西暦1766年 - 水素の発見

100年先の研究をした奇人科学者
ヘンリー・キャベンディッシュ
ヘンリー・キャベンディッシュ
1766年、英国王立協会会員のヘンリー・キャベンディッシュは、亜鉛・鉄・スズに硫酸あるいは塩酸を加えると可燃性の気体が発生するという論文を発表した。彼は、この気体が空気の11分の1の質量しか持たないこと、物質が燃焼する時に放出されるフロギストンであるとしたが、その実体は水素であった。

ヘンリー・キャベンディッシュは、1749年、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジに入学し、数学と物理学において優れた成績を修めたものの、学位をとらずに退学。父親から多くの遺産を受け継ぎ、自由に研究に没頭した。
彼は寡黙で、極端な人嫌いだった。
生涯に18編の論文を王立協会に発表しており、1766年の水素の発見のほか、水の合成(1784年)、地球の密度測定(1789年)などの業績を立てた。これらの論文は彼の研究のごく一部に過ぎず、未発表の膨大な実験記録を残したまま、1810年、78歳の生涯を閉じた。

彼の死後、化学に関する遺構が1831年に公開された。その中には、後に発見されるヒ酸や、比熱の法則が含まれていた。電気の研究については、1879年にマクスウェルによって公表された。そこには、クーロンの法則、オームの法則などが記されていた。
マクスウェルは、「キャベンディッシュにとっては難しい問題を解決するための研究そのものが重要なのであり発見の栄養を確保することには無関心であった」と評した。

キャベンディッシュの研究は100年ほど先進的ではあったものの、人嫌いがゆえに、他の科学者に影響を与えることもなく、歴史に埋もれていたのだった。
1871年、彼を祈念し、ケンブリッジ大学にキャベンディッシュ研究所が設立される。この研究所からは、2012年までに、29人のノーベル賞受賞者を輩出している。

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参考書籍

表紙 科学史人物事典
著者 小山慶太
出版社 中央公論新社
サイズ 新書
発売日 2013年02月
価格 993円(税込)
rakuten
ISBN 9784121022042
十六世紀のコペルニクスから現代の先端科学まで、160人以上の科学者を選び、業績だけでなく、当時の世相や科学者たちの素顔も紹介。読んで楽しい人物事典。
 
(この項おわり)
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