竹鶴政孝は1894年(明治27年)、広島県の酒造業・製塩業を営む竹鶴家の三男と生まれた。大阪市の摂津酒造に入社し、本格的なウイスキー造りを学ぶためにスコットランドに留学する。留学中にジェシー・ロバータ・カウンと結婚し、帰国すると大阪の寿屋(現在のサントリー)に破格の待遇で採用される。
寿屋の社長、鳥井信治郎は流通の便を考えて山崎に工場を設け、1924年(大正13年)、竹鶴は工場長に就任する。しかし、鳥井との方針の違いから、竹鶴は1934年(昭和9年)に寿屋を退職する。
竹鶴政孝がその生涯をかけて目指した「本物のウイスキーづくり」の手本は、スコッチウイスキーだった。その目標に近づくために、スコットランドにできるだけ近い気候風土を備えた余市を選んだ。
旧事務所は、竹鶴政孝の事務所として1934年(昭和9年)7月に建設された、わずか16坪の小さな建物だ。
ウイスキーは蒸溜した原酒を長い年月寝かせ、熟成を待たなければならない。竹鶴は10月に農家から大量の林檎を買い付け、割砕機で砕いて、圧搾機で搾った。ウイスキーができるまで、りんごジュースを売って会社を支えようとしたのである。
ウイスキーは蒸溜した原酒を長い年月寝かせ、熟成を待たなければならない。竹鶴は10月に農家から大量の林檎を買い付け、割砕機で砕いて、圧搾機で搾った。ウイスキーができるまで、りんごジュースを売って会社を支えようとしたのである。
旧事務所の右奥には、創業当時の大日本果汁株式会社という社名が入った金庫がある。つい最近まで現役だったという。
この社名を略して名付けられたニッカウヰスキーが誕生するのは、会社設立から6年後の1940年(昭和15年)10月のことである。
この社名を略して名付けられたニッカウヰスキーが誕生するのは、会社設立から6年後の1940年(昭和15年)10月のことである。
乾燥棟(キルン塔)は赤い屋根が特徴で、「パゴタ屋根」とも呼ばれ、蒸留所のシンボルになっている。
乾燥棟の内部は大きなかまどのような構造になっており、ヨシなどが堆積して炭化したビートを大麦をいぶしながら乾燥させ、発芽を止めてモルトが作られる。ウイスキーにビート香をつける大切なプロセスで、現在は隣の第二乾燥棟でこの作業が行われている。
乾燥棟の内部は大きなかまどのような構造になっており、ヨシなどが堆積して炭化したビートを大麦をいぶしながら乾燥させ、発芽を止めてモルトが作られる。ウイスキーにビート香をつける大切なプロセスで、現在は隣の第二乾燥棟でこの作業が行われている。
蒸留棟の中に並ぶポットスチル。伝統的な石炭直火焚き蒸留で2回蒸留し、アルコールを取り出す。
しめ縄が飾られているところが日本らしい。
しめ縄が飾られているところが日本らしい。
職人が15分ごとに石炭をくべて、もろみの温度を保つ蒸留方法は温度調節が難しく、熟練の技が必要。現在でもこの方法で温度を管理しているのは、余市蒸留所だけという。
蒸留してできたウイスキー原酒は、アルコール度数65%程度で無色透明。樽に詰め、貯蔵、熟成させると琥珀色になる
蒸留してできたウイスキー原酒は、アルコール度数65%程度で無色透明。樽に詰め、貯蔵、熟成させると琥珀色になる
1号貯蔵庫に積まれたウイスキー樽。適度な湿度が保たれるように床は土のままだ。
夏でも冷気が保てるように壁は石造りで設計されている。
夏でも冷気が保てるように壁は石造りで設計されている。
樽の中の原酒は少しずつ熟成が進み、20年で約半分が蒸発。これは一般的に「エンジェルシェア」(天使の分け前)と言われている。
現在、26の貯蔵庫がある(北海道余
現在、26の貯蔵庫がある(北海道余
最寄り駅となるJR余市駅には、ニッカウヰスキーの樽が並べられている。
ニッカ「竹鶴」が絶好調
