シリーズ概要
『ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~』は、加藤元浩さんが、「月刊少年マガジン」2023年6月号から2025年11月号に連載していた。司法試験合格を目指すド素人住職でボケ役のタヌキ和尚こと古崎幸介と、バリバリの関西弁で事件のカギを「見通し」できる「ないない堂」店主でツッコミ役の狐坂銀花が、妖怪がらみの事件に挑むミステリー漫画だ。全8巻。
目次
ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~ 第1巻
銀花「ないない堂 店主、狐坂銀花です! 報酬次第、迅速解決! 特急料金ございます!」
七狸山へようこそ‥‥亡くなった母との約束を守るために弁護士を目指した古崎幸介だったが、2度目の司法試験に落ち、祖父との約束にしたがって僧侶になり、多貫という戒名をもらい、巨大な湖のある七狸山の寂れた万済寺の勤めることになった。彼は、万済寺へ向かう途中で雨に降られ、「ないない堂」に立ち寄ると、関西弁でまくし立てる店主の狐坂銀花に出会う。地元住民にタヌキ和尚と呼ばれるようになった幸介は、ある日、金網を張った井戸の中で死んでいる柿沢希江の事件に巻き込まれる。銀花から怪談「水筋の抜け道」を聞かされる。銀花は「見通し」という特殊能力を使って失せ物を探してきたという。

油坊の呪い‥‥町に妖怪「油坊」が出てたという。一人の老人、日向漂太が焼死した。幸介は銀花に相談すると、彼女は平家物語を引用し、「坊さんが妖怪になっている例が多いと思わんか?」と逆に訊ねる。妻の早実は過労で入院。孫娘の円華に、曾祖父で有名な画家・天草の絵の具箱を探してきて、と言い残して亡くなる。早実は絵の具箱探しを銀花に依頼していた‥‥。
油坊の呪い‥‥町に妖怪「油坊」が出てたという。一人の老人、日向漂太が焼死した。幸介は銀花に相談すると、彼女は平家物語を引用し、「坊さんが妖怪になっている例が多いと思わんか?」と逆に訊ねる。妻の早実は過労で入院。孫娘の円華に、曾祖父で有名な画家・天草の絵の具箱を探してきて、と言い残して亡くなる。早実は絵の具箱探しを銀花に依頼していた‥‥。
ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~ 第2巻
銀花「自然は調和してるけど、人の心はそうはならん。災いを呼ぶ妖怪として。,人の心が作ったもんが鬼や」
地蔵盆の水辺‥‥万済寺に銀花と喫茶「幻の湖」のクマさんが訪れ、幸介に地蔵盆で経を上げてほしいと誘う。社員に架空取引がバレた講談重工の専務と販売部長は、銀花に携帯電話探しを依頼する。そんなとき、川に河童のガタロウが出た。
丑の刻参り‥‥丑の刻参り殺人事件が起きた。法科大学院で幸介の同級生だった船場千鶴は、容疑者・大江山俊寛の弁護を担当することになった。大江山は呪殺したことは認めているが、借用書がなくなったこととは無関係だと主張する。

丑の刻参り‥‥丑の刻参り殺人事件が起きた。法科大学院で幸介の同級生だった船場千鶴は、容疑者・大江山俊寛の弁護を担当することになった。大江山は呪殺したことは認めているが、借用書がなくなったこととは無関係だと主張する。
ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~ 第3巻
銀花「歴史は地形で作られるんや」
雷獣‥‥万済寺の檀家で吉村安江が倒れた。息子の借金の保証人になっており、祖父の代から暮らしている土地・家を売らなければならなくなっていた。安江は銀花に、祖父が残してくれたという宝物の探索を依頼する。そんなとき、子どもたちが雷獣を目撃したという。はたして、祖父の宝物はどこにあるのか‥‥。

雪女‥‥大雪の日、動画配信グループ「地獄遊覧」は巨大な湖のある小さな町で雪女を撮影した。グループは銀花に雪女捜しを依頼する。年末年始、銀花は東京の実家には帰らないという。子どもの頃「見通し」で犯人を捕まえたり、テストの答えが見えてしまったり。父親は彼女のことが何も理解できないと嘆いた。7年前、銀花は祖母が暮らし巨大な水宇海のある小さな町に転校する。祖母は「見通し」の能力を知っており、それを数学者ラマヌジャンに喩える。銀花が家を出た本当の理由は‥‥。
雪女‥‥大雪の日、動画配信グループ「地獄遊覧」は巨大な湖のある小さな町で雪女を撮影した。グループは銀花に雪女捜しを依頼する。年末年始、銀花は東京の実家には帰らないという。子どもの頃「見通し」で犯人を捕まえたり、テストの答えが見えてしまったり。父親は彼女のことが何も理解できないと嘆いた。7年前、銀花は祖母が暮らし巨大な水宇海のある小さな町に転校する。祖母は「見通し」の能力を知っており、それを数学者ラマヌジャンに喩える。銀花が家を出た本当の理由は‥‥。
ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~ 第4巻
幸介「『跡見よ蘇婆訶』跡を振り返って解決しろ」
ナメラスジ‥‥伏楼家の遺産相続会議の夜、次期当主の天月が死んだ。ナメラスジの呪いだという。巻き込まれた幸介と銀花は事件解決に乗り出すが‥‥。

