パソコン「MZ-2521」でプログラミングからパソコン通信へ

1985年10月 購入
MZ-2521
本格的にプログラミングを始めるために、シャープのパソコン「MZ-2521」を購入した。

シャープ・パソコンのクリーン設計を引き継ぎつつ、CPUをZ80Bに強化。RAMはバンク切り替えで最大256KBまで搭載できる。SuperMZ の名前の通り、当時の8ビット・パソコンとしては最強のハード性能を備えていた。

目次

CPU Z80B

CPU Z80B
CPUは8ビットの Z80B――当時、ほとんどのパソコンが4MHzのZ80Aを搭載するなか、Z80Bは6MHz動作を可能としていた。クロック性能で単純に1.5倍速いことになる。

シャープ・パソコンのクリーン設計を引き継ぎつつ、CPUをZ80Bに強化。RAMはバンク切り替えで最大256KBまで搭載できる。SuperMZ の名前の通り、当時の8ビット・パソコンとしては最強のハード性能を備えていた。

アドレス管理

Z80シリーズは最大64KBのアドレスしか管理できない。
MZ-2500シリーズでは、8KB×64=512KBの物理アドレス空間の任意の8つをCPUのアドレス空間に割り当てるバンクメモリ回路を備えている。
これにより、メインRAMは最大256KB、GVRAM(グラフィック)は最大128KB、CGRAM(テキスト)は14KB、IPL-ROMは32KBという、16ビット・パソコンなみのアドレス管理能力を備えている。

この結果、当時は16ビットのPC-9801 シリーズにしかできなかった640×400ドット・16色グラフィック表示や、40文字×20行の漢字表示を可能にした。また、320×200/400ドットながら、256色カラー表示も可能にした。
ゲームなどで使うキャラクタは、シャープお得意のPCG(Programmable Character Generator)にあらかじめ登録することで、カラーのキャラクターが8ビットCPUとは思えない速度で画面上を飛び回った。

ボイスレコーダー

本体前面左側のボイスレコーダーもユニークな機能だ。
カセットテープの録音・再生が可能なのだが、これまでのシャープのパソコン・ソフトが利用できるよう、プログラムやデータのロード/セーブが可能になっている。MZ-2000/2200シリーズのソフトも動かすことができる。

プログラムから制御が可能で、後に購入した専用モデムフォンとボイスボードを使い、留守番電話として使えるようにした。

2種類のBASIC

OSの代わりに使われるBASICインタプリタは2種類が同梱されており、いずれもフロッピーディスクから起動する。
BASIC-S25 は、それまでのシャープ・パソコンに搭載されてきたBASICの上位互換システム。
BASIC-M25 は、シェアを広げつつあったマイクロソフトBASIC(N-88-BASICなど)の互換システム。BASIC-M25 のソースコードを載せた書籍『BASIC-M25ソース・リスト : Super MZ』が出版され、その後、CP/M でCコンパイラを製作する際に大いに参考になった。

Personal CP/M

シャープから純正OSとして、Personal CP/M が発売された。
1970年代の米デジタルリサーチによって開発された、8ビットCPU向けのシングルユーザー・シングルタスクOSで、後の MS-DOS に大きな影響を与えた。

アセンブラが付属しており機械語での開発も可能だったが、オープンソースだった Small-C を日本語化して移植した。

雑誌『Oh! MZ』では読者参加企画として、S-OS というシャープ全機種共通OSが開発され、さまざまな高級言語やゲーム、アプリケーションなどがリリースされた。すべてオープンソースで、大いに勉強になった。また、私もLISPやFORTHの開発をサポートした。

拡張性

5インチ2Dドライブ「MZ-1F07」
5インチ2Dドライブ「MZ-1F07」
オプション品が豊富で、ジョイスティック、モデムフォン、ボイスボード、5インチFDDなどを揃えた。RS-232Cに加え、拡張スロットが2本あり、拡張性も優れていた。
ファイル交換用に3.5インチより普及していた5インチFDDが役に立った。100Kバイト単位のファイルを送ることができるほど、当時のパソコン通信は高速でなかった。
MZ-2521
アダプタを自作し、X1/turboシリーズの拡張ボードを利用できるようにした。
また、16ビットCPU Z280 を搭載するワンボードを接続し、CP/M-Plus でプログラム開発を行った。

キーボード

MZ-2521
キーボードは重量1.4kgもある重厚な作りで、長くプログラミングを続けても肩が凝らず、とても助かった。

パソコン通信

パソコン通信を意識した設計になっており、RS-232Cを標準装備しており、専用モデムフォンは300bpsという低速ながら、電話とデータ通信を1台でまかなうことができる。また、ターミナルソフトが標準添付されている。
モデムフォンはBASICからの制御も可能で、当時主催していた SIG の管理を行うために、朝になると自動接続し、未読記事やメールのダウンロード、必要な応答を自動で行うプログラムを作った。

