荒船風穴はカイコの卵を保存する施設

2022年4月3日 撮影
荒船風穴
荒船風穴
荒船風穴 (あらふねふうけつ) (群馬県甘楽郡下仁田町大字南野牧甲10690-2外)は、岩の隙間から吹き出す冷気を利用した蚕種 (さんしゅ) (カイコガが産んだ卵)の貯蔵施設で、1905年(明治38年)から1914年頃に造られた。世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産となっている。

駐車場から風穴まで800メートルほどあり、高低差もあるので(風穴のある場所は標高840メートル)、歩きやすい靴と服装で行くといいだろう。
荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1280×1920 ピクセル, 1975 Kbyte)
荒船風穴
荒船風穴
風穴の冷蔵能力を活用し、当時年1回だった養蚕を複数回可能にすることで、生糸の大量生産につながった。3基の風穴があり、貯蔵能力は国内最大規模で、取引先は全国42道府県をはじめ朝鮮半島にも及んだ。

荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1920×1280 ピクセル, 1824 Kbyte)
冷風体験ポイント - 荒船風穴
冷風体験ポイント
現在でも操業当時と変わらぬ冷風環境が維持されており、冷風を体験することができる。
風穴から数百メートルほど離はなれた場所に岩が重かさなっている場所があり、この中には冬の間に凍った氷が残っている。この岩のすき間を空気が通り抜けることにより、風穴に出でるころには2〜3℃の冷気になる。

冷風体験ポイント - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1280×1920 ピクセル, 1992 Kbyte)
1号風穴 - 荒船風穴
1号風穴
風穴の石積みは城塞の石垣と異なり、冷気を取り入れるためにすき間をつくりながら積み上げている。外側は冷気を閉じ込めるためすき間まを塞いでいる。

1号風穴 - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1920×1280 ピクセル, 1707 Kbyte)
1号風穴 - 荒船風穴
1号風穴
外気温は6.5℃だが、1号風穴の内部は0.0℃と、チルド室並みに冷たい。
1号風穴 - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1920×1280 ピクセル, 771 Kbyte)
冷風体験窓 - 荒船風穴
冷風体験窓
1号風穴の脇には冷風体験窓があり、穴の中に手をかざすと、風穴内と同じ原理の冷風を体験することができる。

冷風体験窓 - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1920×1280 ピクセル, 1846 Kbyte)
2号風穴 - 荒船風穴
2号風穴
2号風穴は、1908年(明治41年)に完成した。翌1909年(明治42年)の調査によると、貯蔵可能な蚕種枚数は110万枚と、榛名風穴の10万枚を大きく引き離していた。
石積みの風穴の上に土蔵のような建物を建て、中は地下2階、地上1階の3層に分けられていた。
2号風穴 - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1920×1280 ピクセル, 1592 Kbyte)
3号風穴 - 荒船風穴
3号風穴
これは春蚕、夏秋蚕の貯蔵を分けたうえ、出荷の際には順に層を上がることで、自然に外気の温度に慣れさせるようにする配慮からだった。

3号風穴は、1913年(大正2年)に完成した。
3号風穴 - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1920×1280 ピクセル, 1751 Kbyte)
風穴冷風体験館 - 荒船風穴
風穴冷風体験館
2018年(平成30年)10月に、風穴冷風体験館が完成した。施設では岩肌から吹き出す10℃前後の冷風をいつでも感じることができる。風穴は11月末まで見学できる。12月からは冬季閉鎖される。
風穴冷風体験館 - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1920×1270 ピクセル, 1337 Kbyte)
自動販売機 - 荒船風穴
自動販売機
村長や群馬県会議員を務めた経験のある庭屋静太郎 (にわや せいたろう) と、高山社蚕業学校を卒業し長野で風穴の知見を得た息子の千壽 (せんじゅ) の親子が、荒船風穴の建設に着手した。
1903年(明治36年)に群馬県での最初の風穴「榛名風穴」が完成し、1905年(明治38年)に荒船風穴の1号風穴が完成する。

江戸時代までは、蚕種が春に孵る性質に合わせた飼育しかできなかった。しかし、年間を通して涼しく、温度変化の少ない長野県の山間の風穴を利用することで、蚕種を保存する技術が進んだ。
明治時代に製糸業が発達すると、原料となる繭の増産が求められた。そこで、蚕種が孵る時期を遅らせ、夏や秋の農閑期に養蚕する数を増やすようになった。
自動販売機 - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1256×1920 ピクセル, 1103 Kbyte)
自動販売機 - 荒船風穴
自動販売機
園内の自動販売機には、謎の商材が‥‥。

自販機の上の段には、特産の下仁田ネギが並ぶ。江戸時代には栽培されており、江戸の大名や旗本から幾ら金がかかってもいいという注文があるなど、珍重されていたようだ。
自動販売機 - 荒船風穴の大きな写真大きな写真
(1920×1259 ピクセル, 835 Kbyte)
荒船風穴1・2号風穴の上方に張り出した大岩は岩陰遺跡で、岩穴から焼町式土器などが出土した。約5000年(令和2982年)前(縄文中期)の遺跡だという。縄文人も、この天然の冷蔵庫を利用したのだろうか‥‥。

交通アクセス

【自動車】
  • 下仁田駅から約30分
  • 佐久I.C.から約40分、または下仁田I.C.から約50分で風穴駐車場。徒歩約20分。
荒船風穴 関連

参考サイト

近隣の情報

(この項おわり)
header