オリンピック・イヤーは閏年(うるう年)か?

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オリンピック
4年に一度やって来るオリンピック・イヤーは閏年 (うるうどし) と覚えている方は多いのではないだろうか。
だが、これは間違っている。アテネ大会のあった2004年(平成16年)2月29日は日曜日、シドニー大会があった2000年(平成12年)2月29日は火曜日、アトランタ大会のあった1996年(平成8年)2月29日は木曜日‥‥
しかし、オリンピック第2回大会、パリ大会が開かれた1900年(明治33年)の2月28日水曜日の翌日は3月1日木曜日だった。

目次

閏年のルール

現在我々が使っているグレゴリオ暦においては、次のような閏年のルールがある。
  1. 4で割り切れる年は閏年である。
  2. ただし、100で割り切れる年は平年である。
  3. ただし、400で割り切れる年は閏年である。
近代オリンピックは、1886年(明治19年)の第1回大会以来、4で割り切れる年に行われているので、通常は閏年である。しかし、1900年(明治33年)のパリ大会の際は、2番目のルールが適用され平年となった。一方、2000年(平成12年)のシドニー大会は3番目のルールが適用され閏年になった。この先、2100年(令和82年)の大会の際には2番目のルールが適用され平年となる。

カレンダー表示は正しいか

イラスト
このルールを守っていないプログラムはかなり多い。

手元に自動カレンダー式の時計があったら取扱説明書に目を通してほしい。「2099年(令和81年)まで使えます」と書いてある時計は、閏年のルールが組み込まれていないとみてよい。
前述の1番目のルール――4で割り切れる年は閏年である――だけでも、1901年(明治34年)から2099年までのカレンダーを表示できる。そこで、論理回路を簡単にするために、2,3番目のルールを割愛しているわけである。まあ、これから2100年(令和82年)まで生きている人はほとんどいないから、実用上差し支えないだろう。

しかし、これがパソコン用の汎用アプリケーションとなると、少々困る。100年前の歴史データを扱ったり、100年先のシミュレーションを行うことは“ありがち”な作業だからである。

たとえばMicrosoft Excelであるが、マニュアルによると1899年(明治32年)以前の日付を扱えないことになっている。これはアプリケーションの“仕様”なのだが、実際の製品を使ってみると、1900年(明治33年)1月1日から同年2月28日までの曜日計算が間違っている。さらに、"1900/2/29"と入力すると日付型と解釈され、曜日計算もできてしまう。これは明らかなバグである。
これはWindows版に限ったバグで、Macintosh版では1903年(明治36年)以前の日付を扱えないように改められている。しかし、Windows版はExcel 2003になってもバグが残ったままである。ちなみに、"2100/2/29"はきちんとエラーとなる。これはマイクロソフトに限った問題ではない。他社のアプリケーションでも注意した方がよい。

また、プログラムを製造する場合は、利用する日付計算関係のライブラリや組み込み関数が、きちんとルールを守っているかどうか確認した方がよい。とくに Visual Basic 系は注意が必要だ。

クレジットカードが使えなくなる?

ICカード
三井住友カードによると、有効期限が2016年(平成28年)2月のICチップ付きクレジットカードは、2月29日にICカードによる取り引きができなくなるという。理由は明らかにされていないが、うるう年処理の不具合とみられる。

同様の問題は、2012年(平成24年)2月29日、東京三菱UFJ銀行で発生している。

公衆電話機が故障した理由

公衆電話
2008年(平成20年)1月31日、NTTの「DMC-8」という緑色のデジタル公衆電話が利用できなくなった。2月4日現在、使えなくなった公衆電話機は、NTT東日本管内が2,329台、NTT西日本管内が878台の、合計3,207台に及んだ。
NTT東日本のホームページでは、故障の原因について次のように説明している。

公衆電話機は、定期的に、あるいは料金回収時の公衆電話機の開閉時等に、動作の正常性を確認する自己診断機能を有しています。この機能は、次回診断日の自動設定も行います。
今回の故障は、公衆電話機の開閉等による次回診断日設定の際、「うるう年」の処理を行うソフトウェアに処理誤りが発生し、次回診断日の設定ができず機能停止したものです。


電話機の修理には現場で1台ずつ行い、2月7日夕方にすべて復旧した。

一方、ウィルコムが発売したばかりのケーイーエス製電話機「9+(ナインプラス)」で、自動日時補正の機能をオンにすると、日付補正機能が正しく作動しない可能性が判明した。ウィルコムは「うるう年を誤認した」とし、出荷した6,000台のソフトウエアの修正を無償で行う。

