目黒寄生虫館には長さ8.8メートルのサナダムシ

2007年9月30日 撮影
目黒寄生虫館
公益財団法人 目黒寄生虫館(東京都目黒区下目黒4-1-1)は、世界唯一の寄生虫専門の博物館だ。入場無料。月曜日は休館。

亀谷了 (かめがい さとる) (1909年~2002年(平成14年);医学博士・寄生虫学)の私設博物館で、1953年(昭和28年)に創設された。1956年(昭和31年)に博物館が落成し、翌年、財団法人となった。その後、1968年(昭和43年)に3階建てに増築され、1992年(平成4年)に現在の6階建てとなった。
目黒寄生虫館の大きな写真大きな写真
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目黒寄生虫館-1階
玄関を入ると、いきなり寄生虫の標本が――。
片隅に、亀谷一家のレリーフとスタンプ台が設置されている。
スタンプ台の脇には小さな募金箱がある。国や自治体からの補助はなく、運営は全て基本金の増益分と寄付金で賄っているという。じつに志の高い博物館である。
目黒寄生虫館-1階の大きな写真大きな写真
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目黒寄生虫館-2階
2階には、象皮病マラリア症など、かなり厳しい写真が多く展示されている。
こぱふぅには刺激が強いかと心配していたが、意外に本人はケロリとしていた。
2階の窓際にはショップがある。寄生虫をあしらったTシャツや寄生虫を封印したキーホルダーが販売されている。それにしても、サナダムシが描かれたランチバックというのは‥‥。
目黒寄生虫館-2階の大きな写真大きな写真
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目黒寄生虫館-2階
ヒトから採取した長さ8.8メートルにも及ぶサナダムシ(日本海裂頭条虫)が展示されていた。
標本の左脇に、同じ長さの布紐(真田紐か?)がぶら下がっている。この紐を伸ばすと、博物館の端から端へ達する。

サナダムシといえば、、“寄生虫博士”こと藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授が思い起こされる。
藤田先生は、自分自身の体の中にサナダムシを飼っているという。このサナダムシが余分な栄養を吸収するので、食べ過ぎても太らない体になる、サナダムシ・ダイエットを実践しているそうだ。また、サナダムシが出す物質が免疫反応をコントロールし、アレルギー体質の人は症状が軽くなるという。ただ、貧血などの副作用もあるので、飼育には十分注意する必要があるそうだ。
目黒寄生虫館-2階の大きな写真大きな写真
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サナダムシ
たしかに、サナダムシがヒトに致命的な疾患を引き起こすことは少ない。サナダムシにとってヒトは最終宿主であるから、うまく共生関係にあるということなのだろう。
ただ、サナダムシ・ダイエットは医学的に安全性が確立された方法ではないため、お勧めはできない。質実剛健を旨とする目黒寄生虫館に藤田先生の名前がないのも、その辺の事情によるものだろうか。

ちなみに、ヒトを宿主としないエキノコックスなどは要注意である。幼生が体内をうろつき回り、挙げ句の果てに、無性生殖で増殖していく。感染から数年から十数年かかって、肝機能障害などを引き起こすのである。
サナダムシの大きな写真大きな写真
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このサナダムシを「どのような手段で人の体から採取したのか」という質問が寄せられた。目黒寄生虫館に問い合わせたところ、亀谷了先生が駆虫したものという回答をいただいた。
亀谷先生は、虫を完全な形で駆虫するのを得意としていた。患者に駆虫薬を与え、その後、多量の水と一緒に下剤を飲ませる。患者が便意をも催しても我慢させ、虫が大腸に下りてくる頃を見計らって排便させると、便と一緒に虫が塊になって排出されるそうである。
患者は、虫の塊が入った便を大きな缶に入れて先生の診療所に持ってくる。この塊をバットに移して、ほぐすのが、寄生虫館スタッフのお仕事とのこと。虫の頭がとれないと、また片節をつくってしまう。小さな頭を確認するのが肝要だという。

今回の質疑応答では、数多くの貴重な標本の裏にスタッフの皆さんの地道な作業があることを知ることができた。ありがとうございます。
また、このあたりの経緯について、亀谷了先生の著書「寄生虫館物語」(ISBN/JAN:9784167660093/文藝春秋/2001年(平成13年)2月)に若干の記述があるとの紹介を受けた。

ビル・ゲイツ訪問

2022年(令和4年)8月に、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツさんが訪問したことで話題になった。

交通アクセス

目黒駅→目黒寄生虫館:892メートル
(車:1分,自転車:4分,徒歩:11分)

路線バスなら大鳥神社前で下車。

最寄りの目黒駅(東京都品川区上大崎2丁目)は、JR山手線および目黒線の駅である。地上はJRの、地下は東急・東京メトロ・都営地下鉄三田線の駅となっている。

目黒駅前から権之助坂 (ごんのすけざか) までは、中華料理店やラーメン屋が軒を連ねる。

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近隣の情報

(この項おわり)
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