『元号って何だ?』――その時代の雰囲気や特徴をパッと表す

藤井青銅=著
表紙 元号って何だ?
著者 藤井 青銅
出版社 小学館
サイズ 新書
発売日 2019年02月01日頃
価格 880円(税込)
rakuten
ISBN 9784098253395
元号は、その時代の雰囲気や特徴をパッと表す「イメージ把握力」にすぐれている。(113ページ)

概要

2019年4月1日、5月1日から始まる新しい元号「令和」が発表された。
645年、「大化の改新」が行われたが、この「大化」が日本最初の元号だ。豪族中心の体制から天皇中心の体制へ移行することを知らしめるために、天皇が元号を定める流れになった。
改元は、ときの権力者と結びつくようになり、平安時代には公家が、鎌倉時代に入ると武家が改元に介入するようになった。そして、明治維新の後は一世一元となり、権力との結びつきは弱まった。
元号は、その時代の雰囲気や特徴をパッと表す「イメージ把握力」にすぐれている。大化、大宝、和銅、延暦‥‥日本史とともに、元号は記憶される。

レビュー

令和
日本の元号は、「令和」を含めて248ある(南北朝のダブりを含む)が、使われている漢字は72しかない。
「大化」以来、元号を使うのはおもに役人で、庶民は十干十二支を使っていれば事足りていた。だから、645年の改革は「乙巳の変」とも呼ばれる。元号が一般庶民にまで伝わるようになるのは、江戸時代になってからと言う。
元号の先輩である中国では、前漢の「建元」(BC140年)から始まり、最後の元号は清が倒れた「宣統」(1911年まで。これが辛亥の年だから、辛亥革命)。
平成
650年には早くも改元し、白雉 (はくち) となるが、654年に孝徳天皇が崩御すると、あらたな元号は定められなかった。白村江の戦いから壬申の乱まで天皇体制が揺らぎ、それどころではなかったと考えられる。
天武天皇は686年8月、朱鳥 (しゅちょう) を定めるが、その1ヵ月後に崩御してしまい、再び元号の空白期間となる。
対馬国から金が献上されたことを慶び、文武天皇は701年、元号を「大宝」に定めた。これが、「大宝律令」の名前の由来である。後年、この金は輸入品だったことが分かるが、元号は変わらず、この後は空白期間が発生することもなくなった。
昭和
改元は、新天皇が践祚したときの代始 (だいはじめ) 改元のほかに、めでたい印が出現したときに行う祥瑞 (しょうずい) 改元がある。後者には、めでたい亀が献上されたときの「亀改元」、めでたい感じの雲が現れたときの「メルヘン改元」が複数回ある(これらは著者による造語)。また、縁起が悪いときに行う災異 (さいい) 改元がある。
中国では辛酉の年には悪いことがおこり、天下がひっくり返る(辛酉 (しんゆう) 革命)というトンデモ理論をひっさげ、それを予防するために、辛酉の年に改元が必要だといいだしたのは三善清行である。菅原道真によって官吏試験で不合格となった清行が、道真を恨んで提唱したとも言われている。この後、道真は大宰府に左遷される。
その後、辛酉の3年後に訪れる甲子 (こうし) の年にも改元が必要ということになった。

改元は天皇の専権事項だが、ときの権力者と結びつくりょうになった。平安時代には公家が、鎌倉時代に入ると武家が改元に介入するようになった。
足利義満の時代の「応永」は、明治以降の一世一元をのぞけば一番長く、34年続いた。義満は、「オレが生きてる間は改元させない」と言ったとか言わないとか。
戦国時代になると、織田信長が改元に待ったをかけ、豊臣秀吉が改元にゴーサインを出す。江戸時代には、幕府が公家諸法度で改元をコントロールする。
幕末の1864年、甲子の年にあたるために改元が行われることになった。朝廷は「令徳」を推したが、徳川幕府は最後の力を振り絞って「令徳とは徳川に命令することだ」と難癖をつけ、次点の「元治」が採用された。これが最後の甲子改元となった。
そのわずか1年後、「慶応」に改元した。このときの徳川幕府は、孝明天皇の意向に全面的に従うと一筆書かされたほど弱体していた。
大政奉還を経て、1868年、「明治」に改元した。江戸っ子は、「上からは明治だなどと言うけれど、治まるめい(明)と下からは読む」という狂歌を詠んだ。

推古天皇斑鳩宮 (いかるがのみや) を築いたのは、辛酉の年(601年)であるが、そこから一部(1260年)遡った紀元前660年が神武天皇即位の超大改革・辛酉年に違いない、というトンデモ説に基づいて提唱されたのが皇紀である。再び天皇中心の政治を行うには、こうした屁理屈が必要だったのだろう。
昭和天皇のご高齢を受け、1979年に「元号法」が成立。わずか2条から成る日本で最も短い法律だ。
平成6年「公文書の年表記に関する規則」というものができて、「公文書の年の表記については、原則として元号を用いるものとする。ただし、西暦による表記を適当と認める場合は、西暦を併記するものとする」となった。
(2019年4月7日 読了)
(この項おわり)
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