前述のように、NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」効果で、今年1~8月の国産ウイスキー売り上げが前年同期比の7%増となった。なかでもニッカウヰスキーの「竹鶴」ブランドは39%増と絶好調だ。親会社のアサヒビールも喜びを隠さない。
ニッカの柏工場は休日返上のフル稼働状態だが注文に応じきれず、10月以降の出荷量を調整せざるを得ないという。
ニッカでは、ウイスキーの原酒は今のところ在庫でまかなえているが、来年以降に備えて今年は前年より1割ほど増産する。ただ「販売が落ち着く可能性もある」として大規模な投資は計画していないという。ウイスキーブームがどの程度定着するか、来年春のドラマ終了以降に見極めることになりそうだ。
一方、マッサンの古巣であるサントリーは、国産ウイスキー第1号「白札」(1929年発売)の復刻版を発売。「竹鶴さん(のニッカ)が初の国産ウイスキーを作ったと思われないよう頑張りたい」と意気込む。
ニッカの柏工場は休日返上のフル稼働状態だが注文に応じきれず、10月以降の出荷量を調整せざるを得ないという。
ニッカでは、ウイスキーの原酒は今のところ在庫でまかなえているが、来年以降に備えて今年は前年より1割ほど増産する。ただ「販売が落ち着く可能性もある」として大規模な投資は計画していないという。ウイスキーブームがどの程度定着するか、来年春のドラマ終了以降に見極めることになりそうだ。
一方、マッサンの古巣であるサントリーは、国産ウイスキー第1号「白札」(1929年発売)の復刻版を発売。「竹鶴さん(のニッカ)が初の国産ウイスキーを作ったと思われないよう頑張りたい」と意気込む。
樽管理システムを刷新
2015年(平成27年)2月、ウイスキーの原酒を詰めた樽を管理するシステムを約20年ぶりに刷新。
1990年代以降、余市蒸溜所など4工場計10万個以上の樽をホストコンピューターで管理してきた。原酒は、樽ごとに味や香りが微妙に違い、細かな履歴の管理が欠かせない。管理データは、樽の材質や原産国、大きさ、原酒の検査履歴など、ひとつの樽だけで数百項目にのぼる。
システムを管理するIT大手の伊藤忠テクノソリューションズでは、古いコンピューターでの管理のノウハウを引き継ぐのが課題だった。新しいシステムは一般的なOSを採用し、機能の追加もしやすくした。技術者の負担が減り、運用にかかる費用も半分ほどで済むという。
1990年代以降、余市蒸溜所など4工場計10万個以上の樽をホストコンピューターで管理してきた。原酒は、樽ごとに味や香りが微妙に違い、細かな履歴の管理が欠かせない。管理データは、樽の材質や原産国、大きさ、原酒の検査履歴など、ひとつの樽だけで数百項目にのぼる。
システムを管理するIT大手の伊藤忠テクノソリューションズでは、古いコンピューターでの管理のノウハウを引き継ぐのが課題だった。新しいシステムは一般的なOSを採用し、機能の追加もしやすくした。技術者の負担が減り、運用にかかる費用も半分ほどで済むという。
参考サイト
参考書籍
マッサンとリタ――ジャパニーズ・ウイスキーの誕生 | |||
著者 | オリーヴ・チェックランド/和気洋子 | ||
出版社 | NHK出版 | ||
サイズ | 単行本 | ||
発売日 | 2014年08月 | ||
価格 | 2,200円(税込) | ||
ISBN | 9784140816561 | ||
日本とスコッチはこうして出会った。本場スコットランドからウイスキーづくりの技術を持ち帰った男・竹鶴政孝。そして、かの地で運命的に出会い、彼を支え続けた妻・リタ。スコットランド蒸留所修業、猛反対された国際結婚、北の大地・余市での独立。戦時中、外国人妻としてのリタの奮闘…。夫妻の波乱の生涯を俯瞰。NHK連続テレビ小説「マッサン」夫妻の足跡を、英国人研究者が丹念に辿るノンフィクション。 | |||
978-4140816561 | |||
著者 | 川又 一英 | ||
