『みどりの窓口を支える「マルス」の謎』

杉浦一機=著
表紙 みどりの窓口を支える「マルス」の謎
著者 杉浦一機
出版社 草思社
サイズ 単行本
発売日 2005年10月
価格 1,650円(税込)
ISBN 9784794214331
鉄道技術研究所は5000万円の予算を確保して電子計算機の製作メーカーを募集したが、直ちに応募してきたのは電話交換機をつくっていた日立製作所戸塚工場だった。研究所を訪れた日立の役員は「赤字覚悟で取り組みます」と熱弁を振るったが、他に応募したメーカーは皆無だった。(49ページ)

概要

マルス発券機
マルス発券機
日立製作所によって開発が始められた国鉄の発券システム「MARS(マルス)」の成長のドキュメンタリーである。1960年の「マルス1」から2004年に完成した最新の「マルス505」まで、開発年表やスペック表が掲載されており、システム屋として参考になる資料だ。

現在のマルスは、データ投入から発券までのレスポンスタイムは最大6秒を保証するという。レスポンスタイムというのは非常に重要な要素なのだが、Webアプリが興隆してきた現在、ついつい忘れがちな要件仕様である。
また、予約のブッキング、システムダウン対策など、システム設計の基本が淡々と述べられている。マルスは大型電算機の時代にスタートしたシステムだが、分散処理系に移行した現在でも、基本となる要件仕様は厳しくチェックされているようだ。

マルス以前の座席予約システムは、回転する円卓に紙の予約台帳が並べられており、その円卓の回転速度が速いため、オペレータには動体視力と反射神経が要求され、けが人が続出したそうだ。

一方で、「マルス1」は東海道新幹線開業前にリリースされたのだが、当初、新幹線の予約には使われなかったという。当時の人たちは、電算機を信用していなかったのだ。しかし、「マルス1」は順調に実績を伸ばし、関係者の信頼を勝ち得ていった。そして新幹線をはじめとする、すべての座席予約を担うこととなった。その後、マルスの作業範囲はどんどん広がり、現在では発券はもちろんのこと、ホテルやレンタカーの予約も含み、自宅の電話やインターネットからの予約ができるようになった。

このような巨大システムの開発に携われrとしたら、仕事は大変だろうが、技術者冥利に尽きるというものだ
(2005年12月13日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
header