5.1 Visual Studioの準備

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Visual Studioを起動した陽奈
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本項から第5章に入る。「3.1 ツールとは」以降で作ってきたツールは、いずれもWebブラウザーの中で動くものであった。ブラウザーは安全のために動作を強く制限しており、パソコン内のファイルを自由に読み書きする、常駐して指定時刻に動く、Windowsの起動と同時に立ち上がる、といったことができない。第5章では、CodexC#のコードを書かせ、Visual Studioでビルドとデバッグを行い、Windowsのデスクトップアプリを作っていく。
本項では、その土台となる Visual Studio 2026 Community を用意する。
開発には Windows 11が必要だが、Windows 10と11の両方で動くデスクトップアプリを作ることができる
無償で使えるエディションの利用条件、動作環境の確認、ワークロード「.NET デスクトップ開発」の追加、.NET 10 SDKの確認、そして最初のプロジェクトを作ってビルドと実行を行うところまでを進める。あわせて、Codexがコードを書き、Visual Studioがビルドとデバッグを担い、出たエラーを人間がCodexへ戻すという役割分担を身につける。第5章で作るものは、すべて無償版のCommunityエディションだけで作れる。これまで通りコードを1行も書く必要はないし、Visual Studioの複雑な画面を立ち上げる必要もない

目次

なぜデスクトップアプリを作るのか

第3章と第4章で作ったプログラムは、HTMLJavaScriptで書かれ、Webブラウザーの中で動いていた。この方式には、開発環境をインストールしなくてよい、ファイルをダブルクリックするだけで動く、という大きな利点がある。その反面、ブラウザーは利用者を守るために動作を強く制限している。悪意のあるWebページがパソコンの中身を勝手に読んだり書き換えたりできないようにするためである。
そのため、ブラウザーの中のプログラムには次のような限界がある。フォルダの中のファイルを一括で書き換えることができない。ウィンドウを閉じると動作が止まるので、常駐して指定時刻に処理を行うことができない。Windowsの起動と同時に自動で立ち上げることもできない。他のアプリを呼び出すこともできない。
デスクトップアプリは、これらの制限を受けない。パソコンにインストールして動くプログラムであり、利用者の許可のもとでファイルにも、通知領域(タスクトレイ)にも、他のアプリにも手が届く。両者の違いを下表にまとめる。
ブラウザーで動くツールとデスクトップアプリの違い
できることブラウザーで動くツール
(第3章・第4章)
デスクトップアプリ
(第5章)
フォルダ内のファイルを一括で読み書きするできない(1つずつ利用者が選ぶ必要がある)できる
画面を閉じたまま常駐するできないできる
Windowsの起動時に自動で立ち上がるできないできる
指定時刻に処理を行うブラウザーを開いている間だけできる
他のアプリや外部プログラムを呼び出すできないできる
配布のしかたファイルを渡す、Webに置くインストーラー(MSI)や実行ファイル(EXE)
開発環境の準備不要(ブラウザーとテキストエディターだけ)必要(Visual Studio)
ブラウザーの中のツールとデスクトップアプリの届く範囲の違い
ブラウザーの中のツールとデスクトップアプリの届く範囲の違い

Visual Studioとは

Visual Studioは、マイクロソフトが提供する統合開発環境(IDE:Integrated Development Environment)である。統合開発環境とは、プログラムを書くためのエディター、書いたものを実行できる形に変換するビルド機能、動作を1行ずつ追いかけるデバッガー、画面を絵として組み立てるデザイナーなどを、1つのアプリにまとめたものである。本講座で使う最新版は、2025年11月11日に正式リリースされたVisual Studio 2026である(「Visual Studio 2026」が正式版に)。
名前の似た製品にVisual Studio Code(VS Code)があるが、これは別の製品である。VS Codeは軽量なテキストエディターであり、C#を扱うには拡張機能を追加する必要があるうえ、本章で使うWPFの画面デザイナーが無い。第5章では、画面を目で見ながら作り、ブレークポイントを置いて動作を止めながら原因を調べたいので、Visual Studioを使う。

