『失敗の本質』――成果主義とは何か

戸部良一、他=著
表紙 失敗の本質
著者 戸部良一
出版社 中央公論新社
サイズ 文庫
発売日 1991年08月
価格 838円(税込)
ISBN 9784122018334
米軍にとって、理論とは他から与えられるものでなく、自らがつくり上げていくべきものと考えられているからである。(231ページ)

概要

ミッドウェー海戦
ミッドウェー海戦
ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦などを取り上げ、日本軍がどこでどう失敗したのかを解き明かした名著である。
たとえば、ミッドウェー作戦における日本軍の問題点として、「攻撃力偏重の戦略・用兵思想」「防禦の重要性の認識の欠如」「ダメージ・コントロールの不備」をあげている。また、真珠湾攻撃において、航空部隊によって米軍の艦船を叩きつぶしておきながら、その後の海戦では、今度は米軍の航空部隊によって自身の艦船を失うという不思議な結果になっている。本書に紹介されている局地戦では、戦術が誤っていなければ日本が勝利していた可能性があったと思われる。

後半では、日本軍の問題点を論じる。
印象的なのは、「日本軍は結果よりもプロセスを評価した」(236ページ)という下りである。つまり、「個々の戦闘においても、戦闘結果よりはリーダーの意図とか、やる気が評価された」というのだ。これは、現代社会にも通じるところがある。

会社で成果主義が導入され、社員の成果を数値化しようという努力がなされている。学生の試験の点数も同じである。ところが、いざ評価となると、「結果よりもプロセスを評価」しようとするのである。これは明らかに矛盾している。
成果主義にするなら結果のみに着目すれば良く、プロセスも評価したいなら成果主義は修正すべきである。
にもかかわらず、評価基準が曖昧なまま社会は流れていく――日本が先進国に追いつこうと国民が一丸となって走っている時代なら、臨機応変の対応を取ることができ、良い方向に作用したであろう。しかし、先進国の仲間入りをし、自らが方針を決めなければならなくなった時、このような曖昧な状態では国民が混乱する。
(2009年2月5日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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