海堂尊の医療エンターテイメント

産科・小児科物語
表紙 ジーン・ワルツ
著者 海堂尊
出版社 新潮社
サイズ 単行本
発売日 2008年03月
価格 1,620円(税込)
rakuten
ISBN 9784103065715
桜宮市・東城大学医学部を卒業、東京・帝華大学に入局した32歳の美貌の産婦人科医、曾根崎理恵ー人呼んで冷徹な魔女(クール・ウィッチ)。顕微鏡下人工授精のエキスパートである彼女のもとに、事情を抱えた五人の妊婦がおとずれる。一方、先輩の清川医師は理恵が代理母出産に手を染めたとの噂を聞きつけ、真相を追うが…。
 
医者はスーパーマンじゃないわ。できないことはできないと言うこと(201 ページ)

2005 年(平成 17 年)、『チーム・バチスタの栄光』で小説デビューした現役の医師、海堂尊が描く最先端医療ミステリー。生殖医療・代理母問題をめぐり、どこまでが医療で、どこまでが人間に許される行為なのか、社会に問いかける。

今回の主人公は、東京・帝華大学の美貌の産婦人科医、曾根崎理恵――顕微鏡下人工授精のエキスパートで、人呼んで「クール・ウィッチ」。事情を抱えた訪れた 5 人の妊婦をめぐって物語が展開する。一方、先輩の清川医師は理恵が代理母出産に手を染めたとの噂を聞きつけ、真相を追う。

本書の未来に当たる『医学のたまご』、本書を理恵の母みどりの視点から描いた『マドンナ・ヴェルデ』も併せて読むと一層面白みが増すだろう。
(2009 年 4 月 9 日 読了)
表紙 マドンナ・ヴェルデ
著者 海堂尊
出版社 新潮社
サイズ 単行本
発売日 2010年03月
価格 1,620円(税込)
rakuten
ISBN 9784103065722
「ママは余計なこと考えないで、無事に赤ちゃんを産んでくれればいいの」平凡な主婦みどりは、一人娘で産科医の曾根崎理恵から驚くべき話を告げられる。子宮を失う理恵のため、代理母として子どもを宿してほしいというのだ。五十歳代後半、三十三年ぶりの妊娠。お腹にいるのは、実の孫。奇妙な状況を受け入れたみどりの胸に、やがて疑念が芽生えはじめる。「今の社会のルールでは代理母が本当の母親で、それはこのあたし」。
 
Dear KAORU, Welcome to Our Earth.

2005 年(平成 17 年)、『チーム・バチスタの栄光』で小説デビューした現役の医師、海堂尊が再び生殖医療・代理母問題を取り上げる。

桜宮市に暮らす平凡な主婦、山咲みどりのもとをある日一人娘で産婦人科医の曾根崎理恵がおとずれる。子宮を失った理恵のため、代理母として子どもを産んでほしいというのだ。一人娘のために代理母となることを決意したみどりであったが、お腹の中の赤ちゃんは孫ではなく、法律上は自分の子どもになるという。しかも、理恵が用意した受精卵には、ある仕掛けが‥‥。

本書の未来に当たる『医学のたまご』、、本書を理恵の視点から描いた『ジーン・ワルツ』も併せて読むと一層面白みが増すだろう。
(2010 年 3 月 10 日 読了)
表紙 モルフェウスの領域
著者 海堂尊
出版社 角川書店
サイズ 単行本
発売日 2010年12月
価格 1,620円(税込)
rakuten
ISBN 9784048741538
日比野涼子は桜宮市にある未来医学探究センターで働いている。東城大学医学部から委託された資料整理の傍ら、世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りについた少年・佐々木アツシの生命維持を担当していた。アツシは網膜芽腫が再発し両眼失明の危機にあったが、特効薬の認可を待つために五年間の“凍眠”を選んだのだ。だが少年が目覚める際に重大な問題が立ちはだかることに気づいた涼子は、彼を守るための戦いを開始するー“バチスタ”シリーズに連なる最先端医療ミステリー。
 