エディションと料金 ― 無償版で十分である

Visual Studio 2026には3つのエディション(製品の種類)がある。結論を先に書くと、本講座は、無償のCommunityエディションだけで最後まで進められる。第5章で扱う画面の作成、デバッグ、実行ファイル(EXE)の発行、インストーラーの作成は、すべてCommunityで行える。有償版との差は、大規模なチームで開発するための管理機能や、高度な解析機能であり、個人がツールを1本作るうえでは必要にならない。
Visual Studio 2026 のエディション
エディション料金主な対象本講座での必要性
Community無償個人開発者、学生、オープンソース開発これで十分
Professional有償(サブスクリプション)小規模チームでの共同開発不要
Enterprise有償(サブスクリプション)大規模組織、高度なデバッグ・解析・セキュリティ不要
ただし、Communityエディションには利用条件がある。マイクロソフトの公式サイトによると、個人開発者は、無料のアプリでも有料のアプリでも、自由に作ってよい。組織で使う場合は、学習環境、アカデミック研究、オープンソースプロジェクトへの貢献であれば人数の制限は無い。それ以外の用途では、エンタープライズ以外の組織で最大5ユーザーまでとなる。ここでいうエンタープライズ組織とは、パソコン250台以上、または年間売上100万ドル以上の組織を指し、この規模の組織は前述の3つの場面以外でCommunityを使うことはできない(Visual Studio Community)。
自宅のパソコンで学習のために使う分には、この条件で困ることはない。勤務先のパソコンで業務のために使う場合は、上の条件に当てはまるかどうかを確認しておくこと。

動作環境を確認する

インストールを始める前に、手元のパソコンが要件を満たしているかを確認する。とくに注意すべき点は、Visual Studio 2026 は Windows 11 が必要であり、Windows 10 では動作しないことである。Windows 10を使っている場合は、Windows 11へ更新するか、従来のVisual Studio 2022を使うことになる。主な要件を下表に示す。
Visual Studio 2026 の主なシステム要件
項目必要な条件
OSWindows 11(Home/Pro/Enterprise/Education など、ARM64版を含む)、Windows Server 2019/2022/2025
CPUARM64 または AMD64/x64。4コア以上を推奨
メモリ最小 4GB、推奨 16GB
ディスク空き容量導入する機能によって 2.5GB〜210GB。一般的な構成で 20GB〜50GB。SSDを推奨
画面解像度最小 1366×768、推奨 1920×1080 以上
その他.NET Framework 4.8、WebView2 ランタイム、インストール時の管理者権限
メモリは、最小の4GBでも起動はするが、実際に開発するのであれば16GBは欲しい。ディスクは、後から機能を追加すると増えていくため、50GB程度の空きを見込んでおくと安心である。詳細は公式ドキュメント(Visual Studio 2026 のシステム要件)を参照のこと。

インストールと「.NET デスクトップ開発」の追加

Visual Studio Installer のワークロード選択画面
Visual Studio Installer で「.NET デスクトップ開発」を選ぶ
インストールの手順は次のとおりである。

  1. マイクロソフトのダウンロードページ(Visual Studio のダウンロード)を開き、Community 2026のインストーラーをダウンロードする。
  2. ダウンロードした .exe ファイルを実行する。管理者権限を求められたら許可する。まずVisual Studio Installerという小さな管理プログラムが入り、続いて本体の選択画面が開く。
  3. ワークロードの一覧が表示される。ワークロードとは、目的別にまとめられた機能の詰め合わせのことである。ここで「.NET デスクトップ開発」にチェックを入れる。これがWindowsアプリを作るための一式であり、C#のコンパイラー、WPFの画面デザイナー、.NET 10 SDKがまとめて入る。
  4. 右下に必要な容量が表示される。空きを確認して「インストール」を押す。回線と機種によるが、30分前後かかる。
  5. 完了したらVisual Studioを起動する。初回はMicrosoftアカウントでのサインインを求められる。無償のCommunityを使い続けるためにも、サインインしておくこと。
  6. 配色テーマ(濃色・淡色)の選択を求められるので、好みで選ぶ。後から変更できる。
なお、ワークロードのチェックを入れ忘れても後から追加できる。スタートメニューからVisual Studio Installerを起動し、「変更」を押して「.NET デスクトップ開発」にチェックを入れ直せばよい。逆に、使わないワークロード(ゲーム開発、モバイル開発など)まで入れると、ディスクを何十GBも消費するので、必要なものだけを選ぶこと。

