『Q.E.D. UNIV. ―証明終了―』

加藤元浩=著

シリーズ概要

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Q.E.D. UNIV. ―証明終了―』は、加藤元浩 (かとう もとひろ) さんが、「少年マガジンR」2015年1号から(その後「月マガ基地」2023年3月7日号~2025年2月11日)連載しているミステリー漫画で、『Q.E.D. iff ―証明終了―』の続編。米ボストンを舞台に、水原可奈 (みずはら かな) はハーバード大学で、燈馬想 (とうま そう) はマサチューセッツ工科大学で難事件に挑む。
MITを卒業し、なぜか日本の普通高校へ編入してきた天才少年の燈馬想 (とうま そう) が探偵役で、刑事を父にもつ同級生で脳天気な健康優良女子高生の水原可奈 (みずはら かな) が助手役となり、様々な事件や問題を解決していく。
題名は、エラリー・クイーンの口癖で数学用語の Q.E.D. に由来している。

目次

Q.E.D. UNIV. ―証明終了― 第1巻

表紙 Q.E.D. UNIV. ―証明終了― 第1巻
著者 加藤 元浩
出版社 講談社
サイズ コミック
発売日 2025年08月12日
価格 594円(税込)
ISBN 9784065403839
レーゼ教授「そこに記された言葉を読むだけではなく、その言葉が生まれた『ルーツ』を辿ることが大切なんだ
Beginning of the UNIV.‥‥ハーバード大学に入学した水原可奈 (みずはら かな) は、天文学のデルシア教授による「Beginning of the UNIV.=宇宙の始まり」の講義を受講する。インフレーション宇宙が理解できない可奈は、諸々あってマサチューセッツ工科大学博士課程に在籍する燈馬想 (とうま そう) の家に押しかけ、彼が開発したVRソフトでインフレーション理論を学んでいたが‥‥想の大家さんがトラブル解決を頼み込んできた。一方、ハーバード大学情報工学博士医のブライアン教授も、可奈にトラブル解決を頼み込む。2つのトラブルはつながっていた――60年前、ウェズリー家というアイルランド系の富豪、ヒッピー、怪物クランプスの呪い‥‥。

ルーツ‥‥ハーバード大学のコンピュータがランサムウェアに侵入された。そんなとき、水原可奈たちが学ぶ哲学科のレーゼ教授は、パスカルの言葉「人間は考える葦である」の意味を考えると上で、その言葉が生まれた「ルーツ」を辿ることが重要だと語る。毎月のご飯パーティの最中、マサチューセッツ工科大学のコンピュータもランサムウェアに侵入されてしまう。身代金の支払期限まで140時間‥‥。

Q.E.D. UNIV. ―証明終了― 第2巻

表紙 Q.E.D. UNIV. ―証明終了― 第2巻
著者 加藤 元浩
出版社 講談社
サイズ コミック
発売日 2025年12月17日
価格 594円(税込)
ISBN 9784065415986
燈馬想「こうなるなら、留学を勧めなければよかった‥‥
水原可奈「燈馬君はそういうこと言わない! 困ったときは助けて! それだけでいいの
水辺の馬‥‥政治信念、経済格差から人生の価値観に至るまで、分断し、混迷を極めるアメリカ。留学中の燈馬想水原可奈の生活にも影響が出始めていた。そんななか、新自由主義者が多いテック業界と係争を続けていたリベラル派の弁護士グラント・マーチンゲールが変死を遂げ、SNSで騒ぎになっていた。グラントの分かれた彼女で、半導体企業CEOのクララ・ウィザースが容疑者にあがったが、アリバイがあった。2人の共通の友人レア・サドラーは可奈に、「私は馬を水辺には連れて行ける。だけど、馬に水を飲ませることはできない」と語る。は「調査開始があと少し早ければ、なんとかなったのに」とつぶやく。はたして真犯人は‥‥。 

見えざる手‥‥夏休みに入ったが、水原可奈はビザの取消しを懸念してアメリカでの生活を続ける。法社会学では、18世紀にアダム・スミスが提唱した「見えざる手」について学ぶ。エリナ・マッシュ教授は、これまで市場が何度も崩壊を繰り返したことを挙げ、「公序良俗に反する欲求は停めなくてはならない、法によって」と語る。映画監督コーラル・ビーコンは、3年前の殺人の冤罪事件を映画にするという。タイトルは『見えざる手』。可奈は、事件の第一現場を訪れてみると、監視カメラのデータが、事件当日の19時から21時までの間だけ消されていた。まるで、「見えざる手」が証拠を消して回っているようだった。だが、燈馬想は「最も難しいのは、どうやって映画を完成させるかですね」と言う。

レビュー

二点透視図法
加藤元浩さんは生年、経歴ともに不詳だが、Wikipediaによると理系大学建築科卒業とのこと。さもありなん。まるで記号論のように単純化された作画に比して、話題になっている科学技術を論理的にストーリーとして組み込んでいく作風。心象風景を巧みに描き出すコマがあるかなと思ってAmazonを検索してみると、『プロの現場で使えるパース講座』を刊行していた。参りました。
Beginning of the UNIV.」は、本シリーズの始まりと、宇宙の始まりを掛けた洒落たタイトルだ。ヒッピー文化が華やかなりし1960年代。そのまっただ中の1964年に、宇宙背景輻射が発見される。同時に、世界初のスーパーコンピュータ「CDC 6600」、世界で最も有名なIBMのメインフレーム「System/360」、そしてダートマス大学からはプログラミング言語「BASIC」がリリースされる。いずれも、本シリーズの舞台アメリカでの出来事だ。そして最後に、水原可奈は天体望遠鏡で星を観測しながら、燈馬想に「天文学者が観測による事実を調べ、宇宙物理学者が新しい理論を研究し考察する。こうして宇宙の謎は解かれてゆくのです」と語りかける。

水原可奈が留学した米ハーバード大学は、1636年に創立されたアメリカ最古の大学で、卒業生にはアメリカ大統領が8人、ノーベル賞受賞者が160人、チューリング賞受賞者が14人もいる名門校である(2018年時点)。
1973年にビル・ゲイツがハーバード大学に入学している。彼は前述のダートマス大学の BASIC に関心を持っており、大学にあった PDP-10 上でアルテア8800 をエミュレートするプログラムを作成。これを使ってBASIC インタプリタを作成し、アルテア8800のメーカー MITS に売り込み、このときマイクロソフトが誕生した。
なお、ゲイツが入試面接をすっぽかしたマサチューセッツ工科大学(MIT)は、ハーバード大学から約3kmのところにある。彼はMITに入学したら「数学オタクに囲まれた数学オタクになるだろう」と述懐しているが、本シリーズでは、その数学オタクの燈馬想が留学している。

参考情報

参考サイト

(この項おわり)
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