近代科学資料館には日本一の計算機コレクションがあった

2018年1月20日 撮影
東京理科大学 近代科学資料館
近代科学資料館
近代科学資料館(東京都新宿区神楽坂1-3)は、東京理科大学が運営する博物館で、日本一の計算機コレクションがある。地下には数学体験館がある。いずれも入場無料。学生が案内してくれる。
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建物は、1906年(明治39年)に神楽坂に建設された前身の東京物理学校の校舎を復元したもので、1991年(平成3年)11月、創立110年を記念して建てられた。

2019年(平成31年)4月から休館し、東京理科大学の創立理念を伝える場として、2020年(令和2年)12月1日にリニューアルオープンした。展示されていた計算機などは、野田キャンパスにあるなるほど科学体験館(千葉県野田市山崎2641)へ移設された。

以下は、2018年(平成30年)1月20日訪問時の記録である――。

計算機の歴史

日本随一を誇る「計算機の歴史」コーナーには、算木 (さんぎ) 筮竹 (ぜいちく) から始まる世界各国の算具、計算機が年代順に並べられており、計算機発展の歴史をたどることができる。
小学校の算数で使った算盤、関数電卓が無い頃にお世話になった計算尺、実家で使っていた電子式卓上計算機や、それを買えなかった学校で使っていたタイガー式計算機など、懐かしい計算機、どこかで見た記憶のある計算機が並んでいる。
タイガー計算機は実際に触れることができるものが何台かあり、学生さんが使い方を説明してくれた。割り算は大変なのだ。
パソコンは、ワンボードと呼ばれていた頃のTK-80から、PC-8001(NEC)、MZ-80(SHARP)、ベーシックマスター(日立)、PC-9801(NEC)、FM-TOWNS(富士通)が所狭しと並んでいる。実物が並んでいるのをあらためて見ると、8ビットの頃はユニークなマシンが多い。そして、Macintosh(Apple)とNeXTcubeは、紛れもなくオーパーツである。
フロッピーディスクやUSBメモリが博物館入りしているのを見ると、自分の年齢を感じさせられる。
また、1955年(昭和30年)に輸入され野村證券で活躍していた UNIVAC 120や、1960年(昭和35年)から東京理科大で使用されていたFACOM201 パラメトロン電子計算機も展示されている。
パラメトロンとは、当時、高価だった真空管やトランジスタの代わりにフェライトコアを利用した論理回路で、安価で壊れにくく、リレーより高速動作するというメリットがあった。
1957年(昭和32年)、日本電信電話公社の武蔵野電気通信研究所で開発されたコンピュータ「MUSASINO-1」はパラメトロンを利用しており、これを富士通が製品化したものがFACOM201である。

アナログ微分解析機

圧巻は、Bush式アナログ微分解析機のデモンストレーションだ。
1931年(昭和6年)に米MITのブッシュが考案した常微分方程式を解くための装置で、この性能がよかったことから世界初の電子計算機ENIACの開発が遅れたほどといわれている。ENIAC、UNIVAC開発にMITが参画していなかったのは、こうした背景があるのかもしれない。
1943年(昭和18年)、日本国内で3台が製造され、本機は大阪帝国大学理学部から神戸大学、大阪府立大学を経て、東京理科大学へ移送されたものとされている。1993年(平成5年)、近代科学資料館に静態展示され、2009年(平成21年)に情報処理技術遺産に認定された。
2013年(平成25年)5月、再生プロジェクトがはじまり、ついに2014年(平成26年)11月に再び動くようになった。
動作原理は現地に掲示されているので、それを見ていただくとして、微分方程式を積分式に変形し、それをアナログ的に積分していく様がよく分かる。公式ばかりを暗記するのではなく、こうしたリアルに動くメカを見ることで、微積分の理解を深めることができよう。

録音技術の歴史

「録音技術の歴史」コーナーには、エジソン蓄音機からiPodまで、さまざまなレコーダーが展示されている。オープンリールからカセットテープ、ミニカセット、MD‥‥こちらにも懐かしいガジェットが並んでいる。それにしても、録音メディアの変遷にどれほど悩まされたことか。

数学体験館

東京理科大学 数学体験館
数学体験館
地下の数学体験館は、数学者の秋山仁 (あきやまじん) さんが館長を務める体験型の博物館だ。こちらも学生さんが説明してくれる。
立体や曲線、数列、体積など、数学を手で触れて楽しむことができる。パナソニックが運営する リスーピア RiSuPia とは違い、併設する工房で作られた手作り感満載のモデルが楽しい。
確率・統計・順列・組合せのコーナーには、あの「モンティ・ホール問題」を体感できる仕掛けも用意されている。

というわけで、家族で半日、閉館時間まで楽しませてもらいました。ありがとうございます。

東京理科大学 神楽坂キャンパス

東京理科大学 神楽坂キャンパス
東京理科大学 神楽坂キャンパス
近代科学資料館を運営する東京理科大学(東京都新宿区神楽坂1-3)は、理科大(TUS)と呼ばれる理系大学で、1949年(昭和24年)の学制改革の際、東京物理学講習所(後に東京物理学校に改称)を前身として設立された。
理学教育を行う私立の理系学校としては最古の歴史を誇り、夏目漱石の『坊っちゃん』に登場する「物理学校」は、この東京物理学校を指す。
写真は、本部がある神楽坂 (かぐらざか) キャンパス。理学部、工学部、経営学部がある。ここ以外に、葛飾キャンパス(理学部、工学部、基礎工学部)、千葉県野田市の野田キャンパス(薬学部、理工学部)、そして、北海道長万部に長万部 (おしゃまんべ) キャンパス(基礎工学部)がある。
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東京理科大学 神楽坂キャンパス
東京理科大学 神楽坂キャンパス
2015年(平成27年)にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智 (おおむら さとし) 氏は、東京理科大学大学院理学研究科修士課程を1963年(昭和38年)に修了し、理学博士を1970年(昭和45年)に取得している。
建物は、1906年(明治39年)に神楽坂に建設された前身の東京物理学校の校舎を復元したもので、1991年(平成3年)11月、創立110年を記念して建てられた。

庚嶺坂

庚嶺坂
庚嶺坂
東京理科大の脇から若宮八幡神社へ上る庚嶺坂 (ゆれいざか) がある。
標柱によると、江戸時代初期に多くの梅の木があったため、徳川幕府2代将軍秀忠が、中国の梅の名所の名をとったと伝えられている。

別名を幽霊坂――かつての江戸城周辺には幽霊坂の名を冠せられた坂が多い。だが、幽霊が出没するわけではないらしい。危険なところ、不潔なところに近づかせないように、この名を付けたようだ。
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交通アクセス

【鉄道】
  • JR総武線「飯田橋」西口より徒歩4分
  • 東京メトロ「飯田橋」B3出口より徒歩3分
行き方ナビ
出発地の最寄駅:

目的地:近代科学資料館

参考サイト

近隣の情報

(この項おわり)
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