『体温免疫力』――トンデモ医学の標準書

安保徹=著
表紙 体温免疫力
著者 安保徹
出版社 ナツメ社
サイズ 単行本
発売日 2004年06月
価格 1,650円(税込)
ISBN 9784816337178
おもしろいのは、高熱が出てがんが消えるときは、じつにスパッとがんがなくなることです。(110ページ)

概要

マッドサイエンティストのイラスト
著者の安保徹 (あぼとおる) 先生は、免疫学が専門の医師で、日本自律神経病研究会の終身名誉理事長。一度だけ講演を聞いたことがある。
前半部分では免疫のメカニズムが図入りで説明されている。これは理科の教科書よりわかりやすい。さすがは専門家である。
ただ、のっけから「どうやら鳥は、体温が41C以上ないと空を飛べないようです」(17ページ)とあり、ぶっ飛んでしまった。かなりアレゲな本である。免疫学が専門といっても、研究実績を確認した方がいい。
「現代医学は、近年急速に発達したといわれていますが、それでも治せない病気や、原因がよくわからない病気は枚挙に暇がありません」(82ページ)――これはまったくその通りだと思う。その流れで、かゆみは血流が良くなっている証拠なので放っておけばよい、というのもわかる。

後半部分で、次第にアレゲになってくる。高熱で癌が「スパッとがんがなくなる」(110ページ)とか、「五十肩のほんとうの原因」は「いつも片側だけを下にして寝ているため」(139ページ)とか――他の場合、他の原因を無視した主張が並び、気をつけていないと著者の論法に巻き込まれてしまう。

一線を超えてしまった専門家の著作として、興味深く読ませてもらった。
(2006年8月16日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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