僕の幸福は、自分が作り上げたものが美しく光り輝くこと。(100 ページ)

桜宮市にある未来医学探究センターで日比野涼子は、東城大学医学部から委託された資料整理のかたわら、世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りについた少年・佐々木アツシの生命維持を担当していた。アツシは網膜芽腫が再発し両眼失明の危機にあったが、特効薬の認可を待つために 5 年間の“凍眠”を選んだのだった。
映画化、ドラマ化もされた『チーム・バチスタの栄光』でデビューした現役医師・海堂尊が、時間軸的には『ナイチンゲールの沈黙』と『医学のたまご』の間の物語として上梓した医療エンターテイメントだ。

ヒロインの日比野涼子は、父親とともに海外を渡り歩いた経験から複数の外国語を操り、医学の知識も豊富だ。いわゆる帰国子女という才女を自認する彼女だが、ゲーム理論の第一人者・曾根崎伸一郎教授とのメールのやりとりや、「僕の幸福は、自分が作り上げたものが美しく光り輝くこと。その輝きの下で、ひょっとしたら、人々は幸せになれる、かもしれない。でも、そんなことは僕の知ったこっちゃない。だって僕は、自分の創造物を人々の幸せのために作ったわけじゃないんですから」(100 ページ)と言い放つ技術者・西野昌孝に翻弄され、自身の知識ではなく“心”を見つめるようになる。

毎度のことだが、医療エンターテイメントといいつつ、医療問題を織り込むのは著者の真骨頂だ。
法律が医療技術に追いつかず「ドラッグ・ラグ」が発生しているという現実を乗り越えるため、本書では「コールド・スリープ」という架空の技術を登場させる。そして、コールド・スリープを有効ならしむるための時限立法「人体特殊凍眠法」(これも架空の法律)がたてられるが、その法律の抜け穴がミステリーの核となる。
ミステリーの組み立てはややこしいが、著者は「彼らの最大の目的は市民の健康や安寧などではなく、彼らが主体で運用している巨大ファンド、国家予算の健全な運用にすぎなかったからだ」(48 ページ)と、官僚をチクリと刺すことを忘れてはいない。

本書ではマッドな技術者・西野昌孝が印象的であった。
最初は黒ずくめのスーツで登場。「死神」扱いされているので、てっきり医療を理解しないエンジニアという扱いかと思いきや、いつの間にか最も人間味のあるキャラクターに返信。最後にはアツシ少年に向かって、「自分がどこから来てどこへ行こうとしているのかわからない人間は、いずれ影を亡くしてしまう。そうしたらソイツはゾンビと同じさ」(235 ページ)と指摘する。ゾンビはあんたじゃなかったのかよ、と突っ込みたくなる。
さて、涼子の回想シーンに登場するノルガ共和国の名もなき医務官は、『ブラックペアン 1988』に登場する、あの外科医ではないかと推測しているのだが‥‥彼の名前を明らかにするために、再び涼子が活躍することを期待したい。
(2011 年 6 月 24 日 読了)
表紙 アクアマリンの神殿
著者 海堂尊
出版社 KADOKAWA
サイズ 単行本
発売日 2014年07月01日
価格 1,728円(税込)
rakuten
ISBN 9784041013427
桜宮市にある未来医学探究センター。そこでたったひとりで暮らしている佐々木アツシは、ある深刻な理由のため世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りにつき、五年の時を超えて目覚めた少年だ。“凍眠”中の睡眠学習により高度な学力を身につけていたが、中途編入した桜宮学園中等部では平凡な少年に見えるよう“擬態”する日々を送っていた。彼には、深夜に行う大切な業務がある。それは、センターで眠る美しい女性を見守ること。学園生活に馴染んでゆく一方で、少年は、ある重大な決断を迫られ苦悩することとなる。アツシが彼女のためにした「選択」とは?先端医療の歪みに挑む少年の成長を瑞々しく描いた、海堂尊の新境地長編!
 
