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宇宙のはじまりと素粒子 | ||
| 著者 | 田島 治 | ||
| 出版社 | 講談社 | ||
| サイズ | 新書 |
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| 発売日 | 2026年05月21日頃 | ||
| 価格 | 1,210円(税込) | ||
| ISBN | 9784065412602 | ||
「ビッグバン」=「超高温で超高密度だったという宇宙初期の状態」
概要
第1章では、宇宙は「地球→太陽系→銀河系→銀河団」と階層をなし、果てしなく広いことを紹介する。

星が無数にあるなら夜空はまんべんなく明るいはずだが、実際は暗い(オルバースのパラドックス)。光速は有限で「遠くの光は昔の光」であるため、はるか昔の宇宙には星がなかったと結論できる。つまり宇宙は永遠ではなく、有限の年齢をもつことがわかる。
星が無数にあるなら夜空はまんべんなく明るいはずだが、実際は暗い(オルバースのパラドックス)。光速は有限で「遠くの光は昔の光」であるため、はるか昔の宇宙には星がなかったと結論できる。つまり宇宙は永遠ではなく、有限の年齢をもつことがわかる。
第2章では、ハッブルがセファイド変光星で距離を測り、遠い銀河ほど速く遠ざかる「赤方偏移」を発見、宇宙膨張(ハッブル=ルメートルの法則)を導いたことを紹介する。

膨張の逆をたどれば宇宙初期は超高温・超高密度であり、これがビッグバン。ビッグバンは「はじまり」や「一点の爆発」ではなく、初期の高温高密度状態を指すことに注意が必要だ。
膨張の逆をたどれば宇宙初期は超高温・超高密度であり、これがビッグバン。ビッグバンは「はじまり」や「一点の爆発」ではなく、初期の高温高密度状態を指すことに注意が必要だ。
天文衛星「プランク」が観測したCMB全天画像
第3章では、高温の宇宙が発した熱放射が膨張で冷め、2.7ケルビンの宇宙マイクロ波背景放射(CMB)として残っていることを紹介する。1964年にペンジャース&ウィルソンが偶然発見し、その後、COBE衛星が熱放射であることを精密検証、わずか10万分の1の「温度ゆらぎ」も発見した。このゆらぎが星や銀河形成の種となる。
第5章では、物質の最小単位としての「素粒子」を説明する。
物質は分子→原子→原子核→核子→クォークと分解でき、それ以上分けられないのが素粒子。クォークとレプトン各6種が物質を作り、重力・電磁気力・強い力・弱い力の4つの力(も素粒子が媒介)が結合や変化を司る。これらを記述するのが「標準模型」で、加速器LHCなどで研究が進んだ。
物質は分子→原子→原子核→核子→クォークと分解でき、それ以上分けられないのが素粒子。クォークとレプトン各6種が物質を作り、重力・電磁気力・強い力・弱い力の4つの力(も素粒子が媒介)が結合や変化を司る。これらを記述するのが「標準模型」で、加速器LHCなどで研究が進んだ。
第6章では宇宙初期の物質創成をみる。
高温とは構成要素が高い運動エネルギーをもつ状態。ビッグバン初期は素粒子がバラバラに飛び交っていたが、膨張で冷えるにつれ重い素粒子が消え、約10マイクロ秒後にクォークが核子へ相転移。1秒後には陽子・中性子・電子のみとなり、約3分後に水素・ヘリウムなど軽い元素が合成された。
高温とは構成要素が高い運動エネルギーをもつ状態。ビッグバン初期は素粒子がバラバラに飛び交っていたが、膨張で冷えるにつれ重い素粒子が消え、約10マイクロ秒後にクォークが核子へ相転移。1秒後には陽子・中性子・電子のみとなり、約3分後に水素・ヘリウムなど軽い元素が合成された。
第7章では、宇宙の晴れ上がりと重元素合成について説明する。
ビッグバンから38万年後、宇宙が約3000度に冷えて電子が陽子に束縛され水素原子が誕生。自由電子が消えて光が直進できる「宇宙の晴れ上がり」が起き、CMBが解き放たれた。重い元素は恒星内の核融合と超新星爆発で作られる。地球の重元素は過去の超新星の残骸からなり、太陽系が第一世代でないことを示す。
