『お役所バッシングはやめられない』

山本直治=著
表紙 お役所バッシングはやめられない
著者 山本直治
出版社 PHP研究所
サイズ 新書
発売日 2009年09月
価格 814円(税込)
rakuten
ISBN 9784569772585
バッシングの原因となる事態が可燃物で、報道はライター、そして怒りは酸素の供給(26ページ)

概要

抗議する人のイラスト(男性)
たとえば「居酒屋タクシー事件」「耐震強度偽装問題」――貴方はメディアの報道に接し、公務員に激しく憤りを感じるうちに、「役人叩きをする正義の自分」という高揚感・陶酔感に浸っていなかっただろうか
本書は、元文部科学省のキャリアが、行き過ぎた公務員バッシングは害になるし、公務員以外にもバッシングの対象になり得る職種は多数あると提言する。

レビュー

筆者は言う。「居酒屋タクシーに関していえば、タクシー券の支給や接待がケシカラン!という議論で終わってしまい、そもそもどうしてそんなに遅くまで残業しなければならないのか、タクシーを使わずに帰れる仕事の仕方をするにはどうすればいいかについての抜本的な議論までたどり着くことはありませんでした」(37ページ)のように、バッシングする時には一歩踏み込んで考えてみることを提案している。
また、公務員以上に安定した高級が保証されている職種として、マスコミや大学教員などを挙げている。「こういう高給取りのマスメディア関係者が、報道を通じて天下りとは無縁の普通の公務員を批判する立場にあるとすれば、それこそなんとも滑稽な構図」(132ページ)と指摘する。

私も仕事上、公務員と接することがあるので、彼らを十把一絡げでバッシングの対象にするのはおかしいと思っていた。むしろ、人材が適材適所でなかったり、人事制度上の弊害(年功序列制によるものなど)といったシステム面の問題に目を向けるべきだと思う。
マスコミも、システムという見えないものを叩くより、今そこにいる役人を叩いた方が伝えやすいという安易な考え方はやめて欲しい

本書の終盤では、仕事に見合った給料を出すために、役所に対する監査員の導入を提案する。
システム改善という意味では必要かもしれないが、同じサラリーマンとしては(私は公務員もサラリーマンだと思っている)、ちょっと息苦しくなるような気がする。
人が人を評価できるのか、といった問題は、どこの企業も抱えている。それを監査員だけで一足飛びに解決できるとは思えない。ただ、霞ヶ関官庁への入退館IDカードを勤怠管理に利用していないそうだから、何らかの人事上の方策は打つべきだろう。
(2011年2月7日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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