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時間泥棒 | ||
著者 | ジェイムズ・P・ホーガン/小隅 黎 | ||
出版社 | 東京創元社 | ||
サイズ | 文庫 |
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発売日 | 1995年12月21日頃 | ||
価格 | 880円(税込) | ||
ISBN | 9784488663124 |
コペクスキー「最初からずっと、ほしかったのはそれであって、お金ではない。われわれみな、足りないのは時間であります」(22ページ)
概要
時代は近未来。ジェームズ・P・ホーガンの作品にしては、約170ページと薄い。主人公も科学者ではなく刑事である(アイザック・アシモフのロボット・シリーズを連想する)。それでも、時間が一定して流れなくなった場合のコンピュータ・システムへの影響を具体的に描き出しているところは、ハードSFの旗手ホーガンらしい。ホーガン入門SFとしておすすめだ。
あらすじ

ある日突然、ニューヨーク中心街一帯で時計が遅れ始めた。しかも場所によって遅れ方に違いがあり、遅れ方が一定しているわけでもない。待ち合わせに不都合が生じたのはもちろん、時刻によって足並み合わせをしている交通システムは麻痺し、コンピュータも正常に動作しなくなった。

誰かが時間を盗んでいる――こうした判断がくだされ、ニューヨーク市の刑事ジョー・コペクスキーが事件解決に当たることになる。だが、いったい、だれが、どういう手段で「時間」を盗んでいるというのだろう。コペクスキーは、理論物理学者から心霊学者まで、さまざまな“有識者”に意見を求めた。
コンピュータが多く稼働している場所では特に遅れが大きく、赤い霧のようなものが見えるようになった。さらに、ビルを支えている建材が脆くなり、倒壊するという事故が発生するようになる。
コペクスキーはバーナード・モイナハン神父との会話の中から、突拍子もない仮説を立て、事件の解決に当たる。
コンピュータが多く稼働している場所では特に遅れが大きく、赤い霧のようなものが見えるようになった。さらに、ビルを支えている建材が脆くなり、倒壊するという事故が発生するようになる。
コペクスキーはバーナード・モイナハン神父との会話の中から、突拍子もない仮説を立て、事件の解決に当たる。
レビュー

コンピュータ・セールスマンという経歴を持つホーガンは、時間の遅れに伴ってコンピュータの動作に支障をきたすようになる情景を細かに描き出した。私たちが使っているパソコンは、マザーボードに搭載されている水晶発振子のクロックに同期して、すべての回路が動くようにできている。このクロック=時刻が狂ったら、パソコンは動かなくなる。
コンピュータ・ネットワークも同じである。ネットワーク上を行き来するデータには必ず時刻情報が付加されており、それによってデータの順序が決定される。
時間は、また、哲学的な要素を内包する。理論物理学では、時間と空間を一体のものとして扱うが、時間に関する限り、逆方向に遡ることができない。
時間は、あらゆる人たちに均等に与えられるという点では、どんな宗教や政治より平等主義である。だが本書では、均等である筈の時間に重み付けができることを示している。
こうした技術と常識と、そしてホーガンらしい皮肉に、考えさせられることは多い。
コンピュータ・ネットワークも同じである。ネットワーク上を行き来するデータには必ず時刻情報が付加されており、それによってデータの順序が決定される。
時間は、また、哲学的な要素を内包する。理論物理学では、時間と空間を一体のものとして扱うが、時間に関する限り、逆方向に遡ることができない。
時間は、あらゆる人たちに均等に与えられるという点では、どんな宗教や政治より平等主義である。だが本書では、均等である筈の時間に重み付けができることを示している。
こうした技術と常識と、そしてホーガンらしい皮肉に、考えさせられることは多い。
(2019年7月10日 読了)
参考サイト
(この項おわり)