『朽ちるインフラ』――インフラ更新に毎年8兆円が必要

根本祐二=著
表紙 朽ちるインフラ
著者 根本祐二
出版社 日経BPM(日本経済新聞出版本部)
サイズ 単行本
発売日 2011年05月
価格 2,200円(税込)
ISBN 9784532354596
行政に注文を付ける前に、まずやるべきことがある。それは市民の義務だと思う。(261ページ)

概要

公共施設、インフラの老朽化により、必要な更新投資が337兆円に膨れ上がっている。このままでは投資額は毎年8兆円以上にのぼるという。
この問題を放置したままだとどうなるかという架空の物語がプロローグに、対処した場合の物語がエピローグに語られるというユニークな論説書。
著者は、東洋大学PPP研究センター長で地域再生問題に取り組んでいる根本祐二さんだ。
コンクリートが危ない』(小林一輔=著)とセットで読むことをおすすめする。

レビュー

まず根本さんは、「今年から3年後の2014年は、東京オリンピックが開催された1964年から数えて50年後になる。学校や橋など、当時整備された社会資本は、今いっせいに更新投資の時期を迎えている」(2ページ)と指摘する。実際に「日本の橋りょうの老朽化による崩落・使用規制事例」が2ページにわたって一覧表になっており、こんなに多いのかと驚かされる。「全国には、約68万の橋が存在する。このうち、日常的に管理されている橋は、実はごく少数である。基礎自治体のうち定期検査を行っているのは、全体の62%に過ぎない」(46ページ)という。

337兆円という数字はピンと来ないが、根本さんら東洋大学PPP研究センターのチームは、「自治体別に更新投資を推計するソフトを開発して発表」(96ページ)したという。これによって、各自治体がかかえる資産が分かるようになっている。
そして、自治体向けの対応策も提案している。
たとえば施設の統廃合である。「今後の人口減少を考えると、すべての施設を現状のままの規模で維持することは、逆に人口1人あたりの規模を大きくすることになる」(176ページ)から、統廃合を行おうというものだ。
また、上下水道や橋りょうについては、「間引き」を提案する。
いずれも理に敵った提案であり、とくに自治体職員・議員の方は一読の価値があるだろう。

そして何より大切なことは、住民参加だと指摘する。
たとえば公共図書館の場合、その維持には平均して住民一人あたり年間千円だという。公民館になると1万円だ。この金額を安いと思うか高いと思うか、住民一人一人が判断し、インフラの整理に反映させていくべきだと説く。
(2012年02月02日 読了)
(この項おわり)
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