出版社 | 新潮社 | ||
サイズ | 文庫 | ||
発売日 | 2014年06月27日頃 | ||
価格 | 737円(税込) | ||
ISBN | 9784101428024 | ||
いつの日か、この日本で本物のウイスキーを造るー。大正7年、ひとりの日本人青年が単身スコットランドに渡った。竹鶴政孝、24歳。異国の地で、ウイスキー造りを学ぶ彼はやがて生涯の伴侶となる女性リタと出会う。周囲の反対を押し切って結婚した二人。竹鶴は度重なる苦難にも負けず夢を追い、リタは夫を支え続けた。“日本のウイスキーの父”の情熱と夫婦の絆を描く。 | |||
「マッサン」と呼ばれた男 竹鶴政孝物語 | |||
著者 | |||
出版社 | 産經新聞出版 | ||
サイズ | ムックその他 | ||
発売日 | 2014年09月 | ||
価格 | 1,210円(税込) | ||
ISBN | 9784819150859 | ||
リタの鐘がなる 竹鶴政孝を支えたスコットランド女性の生涯 | |||
著者 | 早瀬利之 | ||
出版社 | 朝日新聞出版 | ||
サイズ | 文庫 | ||
発売日 | 2014年09月 | ||
価格 | 660円(税込) | ||
ISBN | 9784022647467 | ||
スコットランドの田舎で暮らしていたリタは、日本からウイスキー造りを学びに来た留学生・竹鶴政孝と恋をして結ばれる。竹鶴の人生は苦労の連続だったが、リタは「あなたのウイスキーが必ず喜ばれるときがくる」と、折れそうになる夫を励まし続けた。一人の女性の純愛物語。 | |||
琥珀色の夢を見る 竹鶴政孝とリタ ニッカウヰスキー物語 | |||
著者 | 松尾秀助 | ||
出版社 | 朝日新聞出版 | ||
サイズ | 文庫 | ||
発売日 | 2014年09月 | ||
価格 | 660円(税込) | ||
ISBN | 9784022618085 | ||
イミテーションではダメなんだ。日本人に本物のウイスキーを飲んでほしい。その思いを胸に24歳の竹鶴政孝は、スコットランドに留学する。最愛の妻となるリタと知り合い、帰国後はニッカウヰスキーを創業するが、試行錯誤の連続だった。竹鶴を支えたリタや従業員の物語。 | |||
交通アクセス
【鉄道】
- JR余市駅から徒歩3分
- 小樽からバスで約1時間30分
- 札幌市内から約1時間
近隣の情報
- ニッカウヰスキー余市蒸溜所とマッサン:ぱふぅ家のホームページ
- 小樽駅は登録有名文化財:ぱふぅ家のホームページ
- 日本銀行小樽支店は北のウォール街の中心:ぱふぅ家のホームページ
- 小樽運河は沖合いを埋立てて造られた:ぱふぅ家のホームページ
- 小樽運河クルーズに乗って運河めぐり:ぱふぅ家のホームページ
- 旧手宮線は北海道最初の鉄道:ぱふぅ家のホームページ
- 小樽市総合博物館で北海道の鉄道について学ぶ:ぱふぅ家のホームページ
- 恒例「ペンギンの雪中さんぽ」、よちよち歩きに「かわいい」と歓声(2023年12月25日)
- 小樽運河・余市駅を彩る冬のライトアップ(2023年1月31日)
- 青く輝く小樽運河、1万個のLEDで彩る(2021年11月30日)
- 冬の小樽運河、幻想世界(2020年2月12日)
- 小樽運河、ろうそくに包まれて 「雪あかりの路」開幕(2016年2月7日)
- おたる水族館 トドショー、期待の新人はわがまま!?(2015年5月27日)
- 北海道・小樽で「雪あかりの路」開幕(2015年2月7日)
(この項おわり)
竹鶴政孝は、2014年(平成26年)9月から放映中のNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」のモデルとなった人物である。
写真は石造りの正門。トランプのキングを思い起こさせる重厚な造りだ。