
(左)ホーキング、(右)ペンローズ
1970年、イギリスの数学者・物理学者ロジャー・ペンローズとスティーブン・ホーキングは、ある条件下で一般相対性理論が破綻する特異点が存在することを明らかにする「特異点定理」を発表する。ここでいう「ある条件下」というのは、ブラックホールやビッグバンなど、現実宇宙に存在しうる条件である。
特異点は因果律を破壊する。そして、一般相対性理論のもとでは特異点の存在は避けられない。

たとえば、ブラックホールに特異点が存在するが、これは事象の地平線(シュバルツシルト面)の向こう側で起きるので、宇宙空間へ直接的に影響することはなく、因果律の破綻は免れると考えられている。

たとえば、ブラックホールに特異点が存在するが、これは事象の地平線(シュバルツシルト面)の向こう側で起きるので、宇宙空間へ直接的に影響することはなく、因果律の破綻は免れると考えられている。

トップをねらえ2! (c)GAINAX/TOP2委員会
しかし、事象の地平面で覆われない裸の特異点が出現すれば、物理的に扱うことができない。ペンローズは、宇宙には裸の特異点が出現しないような仕組みが組み込まれており、それを宇宙検閲官仮説と呼んだ。
これをプロットに、2004年、SFアニメ「トップをねらえ2!」が製作された。
これをプロットに、2004年、SFアニメ「トップをねらえ2!」が製作された。
ビッグバンにおいて特異点が発生する。だが、特異点定理は宇宙に始まりがあったことを示すだけで、それ以前がどうなっていたかは明示できない。
カトリック教会は、特異点定理が宇宙を想像した神の存在を確かなものにしたとして、1975年、教皇庁科学アカデミーの創設者ピウス11世の姿が彫られた金メダルをスティーブン・ホーキングに授与した。
だが、量子的効果を含めて考察することで特異点を回避できると考えたホーキングは、量子重力理論の研究に着手し、いまも多くの科学者によって研究が続けられている。神の居場所は、ますます狭められている。
カトリック教会は、特異点定理が宇宙を想像した神の存在を確かなものにしたとして、1975年、教皇庁科学アカデミーの創設者ピウス11世の姿が彫られた金メダルをスティーブン・ホーキングに授与した。
だが、量子的効果を含めて考察することで特異点を回避できると考えたホーキングは、量子重力理論の研究に着手し、いまも多くの科学者によって研究が続けられている。神の居場所は、ますます狭められている。
一方、数学者でもあるロジャー・ペンローズは、時空全体を複素数で記述し、量子力学と相対性理論を統一的に扱う枠組みであるツイスター理論を創始した。これは超ひも理論に影響を与え、いまも研究が続けられている。

(左)ペンローズの階段、(右)エッシャーの無限階段
ペンローズと画家のエッシャーは相互に影響を与えあった。
この時代の世界
(この項おわり)