睡眠と健康 2017年版

2017年12月26日 作成

寝不足の子どもが続出

睡眠不足
睡眠障害に伴う体調不良で、授業中の居眠りなど日常生活に支障が生じている子供が増えている。怠け者と誤解され、授業にもついていけず、不登校になるケースも。

教育現場では、昼寝の時間を設けるなど、生活習慣を改善する「睡眠教育」の取り組みが進められている。
1日あたりの睡眠時間の国際比較
OECDが発表した報告書「Balancing paid work, unpaid work and leisure」によると、2014年(平成26年)の報告では、15~64歳の国民平均睡眠時間は463分で、29カ国中、韓国に次いで2番目に短い。同様調査が2009年(平成21年)に行われており、5年間に睡眠時間が7分短くなっている。

兵庫県立リハビリテーション中央病院の子どもの睡眠と発達医療センターは、子どもの睡眠に関する専門的な入院治療を行う国内唯一の施設で、2016年(平成28年)には全国からのべ約4300人の子どもが受診した。
子どもたちは、「夜に寝付けず、いつも寝不足感がある」「腹痛やめまい、立ちくらみが治まらない」などの「睡眠障害」の症状を訴える。
センターでは、睡眠を促すメラトニンを使った薬物治療、朝になると寝ていてもタイマーで光を浴びる高照度光療法、規則正しい食事や運動で正常な睡眠リズムを身につける治療などが行われる。しかし完治まで時間がかかり、3~4年要するケースもあるという。

個人差はあるものの、小学生は10時間、中学生は9時間が適切な睡眠時間とされている。平成28年社会生活基本調査(総務省)によると、15~24歳の睡眠時間は8時間5分と、だいぶ少ない。
センターによると、脳は寝ている間に育つため、睡眠不足だと集中力が低下し、記憶力も落ちるイライラした状態になりやすいという。
診察から、本人や親が自覚のないまま、睡眠不足が蓄積してしている「睡眠負債」の状態の子どもが多いという。
スマホやネット利用が深夜に及ぶことも背景にある。「睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査」(文部科学省)によると、スマホの利用時間が長いほど起床時刻が遅くなっている傾向がわかる。「ネット依存」も問題だ。

睡眠不足の結果、生活のサイクルが昼夜逆転してしまう子どもも少なくない。学校で寝てしまうと学業に追いつけなくなり、非行、不登校にもつながりかねない。「だらしがない」と、親から発達障害を疑われて小児科に連れていかれたが、異常が無かったというケースもある。

睡眠教育の取り組み

昼寝
教育現場では子供たちの睡眠を見直し、生活習慣を改善させる「睡眠教育」(眠育)の取り組みが広がっている。

市立加古川中学校(兵庫県加古川市)では、中間試験や期末試験前の1週間、昼食後に全校生徒が机に伏して15分間の仮眠をとる加古川シエスタを行っている。
賛否両論があるようだが、1時間を超える昼寝は逆効果になるという報告もあり、10~20分が最適のようだ。
睡眠不足からくる集中力、パフォーマンスの低下、さらには交通事故や産業事故などにも関係しており、経済的損失の推計は年間約3兆円を超えるという数字もある。
親が夜型の生活をしていると、それが赤ん坊に影響を与え、産まれたときから睡眠負債がたまっていくという悪循環に陥る。
大人もライフスタイルを見直してはどうだろうか。

参考サイト

(この項おわり)
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