ニッカウヰスキー余市蒸溜所とマッサン

2014年8月20日 撮影
正門 - ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
ニッカウヰスキー 余市蒸溜所(北海道余市町黒川町7-6)は、ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝 (たけつるまさたか) によって、1934年(昭和9年)に建設された。赤い屋根が特徴の乾燥棟(キルン塔)や蒸留棟、旧竹鶴邸など9棟の建造物が登録有形文化財として認定されている。

竹鶴政孝は、2014年(平成26年)9月から放映中のNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」のモデルとなった人物である。

写真は石造りの正門。トランプのキングを思い起こさせる重厚な造りだ。
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正門 - ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
竹鶴政孝は1894年(明治27年)、広島県の酒造業・製塩業を営む竹鶴家の三男と生まれた。大阪市の摂津酒造に入社し、本格的なウイスキー造りを学ぶためにスコットランドに留学する。留学中にジェシー・ロバータ・カウンと結婚し、帰国すると大阪の寿屋(現在のサントリー)に破格の待遇で採用される。
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貯蔵庫 - ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
寿屋の社長、鳥井信治郎は流通の便を考えて山崎に工場を設け、1924年(大正13年)、竹鶴は工場長に就任する。しかし、鳥井との方針の違いから、竹鶴は1934年(昭和9年)に寿屋を退職する。
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竹鶴政孝がその生涯をかけて目指した「本物のウイスキーづくり」の手本は、スコッチウイスキーだった。その目標に近づくために、スコットランドにできるだけ近い気候風土を備えた余市を選んだ。
旧事務所 - ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
旧事務所は、竹鶴政孝の事務所として1934年(昭和9年)7月に建設された、わずか16坪の小さな建物だ。

ウイスキーは蒸溜した原酒を長い年月寝かせ、熟成を待たなければならない。竹鶴は10月に農家から大量の林檎を買い付け、割砕機で砕いて、圧搾機で搾った。ウイスキーができるまで、りんごジュースを売って会社を支えようとしたのである。
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旧事務所 - ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
旧事務所の右奥には、創業当時の大日本果汁株式会社という社名が入った金庫がある。つい最近まで現役だったという。
この社名を略して名付けられたニッカウヰスキーが誕生するのは、会社設立から6年後の1940年(昭和15年)10月のことである。
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乾燥棟 - ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
乾燥棟(キルン塔)は赤い屋根が特徴で、「パゴタ屋根」とも呼ばれ、蒸留所のシンボルになっている。

乾燥棟の内部は大きなかまどのような構造になっており、ヨシなどが堆積して炭化したビートを大麦をいぶしながら乾燥させ、発芽を止めてモルトが作られる。ウイスキーにビート香をつける大切なプロセスで、現在は隣の第二乾燥棟でこの作業が行われている。
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蒸留棟 - ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
蒸留棟の中に並ぶポットスチル。伝統的な石炭直火焚き蒸留で2回蒸留し、アルコールを取り出す。

しめ縄が飾られているところが日本らしい。
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職人が15分ごとに石炭をくべて、もろみの温度を保つ蒸留方法は温度調節が難しく、熟練の技が必要。現在でもこの方法で温度を管理しているのは、余市蒸留所だけという。
蒸留してできたウイスキー原酒は、アルコール度数65%程度で無色透明。樽に詰め、貯蔵、熟成させると琥珀色になる
ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
1号貯蔵庫に積まれたウイスキー樽。適度な湿度が保たれるように床は土のままだ。
夏でも冷気が保てるように壁は石造りで設計されている。
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ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
樽の中の原酒は少しずつ熟成が進み、20年で約半分が蒸発。これは一般的に「エンジェルシェア」(天使の分け前)と言われている。
現在、26の貯蔵庫がある(北海道余
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ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
1998年(平成10年)4月、貯蔵庫を改装し、「ウイスキー館」と「ニッカ館」から成るウイスキー博物館が誕生した。

ウイスキー館の入口では、。ブラックニッカのラベルに描かれているヒゲの男性が出迎える。
彼は、いくつものウイスキーの香りを嗅ぎ分けることができるブレンドの名人「キング・オブ・ブレンダ―ズ」と呼ばれた英国人がモデルとされる。片手に大麦を持ち、鼻にグラスを近づけている。
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JR余市駅 - ニッカウヰスキー 余市蒸溜所
最寄り駅となるJR余市駅には、ニッカウヰスキーの樽が並べられている。
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ニッカ「竹鶴」が絶好調

