『機関車トーマスと英国鉄道遺産』――リアリズムに彩られている

秋山岳志=著
表紙 機関車トーマスと英国鉄道遺産
著者 秋山岳志
出版社 集英社
サイズ 新書
発売日 2010年04月
価格 770円(税込)
rakuten
ISBN 9784087205381
ウィルバートが執筆したレイルウェイ・シリーズ26作中、5人(組)のイラストレーターが挿絵を担当しているが、途中交代を繰り返したのは、彼の要求するリアリティにイラストレーターが応えられなかったことが大きな原因の1つである。(88ページ)

概要

トーマスランド - トーマスとトップハムハット卿
子どもが小さい頃、アニメ「きかんしゃトーマスと仲間たち」(原題:Thomas the Tank Engine and Friends)をよく見た。富士急ハイランドにあるトーマスランドにも何回か足を運んだ。
その「トーマス」の原作者である、イギリスの牧師ウィルバート・オードリーの足跡を追ったのが本書である。

レビュー

ウィルバートは、病弱な息子クリストファーが寝るベッドの傍らで機関車の創作物語を語って聞かせた。これがトーマスの原点である。
各々の機関車や客車に顔が付いているトーマスというとファンタジーなイメージがあるが、鉄道好きのウィルバートは、リアリティにこだわったという。
トーマスの物語には、やたら脱線や衝突が起こる。これらはすべて事実に基づいているという。ウィルバートはイギリス国内だけでなく、アメリカ、インドなど外国の鉄道の事故も題材にしていたという。
さらに、ウィルバートの「要求するリアリティにイラストレーターが応えられなかった」ために、26作中、5人ものイラストレータが交替したという。
ウィルバートが布教活動のためにマン島の教区は「ソドー&マン」と呼ばれていた。そこで彼は、機関車たちの楽園の島「ソドー島」を創作した。「島があるからには、鉄道だけでなく、歴史があり、暮らしている人がいるはずであると考え、島の歴史や、そこに暮らす人物の来歴まで創作してしまった」(121ページ)という。

こうしたリアルな裏付けがあるからこそ、トーマスは世界中の子どもから愛されているのだろう。
(2011年3月26日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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