紀元前335年 - アリストテレスのリュケイオン

アレクサンダー大王の支援で開校
アリストテレス
アリストテレス
アレクサンドロス3世(大王)が即位すると、家庭教師の任を解かれたアリストテレスは、紀元前335年、アテネに戻り、大王の支援を受けて学園を開設する。アテネの東部、アポロン・リュケイオスの神殿があった神域に置かれたことから、リュケイオン(Lykeion)と呼ばれる。
アリストテレスは、リュケイオンの散歩道を歩きながら弟子たちと哲学や学問の論議を交わしたことから、アリストテレスとその弟子たちは逍遙学派(ペリパトス学派;散歩をする人々)と呼ばれるようになる。

アリストテレスの守備範囲は広く、天文学や生物学から、論理学、政治学、演劇まで、多くの著作を残し、「万学の祖」とも呼ばれる。
ただし、その著作は一度、アレクサンドリア図書館に移動して行方不明となり、紀元前1世紀に再発見され、紀元前30年頃、ペリパトス学派11代目学頭のロドス島のアンドロニコスによって再編集された。したがって、現代に伝わっているアリストテレス全集は、原典とは異なる可能性がある。

アリストテレスは、師であるプラトンの理想論を批判するところから入り、物事を演繹的に分析する論理学を創始した。リュケイオンには、アレクサンダー大王の支援を受け、多くの標本や図書を収蔵していた。これがアリストテレス哲学のベースになっている。

アリストテレスの論理は簡単明快である。
たとえば、政治に関わる人間が、一人か、少数か、多数かによって、政治体制を、王制・貴族制・共和制の3つに分類する。そして、これらがそれぞれ堕落すると、僭主制・寡頭制・民主(衆愚)制になるとした。プラトンの理想は哲学者による独裁的な哲人政治だったが、アリストテレスは共和制こそもっとも安定的な政治形態だと考えていた。

紀元前323年、アレクサンダー大王が没すると、アテネではマケドニア人に対する迫害が起こった。アリストテレスは、母方の故郷であるエウボイア島に逃れ、翌年、死去する。
時代は、アリストテレスの考えに反し、ヘレニズムからローマという世界帝国へと進んでゆく。
その後もリュケイオンは存続したが、アリストテレスのような総合的かつ体系的な学問研究は衰えた。アリストテレスの哲学はキリスト教と相性が良かったが、権威主義に取り込まれ、アリストテレスの意図に反して崇拝の対象へと変貌してゆく。

529年、東ローマ帝国のユスティニアヌス帝の時、リュケイオンはプラトンの作ったアカデメイアなどと共に異教として閉鎖された。
アリストテレスの著作を含む古代ギリシア・ヘレニズム期の文化はキリスト教圏からイスラム教圏へと受け継がれ、再びキリスト教圏に戻るには十字軍を待たなければならなかった。

参考書籍

表紙 ニコマコス倫理学〈上〉
著者 アリストテレス/高田 三郎
出版社 岩波書店
サイズ 文庫
発売日 1971年11月16日頃
価格 1,111円(税込)
ISBN 9784003360415
古代ギリシアにおいて初めて倫理学を確立した名著。万人が人生の究極の目的として求めるものは「幸福」即ち「よく生きること」であると規定し、このあいまいな概念を精緻な分析で闡明する。これは当時の都市国家市民を対象に述べられたものであるが、ルネサンス以後、西洋の思想、学問、人間形成に重大な影響を及ぼした。
 
表紙 ニコマコス倫理学〈下〉
著者 アリストテレス/高田 三郎
出版社 岩波書店
サイズ 文庫
発売日 1973年02月16日頃
価格 1,111円(税込)
ISBN 9784003360422
アリストテレス(前384-322)の著作を息子のニコマコスらが編集した本書は、二十三世紀に近い歳月をしのいで遺った古典中の古典である。下巻には、「抑制と無抑制」について述べる第七巻、各種の「愛」を考察する第八・九巻、「快楽」に関する諸説の検討と「幸福」について結論する第十巻を収める。詳細な索引を付す。
 
表紙 形而上学〈上〉
著者 アリストテレス/出 隆
出版社 岩波書店
サイズ 文庫
発売日 1959年12月05日頃
価格 1,276円(税込)
ISBN 9784003360439
哲学のもっとも根本的な問題の探求をめぐるアリストテレス(前384-322)の一群の論文を集録した書。千数百年にわたって西洋の世界観に決定的な影響を与えたばかりでなく、西洋哲学の多くの基本概念を生み出した著作で、ここに示される問題分析の態度や発展流動する弁証法的思考方法は永久に研究者の模範となるものである。
 
表紙 形而上学〈下〉
著者 アリストテレス/出 隆
出版社 岩波書店
サイズ 文庫
発売日 1961年02月25日頃
価格 1,353円(税込)
ISBN 9784003360446
「すべての人間は、生まれつき、知ることを欲する」という一文から始まる本書を読む者は、師プラトンの説に対するアリストテレスの激烈な批判に目を見張らされるだろう。ここには、「真理も友もともに敬愛すべきであるが、友より以上に真理を尊重するのが、敬虔な態度である」といういかにも哲学者らしい彼自身の言葉の実践があるのである。
 

この時代の世界

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