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宇宙検閲官仮説 | ||
著者 | 真貝 寿明 | ||
出版社 | 講談社 | ||
サイズ | 新書 |
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発売日 | 2023年02月16日 | ||
価格 | 1,100円(税込) | ||
ISBN | 9784065309957 |
スティーブン・ホーキング「宇宙検閲官仮説の最強の根拠は、それが間違っていることを証明しようとするペンローズの試みがすべて失敗していることだ」(186ページ)
概要

ブラックホールの想像図

ロジャー・ペンローズ
そこで、2020年にノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズは、宇宙検閲官が特異点を存在しないように取り締まっているという仮説を提唱した。
宇宙検閲官といっても、アニメ『トップをねらえ2!』の最終話に登場するような部屋があるわけではなく、そのような仕組みが宇宙に組み込まれているというものだ。
ここまでは知識として知っていたが、本書が宇宙検閲官仮説をめぐる最新の研究を紹介していると知り、早速読んでみた。
宇宙検閲官といっても、アニメ『トップをねらえ2!』の最終話に登場するような部屋があるわけではなく、そのような仕組みが宇宙に組み込まれているというものだ。
ここまでは知識として知っていたが、本書が宇宙検閲官仮説をめぐる最新の研究を紹介していると知り、早速読んでみた。

アルベルト・アインシュタイン
著者は、一般相対性理論、重力理論が専門の真貝寿明さん。宇宙重力波望遠鏡(DECIGO)プロジェクトワーキンググループメンバーでもある。

第1章では、ケプラーの法則から一般相対性理論に至るまでの物理法則を振り返る。つづく第2章では、複雑な非線形微分方程式であるアインシュタイン方程式の代表的な厳密解を紹介する。

第1章では、ケプラーの法則から一般相対性理論に至るまでの物理法則を振り返る。つづく第2章では、複雑な非線形微分方程式であるアインシュタイン方程式の代表的な厳密解を紹介する。

ブラックホールの想像図
第3章では、いよいよ特異点について説明する。
一般相対性理論では、光は常に最短時間で到達する経路を描き、これを測地線と呼ぶが、この測地線が途中で途切れてしまう時空を特異点と定義する。つまり、そこで物理法則も途切れてしまう。
また、外向きに放たれた光が無限遠方まで届かない時空の領域の最も外側のを事象の地平面と呼び、この事象の地平面の内側がブラックホールになる(121ページ)。
一般相対性理論では、光は常に最短時間で到達する経路を描き、これを測地線と呼ぶが、この測地線が途中で途切れてしまう時空を特異点と定義する。つまり、そこで物理法則も途切れてしまう。
また、外向きに放たれた光が無限遠方まで届かない時空の領域の最も外側のを事象の地平面と呼び、この事象の地平面の内側がブラックホールになる(121ページ)。
1965年にペンローズは、強い重力崩壊をする星が特異点を生じるという特異点定理を発表する。
1970年に、ペンローズはスティーブン・ホーキングと共同で、次の3つの条件が同時に成立している時空ならば、特異となる測地線が少なくとも1つ存在するという特異点定理を発表する。

宇宙検閲官仮説をめぐり、さまざまな副産物を得られたことを第5章で紹介する。
1971年にホーキングは、「ブラックホールは発生できるが、消滅できない」「ブラックホールは合体できるが、分裂できない」というブラックホールの表面積定理を発表する(196ページ)。1972年には、ブラックホール地平面の「表面積」を「エントロピー」に置き換え、地平面の「重力加速度」を「温度」に置き換えることで、熱力学の法則がブラックホールの法則に対応することを確認した(215ページ)。さらに、1974年にブラックホールが蒸発することを発表するが、これは表面積定理と矛盾しないという。ブラックホールは不思議でいっぱい。
では、ブラックホールに飲み込まれた「情報」はどうなるのだろう。ワームホール(アインシュタイン・ローゼン橋)を通ってホワイトホールから出てくるのかもしれない。

兎にも角にも、特異点に対する研究者の共通認識は、一般相対性理論を超える理論が欲しいということに尽きるとのこと(237ページ)。
1970年に、ペンローズはスティーブン・ホーキングと共同で、次の3つの条件が同時に成立している時空ならば、特異となる測地線が少なくとも1つ存在するという特異点定理を発表する。
- 強いエネルギー条件が成立している
- 因果律が時空全体で成立している(クロノロジー条件)
- 宇宙が過去向きに収縮している (未来に向かって膨張している)

宇宙検閲官仮説をめぐり、さまざまな副産物を得られたことを第5章で紹介する。
1971年にホーキングは、「ブラックホールは発生できるが、消滅できない」「ブラックホールは合体できるが、分裂できない」というブラックホールの表面積定理を発表する(196ページ)。1972年には、ブラックホール地平面の「表面積」を「エントロピー」に置き換え、地平面の「重力加速度」を「温度」に置き換えることで、熱力学の法則がブラックホールの法則に対応することを確認した(215ページ)。さらに、1974年にブラックホールが蒸発することを発表するが、これは表面積定理と矛盾しないという。ブラックホールは不思議でいっぱい。
では、ブラックホールに飲み込まれた「情報」はどうなるのだろう。ワームホール(アインシュタイン・ローゼン橋)を通ってホワイトホールから出てくるのかもしれない。

兎にも角にも、特異点に対する研究者の共通認識は、一般相対性理論を超える理論が欲しいということに尽きるとのこと(237ページ)。
レビュー

トップをねらえ2!
冒頭に紹介したアニメ『トップをねらえ2!』の最終話では、ブラックをホールを割ることで裸の特異点が現れ、場面が「時空検閲官の部屋」に切り替わる。これが宇宙検閲官であることは自明だが、だとすると、タイムトラベルでも検閲官がいるのではないか――タイムパトロールは、漫画『パーマン』をはじめとするタイムトラベルSFの定番だ。

永遠の終り
参考書籍
- 『宇宙検閲官仮説』(真貝寿明,2023年02月)
- 『宇宙最強物質決定戦』(高水裕一,2023年02月)
- 『なぜ宇宙は存在するのか』(野村泰紀,2022年4月)
- 『宇宙を支配する「定数」』(臼田孝,2022年2月)
- 『物理学者、SF映画にハマる』(高水裕一,2021年10月)
- 『宇宙人と出会う前に読む本』(高水裕一,2021年7月)
- 『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック,2021年9月)
- 『時間は存在しない』(カルロ・ロヴェッリ,2019年8月)
- 『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』(伊藤邦武,2019年8月)
- 『宇宙は「もつれ」でできている』(ルイーザ・ギルダー,2016年10月)
- 『超巨大ブラックホールに迫る』(平林久,2017年02月)
- 『時間はどこで生まれるのか』(橋元淳一郎,2016年12月)
- 『時間泥棒』(J.P.ホーガン,1995年12月)
参考サイト
- 宇宙検閲官仮説:講談社
- 西暦1970年 - ペンローズ・ホーキングの特異点定理:ぱふぅ家のホームページ
(この項おわり)