.NET 10 SDKが入っているかを確認する

.NET(ドットネット)とは、C#で書いたプログラムを動かすための土台である。SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)は、その土台に加えて、プログラムをビルドするための道具一式を含んだものである。本講座で使う.NET 10は、2025年11月にリリースされたLTS(Long Term Support:長期サポート)版であり、3年間、すなわち2028年11月までサポートされる(Microsoft、.NET 10をリリース)。長く使えるという意味で、初心者が学ぶ土台として適している。
「.NET デスクトップ開発」を選んでインストールすれば、.NET 10 SDKも一緒に入る。念のため、入っているかを確認しておく。スタートメニューからコマンド プロンプト(または PowerShell)を開き、次のコマンドを実行する。
.NET SDK の確認コマンド
コマンド意味期待される表示
dotnet --version既定で使われるSDKのバージョンを表示する10. で始まる番号
dotnet --list-sdksパソコンに入っているSDKを一覧表示する10.0.xxx を含む行がある
dotnet --infoSDK・ランタイム・OSの情報をまとめて表示する上記の内容と実行環境
「10.」で始まる番号が表示されれば準備できている。「'dotnet' は、内部コマンドまたは外部コマンド……として認識されていません」と出る場合は、SDKが入っていないか、インストール直後でコマンド プロンプトが古い設定のままである。まずコマンド プロンプトを閉じて開き直し、それでも出ないときは、公式サイト(.NET 10 のダウンロード)から SDK を入れる。

プロジェクトを作ってビルドと実行

新しいプロジェクトの作成画面でWPFアプリケーションを選ぶ
「WPF アプリケーション」を選んでプロジェクトを作る
環境が整ったか確かめるため、中身の無いアプリを1本作って動かしてみる。手順は次のとおりである。
  1. Visual Studioを起動し、「新しいプロジェクトの作成」を選ぶ。
  2. テンプレートの一覧から「WPF アプリケーション」を選ぶ。言語がC#になっているものを選ぶこと。同じ名前で Visual Basic 版や C++ 版があるので間違えやすい。
  3. プロジェクト名に「HelloWpf」と入力し、保存する場所を決めて「次へ」を押す。
  4. フレームワークの選択で「.NET 10.0」を選び、「作成」を押す。
  5. F5キーを押す。しばらく待って、灰色の空のウィンドウが表示されれば成功である。ウィンドウを閉じるとプログラムが終わる。
ここで行われたことを整理する。C#やXAMLで書かれた文字の集まりは、そのままではWindowsが理解できない。これをWindowsが実行できる形(EXEファイルなど)に変換する作業をビルドという。F5キーは「ビルドしてから実行する」という指示であり、変換に失敗すればエラーが一覧に表示され、実行までたどり着かない。出来上がったEXEファイルは、プロジェクトのフォルダの下の bin\Debug\net10.0-windows に置かれる。ソリューション エクスプローラー(既定では画面右側)に並んでいる主なファイルの役割を下表に示す。第5章では、この2種類のファイルを行き来しながら開発を進めることになる。
WPFアプリの主なファイル
ファイル種類役割
MainWindow.xamlXAML最初に開くウィンドウの見た目。ボタンや文字の配置を書く「画面の設計図」
MainWindow.xaml.csC#そのウィンドウの動き。ボタンが押されたときの処理などを書く
App.xamlXAMLアプリ全体の設定。最初に開くウィンドウの指定や、共通の色・書式
App.xaml.csC#アプリの起動時・終了時の処理
HelloWpf.csprojプロジェクト使用する.NETのバージョンや、外部部品の一覧。ビルドの設計図
中身の説明は「5.2 はじめてのWPFアプリ」で行う。本項では、空のウィンドウが表示されるところまで確認できればよい。ここまで動けば、Codexが書いたC#のコードを受け取って動かす準備ができたことになる。