モルフェウスの領域』の続編だが、もちろん本作を初めて読んでも楽しめる学園 SF風テイストの医療ミステリーだ。

ナイチンゲールの沈黙』に登場し、『モルフェウスの領域』では世界初のコールドスリープにあった佐々木アツシが目覚めた。コールドスリープを開発したヒプノスの技術者、西野昌孝を後見人とし、アツシは睡眠学習により優れた学力を身につけていたが、平凡な少年に見えるように努力する中学校生活が始まった。
クラスの問題児、麻生夏美がクラス委員長になると、アツシの日常生活が徐々に狂い始める。麻生の父は、ヒプノスとライバル関係にあるアルケミストのシンクタンクの部長だ。
高校に進学して間もなく、アツシは北原野麦から告白される。睡眠学習の成果では考えられない北原野麦のキャラクターに途方に暮れるアツシ。ボクシング部に入部し、試合に出たアツシは、いままで隠していた出自が知られてしまう。さらに、文化祭の出し物を巡って、アツシが住んでいる未来医学探究センターで合宿が強行される。
オンディーヌこと、『モルフェウスの領域』でアツシを見守っていた日比野涼子と西野の関係は? ゲーム理論の権威者、曾根崎伸一郎教授が提唱した「凍眠八則」の裏に隠された謎は? 果たしてオンディーヌは目覚めるのか?
そして、アツシの物語は『医学のたまご』へと続く。

終盤のアツシと西野の対決は、アイザック・アシモフのロボット SF シリーズを彷彿とさせる。「凍眠八則」は、「ロボット工学三原則」のようにミステリーの縦糸を構成する。そして、東城大学の教授となった田口先生をはじめ、一癖も二癖もある登場人物たちが横糸を紡ぐ。
舞台が学園であるうえに、ラノベのように台詞中心で進む本書の登場人物たちは、全員が中2病のように感じさせるが、じつは清く正しい中2病である若者たちこそ医者になるべきという海堂医師のメッセージではないかと考えさせられた。その意味でも、本書は『医学のたまご』の正統な序章である。
(2014 年 7 月 24 日 読了)
表紙 医学のたまご
著者 海堂尊
出版社 理論社
サイズ 単行本
発売日 2008年01月
価格 1,404円(税込)
rakuten
ISBN 9784652086209
僕は曾根崎薫、14歳。歴史はオタクの域に達してるけど、英語は苦手。愛読書はコミック『ドンドコ』。ちょっと要領のいい、ごくフツーの中学生だ。そんな僕が、ひょんなことから「日本一の天才少年」となり、東城大学の医学部で医学の研究をすることに。でも、中学校にも通わなくっちゃいけないなんて、そりゃないよ…。医学生としての生活は、冷や汗と緊張の連続だ。なのに、しょっぱなからなにやらすごい発見をしてしまった(らしい)。教授は大興奮。研究室は大騒ぎ。しかし、それがすべての始まりだった…。ひょうひょうとした中学生医学生の奮闘ぶりを描く、コミカルで爽やかな医学ミステリー。
 
科学を前にしたら大人も子どももない。人の命に関わる医学では特にそうだ。(243 ページ)

チーム・バチスタの栄光』で一躍有名になった現役医師、海堂尊によるジュブナイル――医学を志す中高生に一読をお勧めする。

主人公は、ゲーム理論の世界的な研究者である父を持つ中学生。歴史は得意だが、英語も数学もまるでダメ。ところが、「潜在能力テスト」で全国一位の成績を叩き出し、中学に通いながら東城大学医学部で研究生活を送る羽目になる。

バチスタ・シリーズでお馴染みの東城大学の食えない面々がゲスト出演し、大人の世界の汚さが描かれる一方、そんな中でも患者を救おうとするプロとしての厳しさを盛り込んでいるあたり、海堂氏ならではの巧さだ。

また、時代が近未来に設定されており、本書でターゲットとなっているある疾患に対する作者の考え方を窺い知ることができる。
(2009 年 1 月 10 日 読了)
この項つづく
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