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重力のからくり | ||
著者 | 山田 克哉 | ||
出版社 | 講談社 | ||
サイズ | 新書 |
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発売日 | 2023年08月23日 | ||
価格 | 1,210円(税込) | ||
ISBN | 9784065184622 |
一般相対性理論における「なめらかに連続的に変化している」重力場は量子力学の対象にはなりえず、一方で、「量子化されている」ものは微分計算を含むアインシュタイン方程式の対象にはなりえないのです。(247ページ)
概要

本書は、最新の宇宙論の知識を整理するのに役だった。これまでループ量子重力理論や超弦理論の上辺を見知っていたつもりだが、本書を読んで、超大統一理論へ果たす役割が理解できた。
同じブルーバックスで『光と電気のからくり』『量子力学のからくり』『真空のからくり』『時空のからくり』『E=mc2のからくり』を著した山田克哉さんの著書。アメリカで教鞭をふるい、アメリカ物理学会会員でもある。
同じブルーバックスで『光と電気のからくり』『量子力学のからくり』『真空のからくり』『時空のからくり』『E=mc2のからくり』を著した山田克哉さんの著書。アメリカで教鞭をふるい、アメリカ物理学会会員でもある。

距離 | m | メートル |
質量 | kg | キログラム |
時間 | s | セカンド(秒) |
速度 | m/s | メートル/秒 |
加速度 | m/s2 | メートル/秒2 |

ニュートンの万有引力の法則 \( F = G \frac{\large m \small _A \ \ \large m \small _B}{\large r \small ^2} \)

作用反作用の法則(ニュートンの第3法則)よれば、地上をはうアリに働く地球の重力(作用力)と、アリが地球を引っ張る力(反作用力)は同じである。しかし、地球の慣性質量があまりにも大きいために地球は加速されない。
万有引力の法則から、アインシュタインの一般相対性理論が導き出された。逆に言えば、重力の弱い空間では、一般相対性理論は万有引力の法則に近似できる。
万有引力の法則から、アインシュタインの一般相対性理論が導き出された。逆に言えば、重力の弱い空間では、一般相対性理論は万有引力の法則に近似できる。

第3章では質量保存の法則を取り上げる。
アインシュタインは質量とエネルギーが等価であることを発見し、有名な公式 \( E = mc^2 \) を導き出した。こうして質量保存の法則はエネルギー保存の法則に発展するが、量子力学が登場し、エネルギーと時間の不確定性原理によって真空から飛び出てきた粒子は、ディラック定数の半分という、きわめて短時間のうちに真空へと戻り、消滅することがわかってきた。
だが、その短時間の中においても電荷保存の法則は破ることができない。そして、陽子1個分の素電荷 \( e \) より小さな電荷は、この宇宙には存在しない。
アインシュタインは質量とエネルギーが等価であることを発見し、有名な公式 \( E = mc^2 \) を導き出した。こうして質量保存の法則はエネルギー保存の法則に発展するが、量子力学が登場し、エネルギーと時間の不確定性原理によって真空から飛び出てきた粒子は、ディラック定数の半分という、きわめて短時間のうちに真空へと戻り、消滅することがわかってきた。
だが、その短時間の中においても電荷保存の法則は破ることができない。そして、陽子1個分の素電荷 \( e \) より小さな電荷は、この宇宙には存在しない。

電荷保存の法則がゆえに、宇宙全体での全電荷はゼロとなる。つまり、仮想粒子はつねに自身の反粒子とペアを組み、対生成と対消滅を繰り返す(117ページ)。これに対し重力には引力しかなく、あまねく宇宙の隅々まで重力が影響を与えている。

第4章では「見えない力として、ダークエネルギーを取り上げる。
プランクの放射の法則によれば、電磁波のもつエネルギーの量は連続的には変化できず、不連続的にしか変化しない。ある周波数をもつ電磁波のエネルギーには最小値があり、その最小値が \( hf \) である(134ページ)。
プランクの放射の法則によれば、電磁波のもつエネルギーの量は連続的には変化できず、不連続的にしか変化しない。ある周波数をもつ電磁波のエネルギーには最小値があり、その最小値が \( hf \) である(134ページ)。
プランクの放射の法則 \( \large F(f) = \frac{2hf^3}{c^2} \frac{\large 1}{ \left[ \LARGE e \small^{\frac{hf}{kT}} \right]} - \large 1 \)