また、NTT東西のブロードバンド動画配信サービス「4th MEDIA」用セットトップボックス「Picture Mate 300」が正常に起動しなくなった。29日午前0時以降に主電源を立ち上げると、機器が正常に起動しないという。うるう年の処理に問題があり、誤作動を起こしているとみられる。
当面の対応として、使用可能なユーザーは主電源を切らないよう呼びかけている。
シャープのブルーレイディスクレコーダー・ハイビジョンレコーダーの一部機種において、うるう年に関連するバグが見つかった。2012年(平成24年)2月29日に予約確認を行うと、予約ができない事を意味する「×」が表示されるもの。

2012年(平成24年)、米Microsoftのクラウドサービス Windows Azure が、うるう年に関わるバグにより、すべてのデータセンタで管理ができなくなる状態に陥った。太平洋時間の2月29日午前2時57分にはほとんどの地域で復旧したという。
米Microsoftは障害の原因について説明し、返金対応すると発表した。

うるう年と皇紀

神武天皇
明治5年11月9日(西暦1872年12月9日)、旧暦を新暦に変更する「改暦ノ布告」が発行された。ところが、この布告では、4年に一度うるう年があることしか記されていなかった。
そこで、1898年(明治31年)に「閏年ニ関スル件」が発行され、閏年のルールで紹介した100年/400年のルールが加わった。ただし、この勅令は皇紀に基づいており、わざわざ皇紀から660を減算して西暦に変換することを求めている。この勅令は、現在も有効である。

年齢は誕生日の前日に加算

手をあげて横断歩道を渡る小学生のイラスト
1902年(明治35年)12月に施行された「年齢計算ニ関スル法律」により、年齢は誕生日の前日に加算されるとしている。この法律は施行から120年近くを経た現在も有効である。
たとえば2015年(平成27年)4月1日生まれの子どもは、2021年(令和3年)3月31日に満6歳になるので、翌月2021年(令和3年)4月に小学校入学となる。
一方、2015年(平成27年)4月2日生まれの子どもは、2015年(平成27年)4月1日に満6歳になるので、翌年2022年(令和4年)4月に小学校入学となり、4月1日生まれの子どもと学年が変わる。
なぜ、このような年齢の数え方をするのか――4月1日生まれの子どもが可哀想だからではない。うるう年に対応させるために、この法律ができた。2月29日生まれの子どもの誕生日は4年に一度しかやって来ない。4年に一度しか年齢が加算されないのはおかしな話である。そこで、前日の2月28日に年齢が加算できるようにしたのである。

うるう秒とシステム障害

うるう秒
うるう年とは別に、秒単位の時間修正を行うために、不定期にうるう秒が挿入されたり削除されたりする。
2012年(平成24年)7月1日のうるう秒挿入では、LinuxやJavaプラットフォームが1秒挿入に対応していなかったため、複数のサイトが影響を受けた。
ニュース収集議論サイト「Reddit」は、Javaで構築されたオープンソースのデータベース「Java/Cassandra」に問題が発生した。
Mozillaは、Javaで構築されたオープンソースプラットフォーム「Hadoop」に問題が発生した。Redditは、Javaで構築されたオープンソースデータベース「Apache Cassandra」に問題が発生した。
「foursquare」、「Yelp」、「LinkedIn」、「Gawker」、「StumbleUpon」も、うるう秒バグで障害が生じたという。

また、mixiでも7月1日午前9時から約4時間にわたりシステム障害が発生し、利用できなくなった。うるう秒が何らかの影響を与えたとみられているが、原因究明までには至っていない。

参考書籍

表紙 暦の雑学事典
著者 吉岡安之
出版社 日本実業出版社
サイズ 単行本
発売日 1999年12月
価格 1,430円(税込)
rakuten
ISBN 9784534030214
知っているとちょっと楽しい知識を満載!ミレニアムの意外な秘密がわかる。暦の歴史をたどり、ルーツを探る。いまに生きる旧暦の数々がわかる。さまざまな時計の歴史と科学を紹介。身近な暦の話題から歳時記まで暦の蘊蓄が盛りだくさん。
 
表紙 空と月と暦
著者 米山忠興
出版社 丸善出版
サイズ 単行本
発売日 2006年01月
価格 1,980円(税込)
rakuten
ISBN 9784621077009
日ごと、星はめぐり、月は満ち欠けをくり返します。天文学は、空を眺めてその変化を季節の移り変わりと結びつけることから始まり、私たちの生活と密接にかかわりあいながら発展してきました。本書では、天文学のむずかしい話は横に置き、その周辺の身近な話題を取り上げ、やさしくていねいに解説します。星座たちは日ごと月ごとどのように変化していくのか、月がどれほどわれわれの生活とかかわってきたか、暦はどのように成り立って、時や季節を表してきたのか、…などなど、わかりやすく楽しい話題が満載です。
 

参考サイト

(この項おわり)
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