天狗在‥‥幸介と銀花は遺跡発掘のバイトにやって来た。巨大な甕棺墓が発見され、身分が高そうな遺体なのに副葬品はなく、「天狗在」と記された木簡が一緒に埋葬されていた。かつて、壬申の乱で何が起きたのか‥‥。
天狗在‥‥幸介と銀花は遺跡発掘のバイトにやって来た。巨大な甕棺墓が発見され、身分が高そうな遺体なのに副葬品はなく、「天狗在」と記された木簡が一緒に埋葬されていた。かつて、壬申の乱で何が起きたのか‥‥。
ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~ 第5巻
幸介:「犯人は意図して、これらを仕組んでいるな」
死霊‥‥亡くなった俳優の富士勘平と別れた妻2人が、銀花のもとを訪れ、隠し財産を探してほしいという。勘平を殺した容疑者として、別れた妻・零が再婚した桜島茂雄の名が挙がったが、それはあり得なかった。なぜなら、茂雄は前日、150km離れた場所で勘平に殺されていたからだ‥‥銀花の「見通し」に死霊が現れた。はたして、死霊同士が殺し合いをしたのだろうか?

鵺‥‥新興宗教「青いリトトラ教」の教祖の息子、[群青吉也@ぐんじょう よしや@ruby@は銀花に父親の携帯電話を探してくれと依頼に来た。銀花の「見通し」で、彼女の背後に鵺が見えた。
鵺‥‥新興宗教「青いリトトラ教」の教祖の息子、[群青吉也@ぐんじょう よしや@ruby@は銀花に父親の携帯電話を探してくれと依頼に来た。銀花の「見通し」で、彼女の背後に鵺が見えた。
ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~ 第6巻
銀花「私は機械ちゃうわ!」
山の怪物‥‥北アルプスの百合ヶ峰の崖から落ちた登山者が、5kmも離れた林道で殺された。被害者は山の怪物に連れ去られたのか‥‥。事件の16日前、銀花はコ店主店主の兎宮春と知り合う。兎宮が持っていた著者不明の本『山の話』には「見通し」が出ていた。
イタチ‥‥米原家の一家4人が姿を消してしまった。一家の行方を探して、幸介に相談が持ち込まれた。近所の人が聞いた最後の言葉は「イタチの仕業や!」――幸介は銀花を呼び出す。

イタチ‥‥米原家の一家4人が姿を消してしまった。一家の行方を探して、幸介に相談が持ち込まれた。近所の人が聞いた最後の言葉は「イタチの仕業や!」――幸介は銀花を呼び出す。
ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~ 第7巻
銀花「いくら怖がりでも、そんなに『幽霊見た』言うてたら、僧侶やのうて、霊媒師言われるで」
鬼女‥‥鬼道を操ると言われる女性創業者、鬼路波間夜には子どもが亡かった。貧しい家から引き取った4人の養子に、契約書にサインすれば莫大な遺産を相続できると迫った。波間夜は死に際に、顧問弁護士を通じて「まだ起きてない事件の犯人を探してほしい」と銀花に依頼した。一方、事件解決の依頼が増えた幸介のために、祖父は七狸山万済寺に優秀な学生を手伝いに送った。波間夜が示した契約書の内容は恐ろしい内容だった。3人の養子が死に、相続権を放棄した凪だけが生き残った。はたして犯人は凪なのか‥‥。

のっぺら‥‥スマホアプリ「のっぺらの扉」を使うと異世界に行ける? 「のっぺらの扉」を使った高校生が次々に行方不明になっていた。一方、七狸山万済寺では、御本尊のお供え物を盗み食いした犯人が見つかった。幸介と銀花がエレベーターのトリックに挑む。
のっぺら‥‥スマホアプリ「のっぺらの扉」を使うと異世界に行ける? 「のっぺらの扉」を使った高校生が次々に行方不明になっていた。一方、七狸山万済寺では、御本尊のお供え物を盗み食いした犯人が見つかった。幸介と銀花がエレベーターのトリックに挑む。
ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~ 第8巻
船場千鶴、霧島羊太「あのなぁ! 組織にいれば圧力はかかる! それでも理想を持って頑張るのよ!」
影法師‥‥司法試験が近づいたある日、幸介は母親が亡くなったときのことを夢に見た。そんなとき、母が弁護した最後の事件の容疑者で、元衆議院議員秘書の桐生辰夫が幸介を訪ね、「お母さんからの最後の連絡」を見せた。受験のため東京へ向かう幸介を見送ろうと、駅に大勢の人たちが集まった。銀花は、幸介の横に影法師を見ていた。母は、元衆議院議員・槙野猪乃助の裏金事件を追っていた。当時、会計責任者だった楢岡拓巳は正義感に駆られ、データを週刊誌に持ち込もうとして死んだ。この事件が殺人であることを確認した幸介、銀花、兎宮だったが、影法師の正体は事件とは関係がなかった。幸介は、母が亡くなる前に離婚した父を訪ねた。幸介は、母が亡くなったときの交通事故を捜査していた刑事に、そのとき仕掛けられていたトリックを説明するが、8年前の事件であり、証拠も残っておらず、犯人を捕まえるのは不可能だと伝える。
狐狸‥‥巨大な湖のある小さな町は「花祭り」の時期を迎えていた。司法試験に合格した幸介は、京都の法律事務所に勤める弁護士になっていた。母の交通事故の犯人と、その動機を悟った幸介は、「あの事件を引き起こした影法師は、オレ自身なんだ‥‥」とつぶやく。