前述のように、NHK朝の連続テレビ小説「マッサン」効果で、今年1~8月の国産ウイスキー売り上げが前年同期比の7%増となった。なかでもニッカウヰスキーの「竹鶴」ブランドは39%増と絶好調だ。親会社のアサヒビールも喜びを隠さない。
ニッカの柏工場は休日返上のフル稼働状態だが注文に応じきれず、10月以降の出荷量を調整せざるを得ないという。
ニッカでは、ウイスキーの原酒は今のところ在庫でまかなえているが、来年以降に備えて今年は前年より1割ほど増産する。ただ「販売が落ち着く可能性もある」として大規模な投資は計画していないという。ウイスキーブームがどの程度定着するか、来年春のドラマ終了以降に見極めることになりそうだ。

一方、マッサンの古巣であるサントリーは、国産ウイスキー第1号「白札」(1929年発売)の復刻版を発売。「竹鶴さん(のニッカ)が初の国産ウイスキーを作ったと思われないよう頑張りたい」と意気込む。

樽管理システムを刷新

2015年(平成27年)2月、ウイスキーの原酒を詰めた樽を管理するシステムを約20年ぶりに刷新。

1990年代以降、余市蒸溜所など4工場計10万個以上の樽をホストコンピューターで管理してきた。原酒は、樽ごとに味や香りが微妙に違い、細かな履歴の管理が欠かせない。管理データは、樽の材質や原産国、大きさ、原酒の検査履歴など、ひとつの樽だけで数百項目にのぼる。

システムを管理するIT大手の伊藤忠テクノソリューションズでは、古いコンピューターでの管理のノウハウを引き継ぐのが課題だった。新しいシステムは一般的なOSを採用し、機能の追加もしやすくした。技術者の負担が減り、運用にかかる費用も半分ほどで済むという。
ニッカウヰスキー 余市蒸溜所 関連

参考サイト

参考書籍

表紙 マッサンとリタ――ジャパニーズ・ウイスキーの誕生
著者 オリーヴ・チェックランド/和気洋子
出版社 NHK出版
サイズ 単行本
発売日 2014年08月
価格 2,200円(税込)
ISBN 9784140816561
日本とスコッチはこうして出会った。本場スコットランドからウイスキーづくりの技術を持ち帰った男・竹鶴政孝。そして、かの地で運命的に出会い、彼を支え続けた妻・リタ。スコットランド蒸留所修業、猛反対された国際結婚、北の大地・余市での独立。戦時中、外国人妻としてのリタの奮闘…。夫妻の波乱の生涯を俯瞰。NHK連続テレビ小説「マッサン」夫妻の足跡を、英国人研究者が丹念に辿るノンフィクション。
 
表紙 978-4140816561
著者 川又 一英
出版社 新潮社
サイズ 文庫
発売日 2014年06月27日頃
価格 737円(税込)
ISBN 9784101428024
いつの日か、この日本で本物のウイスキーを造るー。大正7年、ひとりの日本人青年が単身スコットランドに渡った。竹鶴政孝、24歳。異国の地で、ウイスキー造りを学ぶ彼はやがて生涯の伴侶となる女性リタと出会う。周囲の反対を押し切って結婚した二人。竹鶴は度重なる苦難にも負けず夢を追い、リタは夫を支え続けた。“日本のウイスキーの父”の情熱と夫婦の絆を描く。
 
表紙 「マッサン」と呼ばれた男 竹鶴政孝物語
著者
出版社 産經新聞出版
サイズ ムックその他
発売日 2014年09月
価格 1,210円(税込)
ISBN 9784819150859
 
表紙 リタの鐘がなる 竹鶴政孝を支えたスコットランド女性の生涯
著者 早瀬利之
出版社 朝日新聞出版
サイズ 文庫
発売日 2014年09月
価格 660円(税込)
ISBN 9784022647467
スコットランドの田舎で暮らしていたリタは、日本からウイスキー造りを学びに来た留学生・竹鶴政孝と恋をして結ばれる。竹鶴の人生は苦労の連続だったが、リタは「あなたのウイスキーが必ず喜ばれるときがくる」と、折れそうになる夫を励まし続けた。一人の女性の純愛物語。
 
表紙 琥珀色の夢を見る 竹鶴政孝とリタ ニッカウヰスキー物語
著者 松尾秀助
出版社 朝日新聞出版
サイズ 文庫
発売日 2014年09月
価格 660円(税込)
ISBN 9784022618085
イミテーションではダメなんだ。日本人に本物のウイスキーを飲んでほしい。その思いを胸に24歳の竹鶴政孝は、スコットランドに留学する。最愛の妻となるリタと知り合い、帰国後はニッカウヰスキーを創業するが、試行錯誤の連続だった。竹鶴を支えたリタや従業員の物語。
 

交通アクセス

【鉄道】
  • JR余市駅から徒歩3分
【バス】
  • 小樽からバスで約1時間30分
【自動車】
  • 札幌市内から約1時間
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出発地の最寄駅:

目的地:ニッカウヰスキー 余市蒸溜所

近隣の情報

(この項おわり)
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