LHarc のCP/Mへの移植がスムーズに進んだのも、北海道にお住まいの原作者、吉崎栄泰 (よしざき はるやす) さんとパソコン通信で連絡を取り合えたおかげだ。

後に言うネット・ストーカーに絡まれたのも、この頃である。モデムフォンを使った自動応答システムを作ったのも、ストーカー対策が動機だった。
その後、ボランティア活動を通じて、一人暮らしの高齢者のための緊急通報システムとして活用できることに気づき、いくつかの自治体に無償提供した。

私は正規のシステム開発教育を受けていないのだが、こうした趣味のプログラミングのおかげで、30年後もシステム開発で飯を食っている。ありがたいことである。
スペック
項目 仕様 コメント
CPU Z80B
6MHz / 4MHz
 
RAM 128KB 最大 256KB
GVRAM 64KB
640×400(4色)
320×200(256色)
最大 128KB
640×400(16色)
320×400(256色)
CGRAM 14KB + PCG
80文字×25行/20行/12行カラー8色
40文字×25行/20行/12行カラー64色
ROM IPL-ROM 32KB
漢字ROM 256KB
漢字ROMはJIS第一・第二水準標準装備
サウンド YAMAHA YM2203×1(FM音源×3+SSG音源3) オプションのボイスボードにより音声合成も可能
フロッピードライブ 3.5インチ 2DD×2台  
ボイスレコーダー カセットテープレコーダー アナログ録音/再生の他、データやプログラムのセーブ/ロードが可能
拡張スロット 2本  
インターフェース プリンタ(セントロニクス)×1
シリアル(RS-232C)×2
外部FDD(SHARP仕様)×1
ジョイスティック×2
キーボード×2
マウス×2
ディスプレイ出力×2
ディスプレイテレビ制御×1
専用モデム本端子×1
音声入出力端子(モノラル)×1
 
同梱ソフト BASIC-S25
BASIC-M25
BASIC-M25はマイクロソフトBASIC互換
消費電力 50W  
外形寸法(突起部除く) 幅350mm×奥行345mm×高さ128mm  
質量 約8.6kg  

1985~1988年に発売された主なパソコン

メーカー
機種
発売時期
定価
CPU OSなど 主記憶
外部記憶
画像表示
NEC
PC-98XA
1985年5月
57万5千円~
16ビット
80286 8MHz
ROM:N88-BASIC
漢字ROM
FDD:MS-DOS
512~768Kバイト
FDD
別売HDD
1120×750ドット
16色カラー
NEC
PC-9801U
1985年5月
57万5千円~
16ビット
V30 8MHz
ROM:N88-BASIC
漢字ROM
FDD:MS-DOS
128Kバイト
FDD
640×400ドット
8色カラー
富士通
FM-77AV
1985年10月
12万8千円
8ビット
68B09 8MHz
ROM:
F-BASIC
漢字ROM
FDD:OS-9
64~256Kバイト
FDD
640×200ドット
8色カラー
PSG 3音
NEC
PC-98LT
ラップトップ
1986年10月
23万8千円
16ビット
V50 8MHz
ROM:N88-BASIC
漢字ROM
FDD:MS-DOS
384Kバイト
FDD
640×400ドット
2階調
シャープ
X68000
1987年3月
36万9千円~
16ビット
68000 10MHz
FDD:Human68k + SX-Window
X-BASIC
漢字ROM
512Kバイト~
FDD
別売HDD
768×512ドット
16色カラー
PSG 3音 + ADPCM
エプソン
PC-286
1987年3月
35万7千円
16ビット
80286 10MHz
ROM:ROM-BASIC
漢字ROM
FDD:MS-DOS
640Kバイト
FDD
640×400ドット
16色カラー
IBM
IBM PS/55
1987年5月
98万円~
32ビット
386DX 16MHz
FD:JDOS
OS/2
漢字ROM
1Mバイト
FDD
HDD
1024×768ドット
16色カラー
Apple
Macintosh II
1987年9月
75万円
32ビット
68020 16MHz
ROM:
漢字Talk 2.0~
1~8Mバイト
FDD
別売HDD
640×480ドット
256色カラー
NEC
PC-98XL2
1987年9月
98万円~
32ビット
386DX 16MHz
V30 8MHz
FD:MS-DOS
OS/2
漢字ROM
512K~14.5Mバイト
FDD
HDD
1120×750ドット
16色カラー
NEC
PC-9801RA
1988年7月
49万8千円~
32ビット
386DX 16MHz
V30 8MHz
ROM:
N-88BASIC
FD:MS-DOS
OS/2
漢字ROM
1.6~14.6Mバイト
FDD
HDD
640×400ドット
16色カラー
エプソン
PC-386
1989年1月
59万8千円~
32ビット
386DX 20MHz
ROM:
ROM-BASIC
FD:MS-DOS
漢字ROM
1.6~14.6Mバイト
FDD
HDD
640×400ドット
8色カラー

参考書籍

表紙 ザイログZ80伝説
著者 鈴木哲哉
出版社 ラトルズ
サイズ 単行本
発売日 2020年08月24日頃
価格 2,398円(税込)
ISBN 9784899774815
約半世紀に渡ってマニアを魅了し続けるZ80の、あの話とかこの話とか。
 

これまでお世話になったコンピュータ

ぱふぅ家の歴代パソコン
(この項おわり)
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