ビッグバンから38万年後、宇宙が約3000度に冷えて電子が陽子に束縛され水素原子が誕生。自由電子が消えて光が直進できる「宇宙の晴れ上がり」が起き、CMBが解き放たれた。重い元素は恒星内の核融合と超新星爆発で作られる。地球の重元素は過去の超新星の残骸からなり、太陽系が第一世代でないことを示す。
レビュー
著者は、京都大学大学院理学研究科教授で、加速器実験やダークマター探索、ニュートリノ実験、CMB観測など最先端の物理学実験に携わり、精力的に研究を行っている田島治さん。図版が多く(しかも可愛いイラストが多い)、宇宙創成や素粒子という「目に見えない事象」を理解するのに役立つ。
たとえば、宇宙背景放射探査機「COBE」が作成したCMBマップだが、これが2次元の画像データで、経度と緯度という2つの角度で示す各点の温度データになっている。この2次元データに対してフーリエ変換を用いると、CMBの空間周波数スペクトルがグラフになって現れる。ここから「宇宙の構成成分」がわかる。その過程も図版で説明されているので分かりやすい。
この成分分析から、何だかわからないが、宇宙のエネルギー密度の27%を占める物質「ダークマター」と、それよりもっと分からないが宇宙のエネルギー密度の68%を占める「ダークエネルギー」が導き出される。
この成分分析から、何だかわからないが、宇宙のエネルギー密度の27%を占める物質「ダークマター」と、それよりもっと分からないが宇宙のエネルギー密度の68%を占める「ダークエネルギー」が導き出される。
田島さんは本書の中で何度も、ビッグバンは超高温で超高密度だったという宇宙初期の状態のことを指し、一点に凝縮された宇宙が大爆発を起こしたわけではないと説明する。このことに注意しないと、ビッグバン以前にインフレーション宇宙が起きており、宇宙にゆらぎがあり、それが現在の大規模構造に繋がったことの説明がつかない。定常宇宙論者で「ビッグバン」の名前を考案したフレッド・ホイルにしてみれば、「してやったり」と考えているのではないだろうか。
そういえば、「宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background-radiation)」を略してCMBと呼ばれるという下りを読んで、加藤元浩さんのミステリー漫画『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』を思い出した。この「C.M.B.」は、キリスト誕生時にやって来た東方の三博士――カスパール(Caspar)、メルキオール(Melchior)、バルタザール(Balthasar)――の頭文字を取っているわけだが、残念ながら、両者には全く関係がないようだ。ビッグバンの残り香を伝えるのに三賢者の頭文字を使っているとしたら、なんと文学性が高いことだろうかと思ったのだが‥‥。
さて、このCMBだが、宇宙誕生から38万年後に起きた「宇宙の晴れ渡り」の時代に放たれた光を観測している。なぜ晴れ渡ったからというと、自由電子がなくなり、光子が自由電子の作用を受けることなく自由に進めるようになったためなのだが、いままで知識としては知っていたのだが、金属面での反射の喩えのおかげで、理解が深まった。
そして現在、田島さんたちは、南米チリ・アタカマ高地に設置されたサイモンズ・オブザーバトリーを使って、宇宙誕生直後の発生したであろう原子重力波の検出を目指している。CMB偏光の観測は地上でもできる。もし検出されれば、宇宙のインフレーション、ダークマター、ダークエネルギー、ニュートリノの性質が解明されるかもしれないという――だが、海抜5,200メートルという富士山よりはるかに高い場所での観測では体力の消耗も激しいと思う。どうか身体にはお気をつけて、私たちに最先端科学のワクワク感を送り届けてほしい。
(2026年6月3日 読了)
参考サイト
(この項おわり)
