超新星データの見直しで宇宙の加速膨張の証拠が消えた

2026年09月22日 作成

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超新星データの見直しで加速膨張の証拠が消えた

超新星の観測データをもとに宇宙の膨張を調べる天文学者(イメージ)
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2026年(令和8年)6月、インドのタタ基礎研究所とオックスフォード大学などの研究チームが、Ia型超新星という星の観測データを見直した研究結果を発表しました。1998年(平成10年)に見つかった「宇宙の加速膨張」という現象について、全天で一様に加速しているという証拠は見つからなかったと報告しています。
再び宇宙項(宇宙定数)は否定されたのでしょうか。
まとめたのは、サビル・サルカル名誉教授(オックスフォード大学)、アニメシュ・サー氏、モハメド・ラメーズ氏(タタ基礎研究所)です。成果は2026年(令和8年)6月11日、天文学専門誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』にオンライン公開されました。

宇宙の加速膨張は、1998年(平成10年)に別々の研究チームがIa型超新星の観測から発見し、2011年(平成23年)のノーベル物理学賞につながりました。この加速の原因とされているのが、正体不明のダークエネルギーです。今回の研究は、その前提を問い直す内容として注目を集めています。

Ia型超新星から見つかった「宇宙の加速膨張」

Ia型超新星は、爆発するときの明るさがほぼ一定という性質から、天体までの距離を測る「物差し」として使われます。見かけの明るさと本来の明るさの差から距離を求め、赤方偏移(光の波長が伸びる度合い)から後退速度を求めることで、宇宙がどれだけの速さで膨張しているかを調べられます。

1998年(平成10年)、2つの研究チームがこの方法を使い、遠くの超新星ほど予想より暗く見えることを発見しました。これは、宇宙の膨張が近年になって加速していることを示す証拠と解釈され、宇宙論の標準的な考え方になりました。

超新星のもとになった星の年齢で明るさが変わる

若い星と年老いた星から生まれるIa型超新星の明るさのわずかな違いを表す概念図
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近年、Ia型超新星のもとになった星の年齢によって、爆発時の明るさが少しずつ違うとする研究が増えています。年老いた星から生まれた超新星は、距離の物差しとして使うときの明るさの基準からわずかにずれる可能性があるのです。研究チームは、2025年(令和7年)にJ.ソン氏らが提案したこの補正方法を、1701個の超新星をまとめたPantheon+というデータのうち、1670個に適用しました。
補正を加えると、全天で平均した膨張の加速を示す値は、加速側ではなく減速側に近づきました。一方、特定の方向に偏った成分(局所的な動きを反映する部分)は、補正の前後でほとんど変わりませんでした。

方向によって違う「加速」―等方的な証拠はなし

つまり研究チームの分析では、全天で一様な加速膨張を示す証拠は見当たらないという結果になりました。むしろ見かけの加速は、太陽系を含む銀河系が、周囲の物質の重力に引かれて動いている「特異運動」による効果として説明できる可能性があるとしています。

これは、一般相対性理論が予測する効果の範囲内で、私たちの銀河系周辺の物質分布が特定の方向にかたよっていることの表れだという考え方です。宇宙全体が加速しているのではなく、私たちのいる場所の周りの動きを、加速膨張と見誤っていた可能性があるという主張です。

ダークエネルギーの存在を揺るがす可能性

この結果が正しければ、影響は大きなものになります。ダークエネルギーは、宇宙のどこでも同じように働くと考えられている量です。もし加速に見える効果が方向によって違う(異方的な)ものだとすれば、ダークエネルギーではうまく説明できません。

研究チームは、宇宙マイクロ波背景放射(宇宙誕生から間もない頃の光の名残)の温度分布が示す、私たちの銀河の運動方向と、超新星データに残る偏りの方向が一致することも指摘しています。

結論はまだ出ていない

ただし、この研究だけで宇宙論の常識が覆ったわけではありません。同じ超新星データを扱った別の研究チームは、従来通り宇宙は等方的に加速膨張しているとする分析結果を発表しており、専門家の間でも意見が分かれています。

決着をつけるための手がかりとして期待されているのが、米国のNSFヴェラ・C・ルービン天文台です。今後の観測で数十万個規模のIa型超新星データが得られる見込みで、どちらの主張がより正しいのかを確かめる材料になるとみられています。

参考サイト

(この項おわり)
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