を説いた人物で、エドワード・マーフィーとは血縁も面識もない、まったく別人である。姓が同じ「マーフィー」であるために、書店や古書市場では両書がしばしば混同されている。

また、コンピュータRPG「Wizardry」(1981年)に登場する敵性キャラクター「マーフィーズ・ゴースト」(Murphy's Ghost)も、エドワード・マーフィーとは無関係である。開発者アンドリュー・グリーンバーグの友人で、同作のテストプレイヤーを務めたポール・マーフィーに由来する名前であることが、後年の海外メディアの取材で判明している。ゲーム序盤に繰り返し出現し、プレイヤーを苦しめる存在であることから、長らく「マーフィーの法則」にちなんで名付けられたと誤解されてきたが、実際には人名への献辞(トリビュート)だったのである。
(1993年7月30日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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