「Pentium M」はPentium 4を駆逐する?

2003年3月リリース
Pentium M
Pentium MIntelがモバイルPC向けに開発したCPUだ。

Pentium III や Pentium 4とはまったく違う設計思想で開発され、コアクロックがPentium 4の半分程度でも同等の処理能力を有するという。
一方、消費電力はPentium Mが20W程度なのに対し、Pentium 4は80W~200Wである。Pentim Mでは、アイドル時に数Wまで消費電力を落とすこともできる。
Pentium M
長年PCを使っている立場から見ると、PCを普通に使っている分にはPentium 4の必要性を感じない。

2004年(平成16年)8月現在、1.3GHz動作の Pentium M を使っているが、メーラー、ブラウザ、オフィス製品を使っている限り、何のストレスも感じない。Eclipseもサクサク動くし、VideoStudioでビデオ編集もできる。
ボトルネックになっているのはハードディスクのアクセス速度である。CPUの処理速度ではない。
90nmプロセスの Pentium M(開発コード名:Dothan (ドーサン) )も登場したし、インテルのロードマップによればマルチコアが導入されるのも Pentium Mシリーズが先行している。

小さなCPUが100Wも消費するのは異常である。電気代のことを考えたら、家庭利用で Pentium 4 を選択するメリットはないのではないだろうか。(ゲームや仕事でバリバリに3Dする人は別として)

Pentium Mは、イスラエルのハイファにあるデザインセンターが開発を担当した。
このチームは MMX Pentium を担当し、その後、メモリコントローラ、グラフィックスをCPUに統合した廉価版の Timna (ティムナ)  を担当した。Timna はメモリに関わる問題から市販に至らなかったが、同じP6アーキテクチャの延長にあり、コストパフォーマンスを追求した Pentium Mで成功することになる。

主要スペック

項目 仕様
メーカー Intel
生産時期 2003年~2008年
開発コード名 Banias,Dothan
トランジスタ数 7000万~1億4千万
内部バス/外部バス 32ビット/32ビット
CPUクロック 900MHz~2.26GHz
プロセスルール 130~90nm
マイクロアーキテクチャ P6
ソケット Socket 479
TDP 27~5W

Pentium 4シリーズの終焉

Pentium4 571
Pentium4 571
2002年(平成14年)1月、第二世代のPentiumu 4(開発コード名 Northwood (ノースウッド) )がリリースされた。最大クロック数は3.40GHz、TDPは89W、プロセスルールは130nmだった。

2004年(平成16年)1月、インテルは第三世代のPentium 4として Prescott (プレスコット) をリリースした。プロセスルールを90nmにして、動作クロック4GHz超えを目指してキャッシュアクセスのレイテンシとパイプライン段数を増加した。
ところが、Prescottの漏れ電流はインテルの想定を上回ってしまった。Northwood世代の漏れ電流は全体の10%だったが、Prescottでは60%近くに達したという。その結果、消費電力がSocket 478で供給できる上限を超えてしまい、急遽、ソケットをLGA775に切り替え、信号生成回路を改善した。それでも、同クロックでは Northwood 世代の性能を下回ってしまった。
結局、Prescottの最大クロック数は3.80GHzにとどまり、TDPは115Wと、ついに100Wを超えてしまった。

漏れ電流問題は、次の世代である Tejas (テハス)  でも解決されず、開発中止となった。
2006年(平成18年)1月にリリースされた CedarMill (シダーミル)  はプロセスルールを65nmに微細化し、最大クロックも3.60GHzに抑えた。
これがPentium 4の最後の製品となり、インテルCPUは Core2 シリーズへと移行していく。

Pentium M から Core へ

2006年(平成18年)1月に発表された後継CPU(開発コード名:Yonah (ヨナ) )は65nmプロセスで製造され、モバイル向けとして初めてデュアルコアが採用された。

このモデルからブランド名が Intel Core と変更され、ついにMacintoshにもIntel CPUが採用された。こうして、再び他の追随を許さないIntelの独走体勢を築いてゆく。
そして、この記事のタイトル通り、Pentium 4は駆逐されてしまった。

CPUの歴史

発表年 メーカー CPU名 ビット数 最大クロック
1971年インテル40044bit750KHz
1974年インテル80808bit3.125MHz
1975年モステクノロジーMOS 65028bit3MHz
1976年ザイログZ808bit20MHz
1978年インテル808616bit10MHz
1979年モトローラMC68098bit2MHz
1979年ザイログZ800016bit10MHz
1980年モトローラMC6800016bit20MHz
1984年インテル8028616bit12MHz
1985年インテル8038632bit40MHz
1985年サン・マイクロシステムズSPARC32bit150MHz
1986年MIPSR200032bit15MHz
1987年ザイログZ28016bit12MHz
1987年モトローラMC6803032bit50MHz
1989年インテル8048632bit100MHz
1991年MIPSR400064bit200MHz
1990年モトローラMC6804032bit40MHz
1993年インテルPentium32bit300MHz
1994年IBM, モトローラPowerPC 60332bit300MHz
1995年サイリックスCyrix Cx5x8632bit133MHz
1995年AMDAm5x8632bit160MHz
1995年サン・マイクロシステムズUltraSPARC64bit200MHz
1999年IBM, モトローラPowerPC G432bit1.67GHz
1999年AMDAthlon32bit2.33GHz
2000年インテルPentium 432bit3.8GHz
2001年インテルItanium64bit800MHz
2003年AMDOpteron64bit3.5GHz
2003年インテルPentium M32bit2.26GHz
2006年SCE,ソニー,IBM,東芝Cell64bit3.2GHz
2006年インテルCore Duo32bit2.33GHz
2006年インテルCore 2 Duo64bit3.33GHz
2008年インテルCore i9/i7/i5/i364bit5.8GHz
2017年AMDRyzen64bit5.7GHz
2020年AppleM1/M264bit3.49GHz

参考サイト

(この項おわり)
header