『ジャーナリズムの原則』――現代の地図

ビル・コヴァッチ,トム・ローゼンスティール=著
表紙 ジャーナリズムの原則
著者 ビル・コヴァッチ/トム・ローゼンスティール
出版社 日本経済評論社
サイズ 単行本
発売日 2002年12月
価格 1,944円(税込)
rakuten
ISBN 9784818814479
ジャーナリズムのそもそもの目的は、市民の自由、そして自治に必要な情報を市民に提供することである。(13ページ)

概要

本書はジャーナリスト向けの教科書だが、ネット時代に情報発信する私たちも参考になる。
ここに述べられている「ジャーナリズムの原則」は調査結果であり、著者の主張ではないとしている。これを信じるなら、ジャーナリズムは意見を書くことも、ある一部に利益になることを書いても構わない。だがしかし、嘘を書いてはいけない。聴視者が検証可能な真実を書かなくてはいけない。そのための材料を提供しなければならない。検証の場を用意しなければならない。
――さて、現代において、わが国のジャーナリズムは、これらの原則に従っているだろうか。

レビュー

本書は、「人びとが友人、もしくは知りあいに会ったときに、まずはじめにすることのひとつは、情報を共有することである」と始まる。なぜなら「その人が自分たちと同じように情報に反応するかどうかをひとつの基準として、知りあい、友だちを選び、人物を判断する」(1ページ)からだ。
著者は、「情報が民主主義を作った」(11ページ)という観点から、本書を執筆している。すべてのジャーナリスト、編集者だけでなく、われわれのようなネットで発信する一般人にとっても参考になる教科書である。

著者は、ジャーナリズムの嚆矢を1609年頃のイギリスのコーヒーハウスとした。東インド会社が設立され、欽定訳聖書が出版され、欧州大陸ではケプラーガリレオによる科学革命がはじまった時代だ。
著者は、真実の定義が曖昧であることに触れたうえで、「ジャーナリズムの核心は検証の規律である」(87ページ)と説く。つまり、「真実を追究し、それを市民に伝えるにあたって決定的に重要なのは、つまり、中立ではなく、独立である」(199ページ)というのだ。
ここで気をつけなければならないのは、英語では真実(truth)と事実(fact)は異なる概念だということだ。真実には人の判断が含まれる

著者は、「ジャーナリストは権力にたいする独立した監視役という役割をはたさなければならない」(143ページ)と指摘する。そこで、「ジャーナリズムは大衆の批判やコメントのための公開討論の場を提供しなくてはならない」(175ページ)という。
著者は、「ジャーナリズムは、私たちの現代の地図である」(219ページ)と指摘する。
だが、ジャーナリズムも資本主義に組み込まれている以上、利潤を上げなければならない。ここで著者は、「聴視者を集めたいだけなら、街角でストリップショーをし、裸になることだ」(226ページ)と嫌みをいう。
(2018年01月13日 読了)
(この項おわり)
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