Codexとの役割分担

Codexとの役割分担の循環図
依頼、コード、ビルド、エラーの循環
第4章までは、Codexが書いたHTMLファイルをブラウザーで開けば、それがそのまま動作確認になっていた。第5章では、Codexが書くのはC#とXAMLのコードであり、それをVisual Studioでビルドして初めて動く。ここに、これまでとは違う作業の流れが生まれる。
役割を整理すると下表のようになる。重要なのは、Visual Studioが出したエラーメッセージを、そのままCodexへ戻すという点である。人間が要約したり、記憶を頼りに言い換えたりすると、原因を特定するための情報が失われる。
実際の作業は、次の循環をくり返すことになる。
  1. Codexに「こういう画面で、こういう動きをするアプリを作りたい」と日本語で依頼する。
  2. Codexが出力したコードを、Visual Studioの対応するファイルに反映する。
  3. F5キーでビルドして実行する。
  4. エラーが出たら、エラー一覧の内容をすべて選んでコピーし、Codexの入力欄に貼り付ける。「このエラーが出た。直してほしい」と添えるだけでよい。
  5. 修正されたコードを反映し、再びビルドする。エラーが消えるまでくり返す。


エラーを伝えるときのコツは3つある。1つめは、エラー番号(CS0103、CS1061 のように「CS」で始まる番号)を省かないこと。C#のエラーは番号で原因が特定できる。2つめは、ファイル名と行番号を含めること。3つめは、自分が何をしたときに起きたかを1行添えることである。「ボタンを押したら止まった」「ビルドはできたがウィンドウが真っ白」といった情報が、原因の切り分けを早める。
Codex・Visual Studio・人間の役割分担
担当行うこと
人間作りたいものを日本語で説明する。動かした結果を見て、エラーや不具合をCodexへ伝える。出来上がったものが目的に合うかを判断する
CodexC#とXAMLのコードを書く。エラーメッセージを読んで原因を推測し、修正案を出す
Visual StudioコードをビルドしてEXEを作る。誤りをエラーとして指摘する。実行して動かす。ブレークポイントで途中の値を見せる

よくあるつまずきと対処

準備の段階でつまずきやすい点と、その対処を下表にまとめる。ここに挙げた症状は、いずれも設定や手順の問題であり、プログラムの誤りではない。

表に無い症状に出会ったときは、エラーメッセージをそのままCodexに貼り付けて尋ねるとよい。環境の設定に関する質問にも、Codexは答えてくれる。それでも解決しない場合は、エラー番号でWeb検索すると、同じ症状の記録が見つかることが多い。
次の「5.2 はじめてのWPFアプリ」では、この環境を使って、ボタンと文字の置かれたウィンドウを実際に作る。
準備の段階でよくあるつまずき
症状原因対処
インストーラーがWindowsのバージョンを理由に止まるWindows 10を使っているVisual Studio 2026はWindows 11が必要である。Windows 11へ更新するか、Visual Studio 2022を使う
テンプレートの一覧に「WPF アプリケーション」が出ないワークロード「.NET デスクトップ開発」が入っていないVisual Studio Installerを起動し、「変更」からチェックを入れる
フレームワークの選択肢に「.NET 10.0」が無い.NET 10 SDKが入っていない、またはVisual Studioが古いVisual Studioを最新に更新する。それでも出なければ .NET 10 SDK を個別に入れる
コマンド プロンプトで dotnet が見つからないインストール前に開いたウィンドウを使い続けているコマンド プロンプトを閉じて開き直す。直らなければパソコンを再起動する
インストールが途中で止まるディスクの空き不足、管理者権限の不足、通信の切断空き容量を50GB程度確保し、管理者として実行し、有線または安定した回線で再試行する
「試用期間が終了しました」と表示されるサインインしていないため30日の試用扱いになっているMicrosoftアカウントでサインインする。Communityは無償のまま使い続けられる
F5を押しても何も起きない、または別のプロジェクトが動くスタートアッププロジェクトの指定が違うソリューション エクスプローラーで目的のプロジェクトを右クリックし、「スタートアップ プロジェクトに設定」を選ぶ
画面デザイナーが真っ白で何も出ない初回はデザイナーの読み込みに時間がかかる。ビルドが通っていない場合もあるいったんビルドしてから開き直す。それでも直らなければVisual Studioを再起動する

参考サイト

(この項おわり)
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