狐狸‥‥巨大な湖のある小さな町は「花祭り」の時期を迎えていた。司法試験に合格した幸介は、京都の法律事務所に勤める弁護士になっていた。母の交通事故の犯人と、その動機を悟った幸介は、「あの事件を引き起こした影法師は、オレ自身なんだ‥‥」とつぶやく。
レビュー
加藤元浩さんは生年、経歴ともに不詳だが、Wikipediaによると理系大学建築科卒業とのこと。さもありなん。まるで記号論のように単純化された作画に比して、話題になっている科学技術を論理的にストーリーとして組み込んでいく作風。心象風景を巧みに描き出すコマがあるかなと思ってAmazonを検索してみると、『プロの現場で使えるパース講座』を刊行していた。参りました。
銀花が語る怪談は元ネタがある。井原西鶴の作品や古典落語、『魏志倭人伝』といった歴史書からの引用が多い。いわゆる神話や宗教書に着想を得たオカルトやホラーとは一線を画し、あくまでトリックのネタとして扱っている。そして、「雷獣」の話のように、プラズマや球電、マグネトロンなどを使ったトリックの種明かしをしている。
「のっぺら」のエレベーターのトリックには感心した。アプリの仕組みも今風だし、「親はアダルトサイトには神経質になるけど、オカルトは気にしない」という設定にも無理がない。
「のっぺら」のエレベーターのトリックには感心した。アプリの仕組みも今風だし、「親はアダルトサイトには神経質になるけど、オカルトは気にしない」という設定にも無理がない。
幸介の決め台詞「跡見よ蘇婆訶」の蘇婆訶は、サンスクリット語の「svāhā」の音写でで、仏教の真言(マントラ)の最後につけられる。「成就あれ」「幸いあれ」といった、願いを締めくくる結びの言葉だ。つまり、「跡を見抜け、(そして)成就せよ」という意味の、失せ物捜しや、見えないものの痕跡を感知するための真言となる。

兎宮春は、銀花の「見通し」がAIのようなもので、いい学習をしている結果、人には見分けられないモザイク画から正確な映像をつかみ取っているのではないかとと推論する。それを聞いた銀花は「私は機械ちゃうわ!」と一蹴するが、この喩えは興味深い。
私は「見える」能力が皆無な人間なのだが、だからといって「見える」人の言い分は否定しない。ヒトは、すべてが見えているわけではない。視覚野が認識しないものは、見ていたとしても記憶に残らない。
オカルトが苦手で物事を合理的に考える幸介と、「見通し」ができる銀花のペアは、推理ものにおける最強タッグのように感じる。そして、幸介はなぜ見えないのか、その呪われた理由が最終巻で明かされる――。
兎宮春は、銀花の「見通し」がAIのようなもので、いい学習をしている結果、人には見分けられないモザイク画から正確な映像をつかみ取っているのではないかとと推論する。それを聞いた銀花は「私は機械ちゃうわ!」と一蹴するが、この喩えは興味深い。
私は「見える」能力が皆無な人間なのだが、だからといって「見える」人の言い分は否定しない。ヒトは、すべてが見えているわけではない。視覚野が認識しないものは、見ていたとしても記憶に残らない。
オカルトが苦手で物事を合理的に考える幸介と、「見通し」ができる銀花のペアは、推理ものにおける最強タッグのように感じる。そして、幸介はなぜ見えないのか、その呪われた理由が最終巻で明かされる――。
参考サイト
- ないない堂 ~タヌキ和尚の禍事帖~:月刊少年マガジン
- 加藤元浩@katomotohiro:Twitter
- 『Q.E.D. iff ―証明終了― 第1巻』(加藤元浩,2015年06月)
- 『Q.E.D. UNIV. ―証明終了― 第1巻』(加藤元浩,2025年08月)
(この項おわり)

