『はだかの太陽』――ロボットを愛するオタクの皆さんに捧ぐ

アイザック・アシモフ=著
表紙 はだかの太陽
著者 アイザック・アシモフ/冬川亘
出版社 早川書房
サイズ 文庫
発売日 1984年05月
価格 748円(税込)
rakuten
ISBN 9784150105587
判断力がゼロなのだ。ロボットは論理的なだけで、分別がない。(165 ページ)

概要

はだかの太陽
未来の地球では増えすぎた人口を養うため、人々は「シティ」と呼ばれる巨大な鉄とコンクリートで覆われた都市の中に集合住宅を築き、食料とエネルギーを効率的に使うことで生き延びていた。一方、シティが完成する前に宇宙移民した人類は宇宙人と呼ばれ、人口では地球にはるか及ばないものの、ロボットを利用し、非常に高い科学技術文明を築いていた。

あらすじ

ある日、ニューヨーク市警の私服刑事イライジャ・ベイリは、宇宙人の植民惑星のひとつ、ソラリアで起きた史上初の殺人事件を捜査するため、宇宙船に乗って現地へ赴いた。ベイリは、再びロボット・ダニール・オリヴォーとパートナーを組み、事件の捜査に当たる。
だが今回は、事件現場の一切合切が原状復帰されてしまっており、他人との接触を極端に嫌うソラリアの習俗がために、直接参考人に会ってインタビューすることもままならない。そして、なぜかダニールは、自身がロボットであることを積極的に開示しようとしない。
閉鎖空間で暮らしてきたベイリにとって、ソラリアの解放された大地に立つことは、ベイリにとって苦痛でしなかった。
だが、彼は持ち前の使命感に突き動かされ、ついに真犯人を突き止める。そして、その裏に隠された陰謀を知ってしまった。そしてソラリア人女性グレディアとの恋の行方は――、
本書は、『鋼鉄都市』の続編だが、もちろん独立した小説として楽しめる。

レビュー

初めて読んだのは、『鋼鉄都市』と同じ中学生の時だ。この歳になって読み直すと、違う感想を持つ――。
ソラリアは、人々が直接会って話をする必要がないほど通信インフラが充実し、仕事や家事を賄う大勢のロボットがいる。これは、現代社会そのものではないか。コミュニケーションはネットに頼り、コンピュータに向かって仕事をする毎日――直接会うことはあるものの、ネット・コミュニケーションの方が気楽だと考えている人がいるのではないか。
だがしかし、ソラリア人の人間性は幼稚である。誰もが自分がその分野での第一人者だと信じているのである。共同研究などということを思いつかない。現代を活きる我々は、同じことになっていないか。相手の話をよく聞き、自分の考えをまとめることができるだろうか。

さて、最後にソラリアの陰謀の正体が明かされるわけだが、大艦巨砲主義ではなくロボットを愛するオタクの皆さんには、たいへん感動的なラストになっている。そして、ここからアシモフの銀河帝国(ファウンデーション)シリーズに至るまで、1 万年に及ぶロボット愛の大河 SF がスタートするのである。
(2017 年 12 月 30 日 読了)
(2021 年 2 月 7 日追記)
新型コロナ・ウイルス感染拡大防止のためテレワークが求められているが、地球人とソラリア人の生活スタイルを思い出した。
地球人は、人口密集しているシティの中でも、つとめて相手の存在を無視することでプライバシーを保とうとする。一方、ソラリア人はロボットに囲まれ、必要なコミュニケーションはネットワークに頼り、直接他人に会うことがない。
いずれも面倒なコミュニケーションを避け、自分の殻に閉じこもった結果、人類には未来がない状態に陥ってしまった。
本当に恐ろしいのは新型コロナ・ウイルス感染ではなく、私たちが自分の殻に閉じこもってしまうことではなかろうか。
はだかの太陽』は、いまから 65 年前、1956 年に雑誌連載された作品だ。それが、21 世紀のライフスタイルを暗示しているとは――アシモフ、おそるべし。

参考サイト

(この項おわり)
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