『「失敗学」事件簿』――三現主義とは

畑村洋太郎=著
表紙 「失敗学」事件簿
著者 畑村洋太郎
出版社 小学館
サイズ 単行本
発売日 2006年04月
価格 1,430円(税込)
ISBN 9784093876315
コンプライアンスとは、「社会の要求に対して、組織がしなやかに対応すること」なのだと思う。(12ページ)

概要

「失敗学」事件簿
「失敗」の定義は「こうなるだろうと思って行動したが、初めに定めた目的を達成できないこと」(164ページ)だという。この定義に従えば、JR西日本・福知山脱線事故は「失敗」だが、中越地震によるJR東日本・上越新幹線打線事故は「失敗ではない」ということになる。

その違いがどこにあるのかは本書を読んでもらうとして、本書を通じて感じたのは、マスコミの報道を鵜呑みにしないということである。世の中、絶対に安全ということはあり得ない。となれば、発生した事故が、あらかじめ想定された範囲内なのであれば、「失敗」とは言えないわけだ。むしろ「絶対に事故は起きない」と主張する技術については、疑ってかかった方がいい。
著者の畑村洋太郎さんは、「現地・現物・現人」の3つを重視する「三現主義」をとっているというが、われわれ技術者もまた、自分の目で確認し、自分の耳で聞いたこと以外は、いちおう疑ってかかるのが常識である。
また、「私のような工学専門家がコンプライアンスと聞くと、『柔らかさ』『柔軟性』というイメージがまず浮かぶ」(12ページ)としてうえで、「コンプライアンスとは、『社会の要求に対して、組織がしなやかに対応すること』なのだと思う」と述べている。
(2006年12月8日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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