2013年(平成25年)10月29日、トルコ・イスタンブールのボスポラス海峡下を通り、ヨーロッパ側(カズルチェシメ)とアジア側(アイルルクチェシメ)を結ぶ全長13.5kmの海底鉄道トンネル「マルマライトンネル」が開通した。計画はオスマン帝国時代の1860年(安政6年)からあり、大成建設が率いる日本=トルコ共同企業体が「トルコ150年の夢」を実現した。

ボスポラス海峡
ボスポラス海峡は、トルコのヨーロッパ側(オクシデント)とアジア側(オリエント)を隔てる海峡で、人口1400万人を擁するバルカン半島最大の都市イスタンブールを分断している。ボアジチ大橋(1973年)、ファーティフ・スルタン・メフメト橋(1988年)という2つの自動車専用橋が架けられたが、増大する交通量をさばくことができなかった。

渋滞するファーティフ・スルタン・メフメト橋
1980年代後半、トンネル建設計画が再浮上し、基礎調査が始まった。1999年(平成11年)にはトルコ政府が必要資金を用意し世界中の建設企業に打診したが、ボスポラス海峡の激しい潮流の中では難工事が予想され、手を挙げるものがいなかった。
そんな中、日本政府はトルコとの友好関係を強化し経済協力を推進するために、ODAによる資金援助を行うことになった。
そんな中、日本政府はトルコとの友好関係を強化し経済協力を推進するために、ODAによる資金援助を行うことになった。

沈埋工法の様子
日本と同様に地震の多いトルコは、日本の耐震技術と実績を重視し、大成建設が率いる日本=トルコ共同企業体による建設がスタートした。
ボスポラス海峡の海底は軟弱地盤であるため掘削には適しておらず、その下には地震断層が控えている。そこで、海底に溝を掘り、地上で組み立てたトンネルエレメント(沈埋函)を沈めるという沈埋工法が採られた。
ボスポラス海峡の海底は軟弱地盤であるため掘削には適しておらず、その下には地震断層が控えている。そこで、海底に溝を掘り、地上で組み立てたトンネルエレメント(沈埋函)を沈めるという沈埋工法が採られた。

沈埋工法の様子
しかし、ボスポラス海峡は毎秒約2.5メートルという世界有数の海流に加え、上下で逆向きの二層流がある複雑な海流で知られており、沈埋工法での施工は高度な技術を必要とする難工事となった。それでも、2008年(平成20年)8月には世界最深度となる海中60メートルでの沈埋函接続を成功させ、同年9月に11個の函をすべて沈設する作業を完了した。

マルマライトンネル
2009年(平成21年)に線路が敷設されたが、8000年前の発掘品を含む考古学的発見があったため事業は一時中断となり、2013年(平成25年)10月29日に正式に開業した。トンネルはトルコ国鉄が保有し、TCDD Taşımacılık 社によって列車が運行されている。

マルマライトンネル
2017年(平成29年)11月時点で、ピーク時には5分間隔で、1日に328本の列車がトンネルを通過する交通の大動脈となった。
参考サイト
- トルコのマルマライ地下鉄トンネルがイスタンブール150年来の夢を実現:政府広報
- ボスポラス海峡横断鉄道トンネル貫通:大成建設株式会社
- 未完150年悲願の海底トンネルに挑む トルコ潮流との闘い:NHK 新プロジェクトX~挑戦者たち~
この時代の世界
(この項おわり)