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宇宙・0・無限大 | ||
著者 | 谷口義明 | ||
出版社 | 光文社 | ||
サイズ | 新書 |
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発売日 | 2023年06月14日 | ||
価格 | 902円(税込) | ||
ISBN | 9784334046682 |
神は数学者かもしれない。しかし、ゼロと無限は嫌いである。(184ページ)
概要

著者は、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を使って宇宙の深遠をのぞく天文学者の谷口義明さん。本書では、
- この宇宙に0はあるのか?
- この宇宙に無限大はあるのか?
- この宇宙に瞬間はあるのか?
- この宇宙に永遠はあるのか?

結論を書くとネタバレになってしまうが、私たちプログラマが、バリデーションチェックとして、ゼロ除算や無限発散を徹底的に排除する習性を説明する仮説をいただけたものとして感謝している(笑)。

ピエール=シモン・ラプラス
第1章では、ゼロと無限の概念を振り返る。
まず、「ゼロの導入」の歴史を振り返る。フランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスは、ゼロについて、「まさにその単純さのおかげで、また、この概念によってあらゆる計算が容易になっているおかげで、私たちの算術は第1級の発明になっているのだ」(31ページ)と書き残しているという。
たしかに便利な概念ではあるのだが、除数にゼロがあらわれると、とんでもないことになる。
まず、「ゼロの導入」の歴史を振り返る。フランスの数学者ピエール=シモン・ラプラスは、ゼロについて、「まさにその単純さのおかげで、また、この概念によってあらゆる計算が容易になっているおかげで、私たちの算術は第1級の発明になっているのだ」(31ページ)と書き残しているという。
たしかに便利な概念ではあるのだが、除数にゼロがあらわれると、とんでもないことになる。


トーマス・ディッグスの著書に載せられたコペルニクスの宇宙図
第2章では、宇宙に無限があるかどうかを考える。
地動説を提唱したコペルニクスは、宇宙の大きさは有限だと考えていた。イギリスの物理学者トーマス・ディッグスは、コペルニクスの著書『天球の回転について』を英訳し、星の世界は無限というアイデアを付け足した。同じ頃、修道士ジョルダーノ・ブルーノは宇宙は無限として、地球屋人類を相対化した罪で火炙りにされた。
宇宙が無限という話に付いて回るのは、「オルバースのパラドックス」だが、じつは無限やビッグバンを持ち出さなくてもこのパラドックスは解ける。
地動説を提唱したコペルニクスは、宇宙の大きさは有限だと考えていた。イギリスの物理学者トーマス・ディッグスは、コペルニクスの著書『天球の回転について』を英訳し、星の世界は無限というアイデアを付け足した。同じ頃、修道士ジョルダーノ・ブルーノは宇宙は無限として、地球屋人類を相対化した罪で火炙りにされた。
宇宙が無限という話に付いて回るのは、「オルバースのパラドックス」だが、じつは無限やビッグバンを持ち出さなくてもこのパラドックスは解ける。

ウロボロス
谷口さんは、ここでウロボロスの図を掲げる。
プログラマにとっては無限も厄介な代物である。たとえばループ処理が終わらなくなる無限ループ――リソースを食い潰してシステムダウンする。悪夢である。ウロボロス、滅ぶべし(笑)。
量子の世界では「繰り込み理論」のおかげで、物理量が無限大に発散することは免れた(94ページ)。マクロの世界でも、こうした制約が欲しいものだ。
プログラマにとっては無限も厄介な代物である。たとえばループ処理が終わらなくなる無限ループ――リソースを食い潰してシステムダウンする。悪夢である。ウロボロス、滅ぶべし(笑)。
量子の世界では「繰り込み理論」のおかげで、物理量が無限大に発散することは免れた(94ページ)。マクロの世界でも、こうした制約が欲しいものだ。

宇宙の進化
第3章では、宇宙にゼロがあるかどうかを考える。
宇宙の誕生まで時間を遡ろうとすると、現代の物理学では、プランク時間(10のマイナス44乗秒)より前に遡ることができない。また、逆2乗の法則にしたがう引力やクーロン力は、2つ物体の距離をゼロにすると破綻する。物理で仮置きする質点も、考えてみればおかしな概念である。質点の密度が無限大になってしまうからだ。
宇宙の誕生まで時間を遡ろうとすると、現代の物理学では、プランク時間(10のマイナス44乗秒)より前に遡ることができない。また、逆2乗の法則にしたがう引力やクーロン力は、2つ物体の距離をゼロにすると破綻する。物理で仮置きする質点も、考えてみればおかしな概念である。質点の密度が無限大になってしまうからだ。

超巨大ブラックホール
絶対零度はあるだろうか――天の川銀河の中心にある太陽質量の約400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールの熱放射は、だいたい100兆分の1Kという(159ページ)。宇宙で最も冷たい物質のはずだが、それでも絶対零度ではない。

第4章では、宇宙に永遠があるかどうかを考える。
この宇宙の未来像として、ビッグ・フリーズ、ビッグ・リップ、ビッグ・クランチ、サイクリック宇宙、真空崩壊を取り上げる。『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック/吉田 三知世,2021年09月)や『時間の終わりまで』(ブライアン・グリーン/青木 薫,2023年05月)でも取り上げた話題であるが、いずれにしても、時間が計測できる限り永遠は訪れない。
この宇宙の未来像として、ビッグ・フリーズ、ビッグ・リップ、ビッグ・クランチ、サイクリック宇宙、真空崩壊を取り上げる。『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック/吉田 三知世,2021年09月)や『時間の終わりまで』(ブライアン・グリーン/青木 薫,2023年05月)でも取り上げた話題であるが、いずれにしても、時間が計測できる限り永遠は訪れない。
レビュー

第2章と3章の巻末に「まとめ」があり、谷口さんが言わんとしていることがよく理解できた。
ゼロと無限に対するバリデーション・チェックにより一層精を出すとともに、公にゼロと無限を使うとき、少し使い方を変えていこうと思う。それは、「方便」として使っているのだということで。
ゼロと無限に対するバリデーション・チェックにより一層精を出すとともに、公にゼロと無限を使うとき、少し使い方を変えていこうと思う。それは、「方便」として使っているのだということで。
(2023年7月26日 読了)
参考サイト
- 宇宙・0・無限大:光文社
- 谷口義明:放送大学
- 『時間の終わりまで』(ブライアン・グリーン/青木 薫,2023年05月)
- 『宇宙検閲官仮説』(真貝 寿明,2023年02月)
- 『なぜ宇宙は存在するのか』(野村 泰紀,2022年04月)
- 『宇宙を支配する「定数」』(臼田 孝,2022年02月)
- 『宇宙はなぜ物質でできているのか』(小林 誠,2021年10月)
- 『宇宙の終わりに何が起こるのか』(ケイティ・マック/吉田 三知世,2021年09月)
- 『宇宙人と出会う前に読む本』(高水 裕一,2021年07月)
- 『宇宙はなぜ哲学の問題になるのか』(伊藤 邦武,2019年08月)
- 『ヒトはなぜ宇宙に魅かれるのか』(縣秀彦,2019年03月)
- 『宇宙論と神』(池内了,2014年02月)
- 『〈見えない宇宙〉の歩き方』(福江純,2003年08月)
- 『宇宙消失』(グレッグ・イーガン/山岸真,1999年08月)
- 『永遠の終り』(アイザック・アシモフ/深町真理子,1977年11月)
- 自然数、ゼロ、整数:ぱふぅ家のホームページ
(この項おわり)