連続的に変化する周波数をもつ電磁波に量子力学を適用すると、エネルギーの“飛び飛び性(離散性)”が電磁波の「粒子性」となって現れ、粒子となった電磁波は「光子」とよばれる(138ページ)。
また、プランクの放射の法則は、電磁波を全く放出しない絶対ゼロ度の黒体の中に、なお \( \frac{hf}{2} \)で表される量の電磁波のエネルギーがとどまり続けるという。これこそが真空のエネルギー]である。この真空のエネルギーは、万有斥力をもたらすダークエネルギーの正体と考えられている。
また、プランクの放射の法則は、電磁波を全く放出しない絶対ゼロ度の黒体の中に、なお \( \frac{hf}{2} \)で表される量の電磁波のエネルギーがとどまり続けるという。これこそが真空のエネルギー]である。この真空のエネルギーは、万有斥力をもたらすダークエネルギーの正体と考えられている。


観測によると、渦巻き銀河の中心にある星やガスの回転速度と、中心から離れた星やガスの回転速度がほとんど同じであり、ケプラーの第三法則が破られたように見えた。だが今日では、観測にかからないダークマターの重力が働いており、ケプラーの第三法則は有効に働いていると考えられている。

ビッグバンの直後、宇宙空間は光子で満ちており、光子には質量がないために重力が作用しなかった。が、まもなくヒッグス場が登場し、質量が誕生する。一方、ダークマターはヒッグス場と無関係に発生した質量と考えられているが、その起源は不明である。
第6章では、本書のタイトルでもある重力のからくりを取り上げる。
アインシュタインの重力場の方程式をひと言で言い表すと、「1)何が時空を曲げ、2)その結果、時空はどのように曲がるのか」を示す方程式だ。1)に対応するのが右辺で「時空を曲げる原因」を表している。2)に対応するのが左辺で、こちらは「時空の曲がりの程度(曲率)」を示している(234ページ)。

相対論的質量 \( \large m = \left[ \frac{ \large m \small _0}{\sqrt{ \large 1 - (\frac{\nu}{c}) \small ^2}} \right] \)
相対論的エネルギー \( \large E = \left[ \frac{ \large m \small _0}{\sqrt{ \large 1 - (\frac{\nu}{c}) \small ^2}} \right] \large c ^2 \)
アインシュタイン方程式(宇宙項なし) \( R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}g_{\mu\nu}R = \frac{8 \pi G}{e^4} T_{\mu\nu} \)
アインシュタイン方程式(宇宙項あり) \( R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}g_{\mu\nu}R + \Lambda g_{\mu\nu} = \frac{8 \pi G}{e^4} T_{\mu\nu} \)

アインシュタインは当時、宇宙は膨らみもしないし縮みもしない「静的な構造」をしていると考えており、静的な宇宙を保つためのものとして「宇宙項」を付け加えた。その後、宇宙の膨張が確実なものとなり宇宙項は取り消されるが、宇宙が加速度的に膨張していることが分かった今日では、宇宙項を復活させ、それにダークエネルギーが対応していると考えられている。
真空のエネルギーがダークエネルギーの正体だと書いたが、観測値によれば前者は後者に比べて120桁も大きいことがわかった。その原因は分かっていない。
重力場について、一般相対性理論はをなめらかな連続値として見るのに対し、量子力学は飛び飛びの離散値(量子)として見るため、両者の相性は非常に悪く、超大統一理論(SUT)への道は険しい。これが、本書のサブタイトルでもある「相対論と量子論はなぜ『相容れない』のか」に結びつく。ループ量子重力理論と超弦理論による量子重力理論は、別々の観点から重力場を量子化することで超大統一理論を目指す。
アインシュタインの重力場の方程式をひと言で言い表すと、「1)何が時空を曲げ、2)その結果、時空はどのように曲がるのか」を示す方程式だ。1)に対応するのが右辺で「時空を曲げる原因」を表している。2)に対応するのが左辺で、こちらは「時空の曲がりの程度(曲率)」を示している(234ページ)。

相対論的質量 \( \large m = \left[ \frac{ \large m \small _0}{\sqrt{ \large 1 - (\frac{\nu}{c}) \small ^2}} \right] \)
相対論的エネルギー \( \large E = \left[ \frac{ \large m \small _0}{\sqrt{ \large 1 - (\frac{\nu}{c}) \small ^2}} \right] \large c ^2 \)
アインシュタイン方程式(宇宙項なし) \( R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}g_{\mu\nu}R = \frac{8 \pi G}{e^4} T_{\mu\nu} \)
アインシュタイン方程式(宇宙項あり) \( R_{\mu\nu} - \frac{1}{2}g_{\mu\nu}R + \Lambda g_{\mu\nu} = \frac{8 \pi G}{e^4} T_{\mu\nu} \)

