世界遺産白神山地/岳岱自然観察教育林でブナ原生林を見る

2022年7月3日 撮影
峨瓏の滝 - 白神山地
峨瓏の滝
白神山地 (しらかみさんち) は、青森県から秋田県にまたがる山地で、人の影響をほとんど受けていない原生的なブナ天然林が世界最大級の規模で分布していることから、屋久島とならんで1993年(平成5年)12月、日本で初めてのユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録された。

写真の峨瓏の滝 (がろうのたき) は、白神山地の南側、秋田県藤里町にある落差12メートルの小さな滝だが、特徴のある形をしており、滝の上は急峻な渓谷になっている。県道317号沿いにある親水公園にあり、駐車場から歩いてすぐの場所にある。
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白神山地ビジターセンター - 白神山地
白神山地ビジターセンター
弘前市内から県道28号線を西へ1時間走ると、青森県が設置した白神山地ビジターセンター(青森県中津軽郡西目屋村大字田代字神田61-1)がある。ここで、白神山地のブナと生態系を学んでから奥地へ入るといいだろう。
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白神山地ビジターセンター - 白神山地
白神山地ビジターセンター
白神山地は、青森県南西部から秋田県北西部にまたがる130,000haに及ぶ広大な山岳地帯の総称で、このうちブナ原生林で覆われた16,971haが世界遺産として登録された。

白神山地は、約9,000万年前の白亜紀にできた花崗岩を基盤に、2,000万年前~1,200万年前の新第三紀中新世の堆積岩(凝灰岩、泥岩、砂岩)と、それを貫く貫入岩類(地下の深いところからマグマが上昇してできる岩。流紋岩、石英閃緑岩等)で構成されている。
白神山地のブナ林は人間の影響をほとんど受けておらず、ブナーミズナラ群落、サワグルミ群落等をはじめ多種多様な植物が生育している。
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白神山地ビジターセンター - 白神山地
白神山地ビジターセンター
また、高緯度にもかかわらず、ツキノワグマ、ニホンザル、クマゲラ、イヌワシ等をはじめ非常に多くの動物が生息し、白神山地全体が森林博物館であるかのようだ。
白神山地世界遺産地域の核心地域は、自然環境への影響が懸念されたため、既存の歩道を利用した登山などを除き、2003年(平成15年)から入山届制になっている。
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岳岱・多目的展示施設 - 白神山地
岳岱・多目的展示施設
この核心地域の西側に隣接する岳岱 (だけだい) 自然観察教育林は、約12haのブナ原生林で、世界遺産の様子を目の当たりにすることができる。
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岳岱自然観察教育林 - 白神山地
岳岱自然観察教育林
藤里町で写真店を営むかたわら、白神山地の自然保護活動を続け、世界遺産登録のきっかけをつくった鎌田孝一さんは、森林粋 (もりりんすい) の雅号で岳岱の情景を多くの歌に残した。2021年(令和3年)12月12日、91歳で永眠。
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岳岱自然観察教育林 - 白神山地
岳岱自然観察教育林
岳岱は標高620メートルで、ブナを主とする冷温帯落葉広葉樹林の極林に近い林相を呈している。林内には1.8kmの遊歩道が整備されている。
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岳岱自然観察教育林 - 白神山地
岳岱自然観察教育林
ブナの巨木やイタヤカエデ、ヤチダモ、ホオノキ、サワグルミの大木を間近で見ることができる。他の白神山地の山々に比べ笹竹が少なく、苔むした巨岩を抱えたブナ林は、林というよりまるで庭園のようにも見える。

ブナは、北海道西南部から本州、四国、九州の温帯に広く分布する落葉広葉樹。寿命は200~400年ほどで、樹高は30メートルに及ぶことがある。樹皮は灰白色できめが細かくて割れがなく、地衣類が着いて模様のように見える。
ブナは生長するにしたがって、根から毒素を出していく。そのため、一定の範囲に一番元気なブナだけが残り、残りのブナは衰弱して枯れてしまう。
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岳岱自然観察教育林 - 白神山地
岳岱自然観察教育林
ブナの木は非常に重く、腐りやすく、加工後に曲がって狂いやすいという性質があり、20世紀の後半まで木材としてあまり使われなかった。しかし、重量に対する引っ張り強度に優れており、20世紀後半になると、薬品処理と合板の接着・加工技術の向上によって、家具やスキー板に利用されている。

白神山地のブナ林が形成されたのは、最終氷期から2000年後の約8000年前頃とされている。植物は540種、動物は4,000種を数える。
地球温暖化によって平均気温が産業革命期から2.9℃上昇すると、ブナの生育は白神岳のみに限られ、世界遺産地域の大部分が分布適域を外れると予想される。
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岳岱自然観察教育林 - 白神山地
岳岱自然観察教育林
ブナの死亡後、新たに分布適域となったコナラやクリなどの落葉広葉樹が成長し、ブナの分布密度の低下が徐々に進行する可能性がある。
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白神山地世界遺産センター(藤里館) - 白神山地
白神山地世界遺産センター(藤里館)
県道317号線沿いにある白神山地世界遺産センター(藤里館)は、世界遺産白神山地を守るための調査研究施設で、白神山地の保全管理に関する各種調査やデータの管理をおこなっている。
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白神山地世界遺産センター(藤里館) - 白神山地
白神山地世界遺産センター(藤里館)
また、環境教育や普及啓発活動の場として活動しており、自然観察会や清掃登山などのイベントも開催し、白神山地エコツリーリズムの推進に取り組んでいる。
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権現の大イチョウ - 白神山地
権現の大イチョウ
白神山地世界遺産センターと川を挟んで対岸にある権現の大イチョウ(田中の大イチョウ)は、樹高25メートル、周囲8.5メートイルに達する大木である。右下には、この木を御神木とする田中神社が見える。

弘法大師がこの地を訪れた際、昼食に使った箸を地面に突き立てて去り、この箸が成長して大イチョウになったと伝えられている。県の天然記念物。
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白神山地ビジターセンターへの交通アクセス

【バス】
  • JR弘前駅からバスで約1時間、「田代(西目屋村役場前)」下車
【自動車】
  • 東北自動車道「大鰐弘前I.C.」から車で約1時間
白神山地 関連

参考サイト

近隣の情報

(この項おわり)
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