『魔女の世界史』――ウーマン・リブとオタクの関係

海野弘=著
表紙 魔女の世界史
著者 海野弘
出版社 朝日新聞出版
サイズ 新書
発売日 2014年07月11日
価格 885円(税込)
rakuten
ISBN 9784022735720
〈魔女〉は、現実に閉ざされている私たちに、別世界への旅をかき立ててくれる。(278ページ)

概要

魔女
著者は、平凡社『太陽』編集長を経て、幅広い分野で執筆活動を行う海野弘 (うんの ひろし) さん。

海野さんは、魔女狩りの時代の魔女と一線を画し、「19世紀末に魔女が見えるものとなった」(28ページ)という仮説を立てる。
人々は、近代に入り科学の明かりに照らされた都市の裏に、何かあるのではないかという疑念を感じる。
魔女
かつて太陽の光が届かない森の奥深くに魔女が住んでいたように、都市の裏にも魔女が住んでいるのではないか。メディアが過去の魔女の情報を集め、その情報が拡散し、近代の魔女が形作られていく。

中世の森のようなゴシック建築は、魔女と相性がいい。女性作家が書く非現実なゴシック文学は新しい魔女を生み出し、ゴシックロリータが流行る。
第1章の最後では「世紀末魔女図鑑」として、サロメ、リリス、メディア、ユーディット、スフィンクス、メデューサ、イヴ、キルケ、等々を挙げている。彼女たち全ての名前を記憶している自分は、いかに世紀末オカルト・オタクであるかを再認識させられた。魔女とオカルトはセットで現れるのだ。

レビュー

魔女
20世紀に入り、「〈ウーマン・リブ〉と新魔女運動は重なっている」(111ページ)という。ニューエイジやSFと魔女の関係について、ヨーロッパを中心に詳しく紹介している。
海野さんは、1970年代のパンクから始まった〈ゴス〉は、1995年に入ってサブカルチャートなり公民権を得たと指摘する。さらに、「〈ゴス〉はメイクやファッションを通して、魔女になる術を教えたのだ。そして日本では〈ゴスロリ〉という魔法少女たちが生まれた」(208ページ)という。ただし、「〈オタク〉は男性中心で、〈ゴス〉を支える女性をカヴァーできない」(251ページ)とも指摘する。
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最後に、アニメの魔法少女たち、AKB48、きゃりーぱみゅぱみゅ、初音ミクなどを魔女として紹介しているが、考察がやや弱いように感じられた。

海野さんは、現代に魔女が横行する背景として、別世界に飛び立ちたいという願望から魔女がもてはやされる一方、敵を魔女として投影することで差別論に繋がるとしている。いずれにしても、インターネットがサブカルチャーであった魔女をメジャーにしたことは確かである。そして、腐女子が真の魔女なのではないかと感じる次第(笑)。
(2014年8月24日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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