アインシュタインは当時、宇宙は膨らみもしないし縮みもしない「静的な構造」をしていると考えており、静的な宇宙を保つためのものとして「宇宙項」を付け加えた。その後、宇宙の膨張が確実なものとなり宇宙項は取り消されるが、宇宙が加速度的に膨張していることが分かった今日では、宇宙項を復活させ、それにダークエネルギーが対応していると考えられている。
真空のエネルギーがダークエネルギーの正体だと書いたが、観測値によれば前者は後者に比べて120桁も大きいことがわかった。その原因は分かっていない。
重力場について、一般相対性理論はをなめらかな連続値として見るのに対し、量子力学は飛び飛びの離散値(量子)として見るため、両者の相性は非常に悪く、超大統一理論(SUT)への道は険しい。これが、本書のサブタイトルでもある「相対論と量子論はなぜ『相容れない』のか」に結びつく。ループ量子重力理論と超弦理論による量子重力理論は、別々の観点から重力場を量子化することで超大統一理論を目指す。
レビュー
本書は、最新の宇宙論の知識を整理するのに役だった。これまでループ量子重力理論や超弦理論の上辺を見知っていたつもりだが、本書を読んで、超大統一理論へ果たす役割が理解できた。
また、ニュートンの方程式やプランクの法則、アインシュタイン方程式など、要所要所に数式が登場すが、恐れることなかれ。山田さんの絶妙な解説で、その数式の意味するところを日本語で理解することができる。そして、量子力学の数式と相対性理論の数式の接点を見比べることで、この宇宙の美しさを垣間見ることができるだろう。

ところで、本書で「万有斥力」として紹介されているダークエネルギーは、重力を相殺する力ではないし、重力よりさらに小さい力であるが、宇宙が膨張しても一切減少することがないので、重力に代わって遠い未来の宇宙の姿の左右する唯一の力になるのではなかろうか。
また、本書冒頭で、重力は弱すぎるといっても過言ではないほど「きわめて弱い力」としているが、その原因には触れずに終わっている。もしかすると、本書終盤で触れているように、4つの力のうち、反対の力が存在しない重力だけは別のものなのかもしれない。そうなると、超大統一理論は大いなる誤解ということになる。

私が生きているうちに超大統一理論は完成しそうにないが、それでも、ブラックホールの蒸発にはじまり、宇宙の大規模構造、ダークマターやダークエネルギーなど、新しい発見や理論が次々に登場する宇宙論からは目が離せない。
また、ニュートンの方程式やプランクの法則、アインシュタイン方程式など、要所要所に数式が登場すが、恐れることなかれ。山田さんの絶妙な解説で、その数式の意味するところを日本語で理解することができる。そして、量子力学の数式と相対性理論の数式の接点を見比べることで、この宇宙の美しさを垣間見ることができるだろう。

ところで、本書で「万有斥力」として紹介されているダークエネルギーは、重力を相殺する力ではないし、重力よりさらに小さい力であるが、宇宙が膨張しても一切減少することがないので、重力に代わって遠い未来の宇宙の姿の左右する唯一の力になるのではなかろうか。
また、本書冒頭で、重力は弱すぎるといっても過言ではないほど「きわめて弱い力」としているが、その原因には触れずに終わっている。もしかすると、本書終盤で触れているように、4つの力のうち、反対の力が存在しない重力だけは別のものなのかもしれない。そうなると、超大統一理論は大いなる誤解ということになる。

私が生きているうちに超大統一理論は完成しそうにないが、それでも、ブラックホールの蒸発にはじまり、宇宙の大規模構造、ダークマターやダークエネルギーなど、新しい発見や理論が次々に登場する宇宙論からは目が離せない。
(2023年10月31日 読了)
参考サイト
- 重力のからくり:講談社
- 『ホーキング 宇宙の始まりと終わり? 私たちの未来』(スティーヴン・ウィリアム・ホーキング/向井国昭,2008年10月)
- 『大人が知っておきたい物理の常識』(左巻健男/浮田裕,2015年12月)
- 『宇宙は「もつれ」でできている』(ルイーザ・ギルダー/山田 克哉,2016年10月)
- 『超巨大ブラックホールに迫る』(平林久,2017年02月)
- 『時間は存在しない』(カルロ・ロヴェッリ/冨永 星,2019年08月)
- 『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』(伊藤 邦武,2019年08月)
- 『三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題』(浅田 秀樹,2021年03月)
- 『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック/吉田 三知世,2021年09月)
- 『宇宙はなぜ物質でできているのか』(小林 誠,2021年10月)
- 『宇宙を支配する「定数」』(臼田 孝,2022年02月)
- 『宇宙検閲官仮説』(真貝 寿明,2023年02月)
- 『宇宙最強物質決定戦』(高水 裕一,2023年02月)
- 『時間の終わりまで』(ブライアン・グリーン/青木 薫,2023年05月)
- 『宇宙・0・無限大』(谷口義明,2023年06月)
- 西暦1666年 - 万有引力の法則
- 西暦1705年 - ハレー彗星を予言
- 西暦1964年 - 宇宙背景輻射の発見/世界初のスーパーコンピュータ
- 西暦1970年 - ペンローズ・ホーキングの特異点定理
(この項おわり)