『ジミーの誕生日』――天皇誕生日に刻まれた史実

猪瀬直樹=著
表紙 ジミーの誕生日
著者 猪瀬 直樹
出版社 文藝春秋
サイズ 単行本
発売日 2009年11月26日
価格 1,571円(税込)
rakuten
ISBN 9784163721309
12月23日午前0時1分30秒、東條英機らの絞首刑が行われた。皇太子明仁の誕生日に執行されたことに衝撃を受けた。(257ページ)

概要

ダグラス・マッカーサー
ダグラス・マッカーサー
著者は、皇室に関する作品が多く、現在は東京都副知事でもある作家の猪瀬直樹さん。
学習院初等科の英語の教師にジミーと名付けられた皇太子明仁殿下の誕生日である12月23日に、A級戦犯7人の処刑が行われた。それは偶然の一致だったのか、というところから猪瀬さんの追求が始まる。

レビュー

ダグラス・マッカーサーの厚木基地到着に始まり、昭和21年4月29日(昭和天皇の誕生日)のA級戦犯28人の起訴、5月3日(翌昭和21年5月3日は新憲法施行日)に東京軍事裁判が開廷、そして12月23日の処刑へと続く一連の流れは、すべてが芝居がかっている。GHQが1つ1つの出来事を歴史に刻むかのように。
そして、その裏で淡々と占領政策を進めていたのは、前線を指揮していたマッカーサー元帥ではなく、ホイットニー准将やケーディス大佐という民間出身の実務家たちだった。

昭和16年夏の敗戦』の巻末に収録されている勝間和代さんとの対談を読むと、GHQの真意が明らかになる。勝間さんは私と同世代――戦争を知らない世代――である。だが、GHQは日本人に戦争の歴史を忘れさせないために、あえて12月23日を選んだのではないかというのが、猪瀬さんの推理だ。
われわれの世代が学んだ戦争の歴史は、じつに貧弱なものだった。太平洋戦争は軍部の独走で起きた――それだけである。
だが皮肉なことに、GHQによる戦後教育を受けてきた我々は、12月23日に刻まれた真実を知らずに暮らしている。おそれながら、その呪縛にとらわれているのは、今上天皇陛下のみになりつつあるのではないだろうか。
(2011年10月4日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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